コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『何言ってるんですか? 俺はマナとは会っていないし、電話もしてません』
『わかってる。でもマナちゃんはあなたに気付かれないようにあなたに会いに行っていたようだ。それに電話もかけていた。たぶん公衆電話か何かで、あなたに電話をしていると思うけどな』
『―――――』
確かに最近、公衆電話からの着信が幾度となくあった。その時は単なるイタズラか間違い電話だと思って気にも留めてなかった。でも、改めてマナからだと聞かされると納得がいく。
『こんなこと、本当はしたくなかった――。マナちゃんは、あなたと話したいし、会いたくてたまらないようだ。それがわかっていたからこそ、あなたと話すことも会うことも禁じたんだ』
『そんなことをしなくても、俺とマナは何もありませんよ。それにマナはああ見えて一途なんです。1度好になった人を簡単に裏切るようなことはしません』
『わかってる。でも、私の勘があなたに会わせない方がいいと言ってるんだよ。そして、あなたとマナちゃんを自由にするのは危険だと――。だからと言って、いつまでもこのままという訳にはいかないのはわかっている。近いうちにマナちゃんに言ったことは撤回するつもりだ』
『俺は――』
『あなたは私にも――そしてマナちゃんにも言えない秘密があるようだ。それが何なのかは全くわからないが、きっとそれはマナちゃんを守るためなんだろう?』
『えぇ、まぁ――』
『わかった。それ以上は聞かないことにする』
世良さんと電話で話した数日後、マナから電話があった。更に翌日には2人切りで外食もした。早速、世良さんが俺とマナが電話をしたり、会うのを許してくれたようだ。
マナの顔を見て直ぐにわかった。俺に会えたことが余程嬉しかったということが。ずっと話しっぱなしだった。俺に話す機会を与えないくらい、ずっと喋りまくっていた。すると喋り疲れたようで、帰りの車の中では助手席でイビキをかいて眠っていた。
そして、世良さんのマンションに到着すると20階のフロアまでマナを背負ってエレベーターに乗り、部屋の前まで歩いた。
ピーンポーン――
「申し訳ない。言ってくれれば迎えに行ったのに」
「大丈夫です」
「とりあえず、そのまま寝室まで運んでくれるかい?」
「はい」
家の中に上がると、背負っていたマナを寝室のベッドの上に静かに寝かせた。
「どうだったんだい?」
「マナの話を永遠と聞かされましたよ。俺には殆んど話をさせてくれませんでした」
「そうか――私の前ではそんな風に話をしてくれたことはないけどね」
「俺は高校時代からの悪友ですから、何でも話せるんだと思います。逆にマナは恋人や好きな人と一緒だと、借りてきた猫のようにおとなしくなってしまうんです。やっぱりマナは世良さんが大好きなんですよ」