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アマラ「…んー…。」
アリィ「何をそんなに悩んでるの?行きたいなら素直に行きたいって言えば良いのに。」
アマラ「それお前だけには言われたくないな…。」
ジーク「そうか?アリィはかなり素直だと思うが。」
アマラ(あ、そうか。)
「あぁいや、昔の友人に重ねちまってな。悪い。」
アリィ「別にいいよ。美術館に行きたいんだよね?」
アマラ「…そんな分かりやすかったか?」
アリィ&ジーク「かなり。」
ジーク「アマラの金なんだし、自分の好きなとこに行っても別に構わないぞ。観光をしなきゃいけないんだから、そんなとやかく考えなくていい。俺達は別にじっとするのが苦手なわけじゃないし。」
アリィ「そうそう。学はないから、どうして凄いのかとかは分からないけど…絵を見ること自体は好きだよ。」
アリィとジークはアマラの懸念点を察し、平気だとそして乗り気だと伝える。
アマラ「それなら美術館に行こう。」
ジーク「ああ。」
アリィ「うん。」
アリィ「私これ好きだな。」
アリィが目の前の絵画を指さす。
アマラ「アリィは、淡い色の絵が好きだな。」
アリィ「うん。でも意外、アマラにこういう趣味があったのが。あっ、別に悪い意味じゃなくて…」
アマラ「分かってるさ。」
そう言ってアマラは、自分の腕を見る。アマラの腕は。いや、アマラの身体は平均的な女性の体型に比べると、無駄のない筋肉質な体型をしている。それはまさに、戦うための身体だ。
アリィ(最初は単純に、サンドラと同じ地底人とのハーフだと思った。)
アリィがそう思ったのも仕方ない。アリィが教わった地底人という存在は、皆筋肉質なのだ。それもそのはず、地底人という生き物は昔、土を掘り暮らしていた。故に筋肉質な体つきなのだ。それを生かし、今では鍛治を営む者がいる。しかし、アリィの最初の考えは即座に否定された。否定された理由、それはアマラの人間という種族においての平均身長に比べて高すぎる背丈だ。地底人は人間に比べて背丈が半分程しかない特徴をもつ。故に人間より高い背丈など遺伝的にありえないのだ。
アリィ「あの…」
『ハーフ』それは、絶対的に甘美なものではない。ヒトは自分と同じ見た目の者と、愛し合うことの方が圧倒的に多い。だから、アリィは聞こうとして口ごもる。
アマラ「別に気を使ってもらう必要はないさ。私は自分の見た目をそんなに悲観してないからな。見た目だけでも、案外役立つもんだぞ?」
アリィ「それならいいんだけど…」
アマラ「私の母は人間だが、父はメシュエネなんだ。」
アリィ「メシュエネ…えっ!?メシュエネ!?」
ジーク「アリィ…こういう所で大声を出したらダメだ。」
二人の会話を静かに見守っていたジークは、大声を出して驚くアリィを咎める。
アリィ「あっごめんなさい…」
アリィはすぐに口に手を当て、小声で謝る。そして、すぐにアマラの方に体の向きを戻して、瞳を輝かせてアマラに聞く。
アリィ「お父さんはメシュエネって本当…!?」
しっかり声は落として、しかし期待に満ちた顔でそう聞いた。
アマラ「本当だが…私には期待しないでくれよ。」
アリィ「事前に聞いてるから分かってるよ。でもメシュエネの血が入ってるのに不思議…とは思うけど。」
アマラ「メシュエネは…どんな過酷な環境でも適応できる尋常ではない体力量と、子供でもリンゴくらいなら片手で潰せる程の有り余る力が特徴だ。でも、アタシにはそこまでの体力がないんだ。力に体がついて来れない。だから無理だって最初に言ったんだ。」
アリィ「…聞いちゃまずかった…?」
アマラ「いいや?それだったら言わないさ。普通に成長してたら、そんなことにはならないんだが小さい頃アタシは病気がちでね。外に出歩けなくてこうなっただけだ。大したことじゃない。あ、でも…」
アリィ「?」
アマラ「…人間って私より病気になりやすいんだろ?よくあんな苦痛を何度も…メシュエネなんかよりもずっと強いよ…。」
アリィとジークは苦笑いする。
ジーク「英雄を多く輩出してるメシュエネでも、怖いものはあるんだな。」
アリィ「ジークはさっきから何を見てるの?」
ジーク「ん?ほれ。」
ジークは持っていた羊皮紙であるひとつの絵画を指す。
ジーク「ほら、入口で言われただろ?」
そう言ってジークを羊皮紙に描かれた似顔絵を指でトントンと軽く叩く。
アリィ「あ、ああ〜…そんなのあったよね〜…」
ジーク「覚えてないなこりゃ。」
アリィ「はい…すみません…。」
ジーク「流石にアマラは分かってると思うけど、一応気にかけておこうぜ。」
アマラ「ん?私話聞いてなかったから知らんぞ。」
ジーク「おいこら大人。」
アマラ「えへっ。」
アマラは声を裏返らせ誤魔化す。
ジーク「はぁ…国門で門番にこれを渡されてな。第1王子が行方不明になって長いこと見つかってないから、見かけたら教えてくれってさ。」
アリィ「あれ、教えるだけでよかったっけ…?」
ジーク「あぁ。詳しい理由は教えてくれなかったが、第1王子自ら望んで行方不明になった可能性もあるからだとさ。馬車を襲われた王族と襲った蛮族が戦ったら蛮族が全滅するってのは常識だからな。手荒なことはすれば返り討ちに会うだろうな。その場合。」
アリィ「教育を受けてる人と受けてない人じゃ、どうしても天地の差があるからねー…。まぁ、その場で臨機応変にやれるかどうかはその人の才によるけど。」
アマラ「自ら消えた第1王子をわざわざ躍起になって探すってことは、世継ぎが居ないのか。普通に考えたらかなり年齢が低いことになりそうだが。」
ジーク「いや、王妃が若くして亡くなられたらしい。だからだ。新しい王妃が居ないのは…この惨状が原因だろうな。」
そう言ってジークは、屋根の窓から漏れる眩しすぎる光を見上げ手で顔を仰ぐ。
アマラ「これでも絵画が傷まないんだから凄いもんだ。」
アリィ「そりゃあんだけカーテンがあればね。眩しいけど。」
アリィの言う通り、窓には何重にも過剰なほどにカーテンがかけられている。これが絵画が無事な理由だ。しかしカーテンを貫通する光が眩しいことには変わりない。
ジーク「まぁもうすぐこの窓は塞がれるらしいけどな。」
アリィ「このままじゃいつか燃えちゃいそうだし、正しいと思う。」
アマラ「ークリウス・アルド・トーチアス」
二人の会話を尻目に、ふとアマラは第1王子が描かれた絵画の題名を読み上げた。