琵琶湖の湖畔に立つ雅也は、静かな水面を見つめながら深呼吸した。その手には橘の形見の銃が握られている。彼の「異能」、空間そのものを切断する力が、この危険な探索の鍵となるはずだった。
加藤が天雷剣を構えながら雅也に声をかける。
「雅也、お前の力で湖底の異空間を開けるんやろ?手短にな。」
雅也は微笑みながら答える。
「加藤、せっかちな奴やな。ほんまに俺に任せてええんか?」
加藤が皮肉たっぷりに返す。
「俺の六魂で湖ひっくり返してもええけどな。」
雅也は軽く肩をすくめ、静かに異能を発動した。空間に伸びる見えない刃が湖面を切り裂くと、水が不自然に二つに分かれ、その奥に暗い洞窟への入口が現れる。
「いけるな。」雅也が一言だけ呟くと、加藤と共に洞窟へと足を踏み入れた。
洞窟の奥深く、彼らは幕府の刺客と遭遇する。彼らのリーダーは、呪術師・西園寺和泉だった。和泉は冷たく雅也たちを見下ろしながら言った。
「これ以上、呪具を探すのはやめることだ。お前たちには理解できない力が、この剣には宿っている。」
加藤が天雷剣を振りかざし、挑発する。
「ほんなら、その力を使わせへんようにするだけや。」
和泉の目が光ると、彼の周囲の空間が歪む。それは呪具の一つ、「歪星の鏡」の力だった。この呪具は、相手の異能を反転させる能力を持っていた。
雅也の「切断」の異能も反転され、一瞬のうちに自分たちの足元が切り裂かれる。
「まずい!」雅也が叫ぶが、加藤が瞬時に天雷剣を地面に突き刺し、電撃の嵐を放つことで攻撃を防ぐ。
和泉との激戦の中、雅也は隙を突いて洞窟の最深部へ向かう。そこには巨大な岩の中に埋め込まれた「龍牙の剣」が輝いていた。
雅也は手を伸ばしながら叫ぶ。
「これを取らんと、終わらへん!」
彼が剣を掴むと同時に、龍牙の剣が震え、淡い光が洞窟全体を包み込む。その力は雅也に流れ込み、一瞬で彼の体を蝕む痛みが走る。
加藤が駆け寄り叫ぶ。
「雅也!離せ!お前の命が――」
だが雅也は笑みを浮かべる。
「命なんてとうの昔に賭けとる。」
龍牙の剣の力で雅也の異能は新たな段階に達した。空間を切断するだけでなく、その断裂を通じて瞬間移動する能力が発現したのだ。
和泉が驚愕の表情を浮かべる。
「馬鹿な…その剣の呪いを受けながら、なお力を引き出すとは。」
雅也は剣を構え、瞬時に和泉の背後に現れる。
「お前が俺に言うたやろ。呪具を理解できひんって。なら、こう見せたるわ。」
剣を振り抜くと、空間ごと裂かれた和泉は崩れ落ちる。その瞬間、洞窟が崩壊を始める。
間一髪で脱出した雅也たちは、琵琶湖の外に立っていた。加藤が雅也に一瞥をくれる。
「お前、命の限界が近いんちゃうか?」
雅也は疲れた顔で答える。
「限界やったらとっくに来とる。せやけど、この剣の力、使わな誰も救えへん。」
加藤は苦笑しながら天雷剣を振り回した。
「次は俺の出番やな。派手に暴れたるわ。」
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