否かの館に冬の寒気が忍び寄る夜、館の住人たちは暖炉の火のそばで静かに過ごしていた。だが、その静寂は突然破られる。
館の執事が二階の書斎から慌てて走ってきた。
「刑事さん!誰かが倒れています!」
悠斗刑事が駆けつけると、そこには館に滞在していた商人・高橋隆司が倒れていた。胸には深い刺し傷。まるで前回の田島の事件を彷彿とさせるかのような、冷酷な手口だった。
住人たちは驚きと恐怖で言葉を失った。館の内部は閉鎖されており、誰も出入りできるはずがない。しかし、書斎の窓は完全に施錠されており、扉も鍵がかかっていた。
悠斗はまず館の住人たちから聞き取りを始める。
・村上真琴は、前回の事件後も館に滞在しており、夜は自室にいたと主張する。
・家政婦は、倒れた商人と昨日少し言い争いをしていたことを明かす。
・執事は、書斎の鍵を最後に確認したのは自分だと言う。
事件の手がかりはほとんどないように見えたが、悠斗は書斎の机の引き出しに微かに残った指紋を見つける。さらに、机の上には前回の事件と同じく、暗号めいたメモが置かれていた。
悠斗は館の隠し通路を再調査する。通路の奥には、壁に古い絵画が掛けられており、その裏に秘密の部屋への入り口が隠されていた。部屋の中には、高橋が生前手に入れようとしていた、館の過去の財宝に関する文書が置かれていた。
犯人は、高橋が文書を独占しようとしたことに気づき、命を絶ったのだ。さらに、この事件には、前回の外国人男性も深く関わっていることが判明する。彼は財宝を守るために館に潜入していたが、犯人の意図を読み違え、結果的に高橋の死を防げなかったのだ。
悠斗は証拠を整理し、館の全員を集める。
「今回の事件は、単なる殺意ではありません。欲望と嫉妬が絡み合い、館の秘密が引き金となったのです」
犯人は遂に自らの罪を認め、館に新たな悲劇が刻まれる。
悠斗は冷たい冬の夜空を見上げ、館にまだ多くの秘密が眠っていることを思うのだった。