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5件
こーじがでてきた!もしかして…🤍🧡🫣
あの件で・・って😅😅😅
ん~~っ‼️‼️‼️ こーじくんとオーナーは、どういった繋がりがあるんだろー・・・😅
ラウールくんとの最後の面接練習が終わり、ついに本番の日である火曜日に、ラウールくんから連絡をもらった。
「阿部ちゃんと目黒くんのアドバイスのおかげで、ちゃんと面接できたよ!ありがとう!!結果がわかったらまた連絡するね!」
ラウールくんが手応えを感じている様子が文面から感じ取れて、ふっと肩の力が抜けた。あれだけ頑張っていたのだから、間違いなく合格できるだろう。まだ結果が出たわけではないから、今の状態で俺が騒ぎ立てるのもよくないだろうと、労う気持ちを主として返信した。
「まずは、面接お疲れ様。練習もよく頑張ったね!結果待ってます。今日はゆっくり休んでね。」
ラウールくんの面接もひと段落して、ふと、あいつのことを思い出す。
ここ数週間、あいつについて気になることはたくさんあったが、それどころではなくなってしまって、ついつい頭から抜けていた。
俺はトーク履歴からふっかの名前を探した。
「渡したいものあるんだけど、土曜日いつもの場所来れる?」と送信すると、すぐに「りょーかい、14時くらいに行くわ」と返ってきた。
水曜日、木曜日、金曜日、普段と何一つ変わらない毎日を過ごして、あっという間に土曜日になった。
俺たちの言う「いつもの場所」とは、オーナーのお店【cafe Royal】のことだ。
ふっかとは14時集合なので、13時40分くらいに家を出た。
この間買ったふっかへのお礼の品も忘れずに持っていく。
お店のドアを開けて、中に入ると、ランチタイムをすぎた頃だからだろうか、珍しくお客さんの姿は見えなかった。
キッチンの方から、オーナーがいつものように出迎えてくれる。
「いらっしゃい。この間はありがとうね」
「いえ!こちらこそです!ごちそうさまでした!」
「ん?阿部、なんか変わった?」
唐突にオーナーがそんなことを俺に尋ねる。
特になんの心当たりもなくて、首を傾げる。
「…?特に、何も変えたことはないですよ…?」
「そっか、俺の気のせいかも。ごめんね、急に変なこと聞いて」
「いえいえ!俺が気付いていないだけかもしれないですし」
「ふふ、相変わらず優しいね、いつものでいい?」
「はい、お願いします!」
軽く言葉を交わして、俺はいつものお気に入りの席につくと、 ラウールくんがおしぼりを持ってきてくれた。
「阿部ちゃんこんにちは!この間は本当にありがとう!」
「ラウールくん、こんにちは!面接終わったばっかりなのに、もう働いてるの?」
「結果が出るまで落ち着かなくて、家でじっとしてるの嫌だったから、出勤させてもらってるんだ」
「そうだったの。ソワソワしちゃうと思うけど、働きすぎも良くないし、あんまり無理はしないでね?」
「うん、ありがとう!……ん?」
「うん?どうかした?」
「阿部ちゃん、なんかイメチェンした?」
「いや?何も変えてないよ?」
オーナーと同じように、ラウールくんにも同じことを聞かれた。
自分でも気付いていない何かが、変わっているのかもしれないが、本当に心当たりがなかった。
「そっか、ごめんね、気のせいだったのかも!ゆっくりしていってね!」
そう言ってラウールくんは、グラスを磨くためにキッチンの方へ戻っていった。
入れ替わるようにして、オーナーがいつもの甘いカフェオレを出してくれた。
「熱いから気をつけてね」
「ありがとうございます!」
「いえいえ、今日は一人?」
「いえ、今日は友人と。14時に待ち合わせしてるんです」
「あー、あの人?いつも来てくれたと思ったら、すぐに慌てて帰っちゃう…」
「そうです!なんだかいつも忙しそうで、ちゃんと休めてるのか心配になります。」
「なら、ここに来てくれる時くらいは、ゆっくりしていただけるようにしないとね。」
「お気遣いありがとうございます!」
噂をすればなんとやら、カランとドアが開いて、オーナーとの話題の中心になっていたあいつが入ってきた。
「いらっしゃいませ」
「ども〜。阿部ちゃんお待たせ」
「ううん、そんなに待ってないよ」
「んで、今日はどったの」
席に着く前から、こんなに口が回るのは相変わらずで、「とりあえず座りなよ」と促した。座るや否や、ふっかはおしぼりを持ってきてくれたオーナーに「ホットコーヒーください」と伝える。
「かしこまりました。いつもご来店ありがとうございます。少々お待ちくださいませ。」
「おねがいしまーす」
オーナーが奥へ戻っていくと、ふっかは声を落として、俺に尋ねる。
「ねぇ、いつもご来店ありがとうございますって、あの人、俺が阿部ちゃんといつもここ来てんの気付いてんの?」
「うん、オーナーは顔覚えいいからね。ふっかのことちゃんと覚えてくれてるよ。」
「ひぇー、まじか。すごいなあの人。」
「うん、一回でも来たことのある人は覚えてくれてるみたい。俺もオーナーとは、仲良くさせていただいてるよ」
「そうかそうか、、俺が知らない間に控えめな阿部ちゃんにも、俺以外の友達ができてたのね…よかったよ…」
「バカにしてんの?」
「いやいや、感動してんの。それより、渡したいものって何?」
「あ、そうそう。これなんだけど、よかったら使って」
「んぉ?アイマスクと雑炊セット…?えーめっちゃ嬉しい。ありがとー!…でも、なんでまた急に?」
「この間相談乗ってもらったお礼」
「こないだ……?あぁ!阿部ちゃんの恋愛相談ね!それで結局どうなったの?」
「あー、うん。…うまくいった。」
「あー、それでなんか今日、雰囲気違うんだ。」
これで三回目だ。一体俺の何が変わったのだろうか。気になってふっかに尋ねた。
「…それ、今日会った人全員に言われるんだけど、なんなの?俺何にも変えたところないよ?」
「えー?具体的にどこが変わったとかじゃなくて、なんとなくよ?なんつーか色気?出てる。」
「は?」
「もしかしてだけど、その彼に最近抱かれた?」
「は!?なんでわかるの!?」
ぎくりと自分の中で音が鳴って、体が縦に伸びた。
一気に顔に熱が集まっていくのがわかる。黙っていればいいものを、バカ正直に答えてしまう。
「図星かよ。そうかそうか、そりゃ色気も出るわな。あんなに純粋だった阿部ちゃんも、ついに大人の味を知っちゃったわけね…お母さん寂しいような、嬉しいような…」
ふっかは見えないハンカチで目元を拭い、鼻を啜るフリをした。
「やっぱりバカにしてるでしょ……、っ…んん“…」
「お?」
すごく恥ずかしい…。
恥ずかしすぎて熱い。
つい一週間前の出来事が急速に蘇ってくる。
初めて重ねたあの日の蓮くんの温度が、すぐ近くで触れている気がして、沸騰しそうだ。あの日から数日間はその余韻が抜けなくて、ずっと脚をばたつかせていた。今日まで日が経って、やっと自分の気持ちが落ち着いてきたのに、ふっかはいとも簡単に、俺にあの日のことを思い出させてしまった。
…蓮くん、かっこよかったな…。
俺を見てくれる目がいつもより熱っぽくて、ずっと優しく気遣ってくれて、ちょっとだけ意地悪で、名前を呼んでくれた声が色っぽくて…って、何考えてんだ!!
今日みんなに言われた「変わった」って、これが原因だったんだ…。でも、だからって、俺から色気とやらが出てるようには思えないんだけどな…。
恥ずかしさに耐えきれなくて、両手で顔を覆って、ぶんぶんと頭を振っていると、ラウールくんが「お待たせしましたー」と言う声が聞こえてきた。
「ホットコーヒーです!熱いので気をつけてください!」
「どうも〜」
「…ねぇ、お兄さん。阿部ちゃんどうしたの?」
ラウールくんとふっかが、お互い初対面とは思えないほどに、自然と会話しているのが聞こえる。
「んー、なんかね、彼氏と初めて大人の階段登ったんだって。それ言ったらこうなっちゃった。」
…おい、深澤。余計なことを言うな。
「え!?阿部ちゃん、目黒くんとついにそこまで行ったの!?」
ちょっとちょっとちょっと!!!
「ちょ!!!ラウールくん声大きいから!!」
「…は?目黒?」
俺が引き止める間も無く、ラウールくんは「オーナー!!!阿部ちゃんがねー!!!」と飛び跳ねながら、キッチンにいるオーナーの方へ走り去っていった。
「あぁあぁぁぁ〜、ふっかぁ…なんで言っちゃうのぉ…」
「いや、俺は「彼氏」って濁したよ?そんなことより待って?お前、目黒って…」
「っそうだ!俺聞きたかったんだよ!!ふっかがマネージャーしてる人たちのこと!!」
「話聞け?…なになに、、そんな興奮して…」
「えっと、蓮くんと渡辺さんと、佐久間さん?と、いわ、、もとさん???のマネージャーしてるんだよね!?」
「どこで知ったのそれ!?誰にも言ってないはずなんだけど!?」
「蓮くんが…」
「え、待って?じゃあ、こないだの相談の相手は目黒で、付き合ったのは目黒で、あいつが風邪引いた時に看病してたのは阿部ちゃんで、その次の日にあいつが嬉しそうにメシいく店選んでたのは、阿部ちゃんとのデート行くためだったからってこと??マジかよ!?」
「俺だってびっくりしたんだから!まさか蓮くんのマネージャーさんが、ふっかだと思ってなかったんだから!!」
何万分の一ぐらいの偶然に驚きなんて隠している場合じゃ無くて、俺もふっかも息切れするほどにお互いの言いたいことを捲し立てた。
「まぁまぁ、二人とも。気休めだけど、チーズケーキでも食べて一回落ち着いて?サービスです。」
興奮しきった俺たちを宥めるように、オーナーが間に入ってくれた。
「…すみません、、大きな声出して…」
「いいよいいよ、今はお客さん他にいないから。それよりも、ラウールが大興奮してたよ。おめでとうだね。」
「…あ、ありがとうございます…。…ぅぅ…。」
オーナーにまでおめでとうと言われてしまう始末に、居た堪れなくなる。オーナーはいつものにっこりとした笑顔を浮かべて、「お赤飯炊かないとね、ふふ」と笑っていた。
オーナーからいただいたチーズケーキにフォークを刺しながら、ふと大事なことに気がついた。俺以外にもふっかと関係がある人が、今目の前にいるじゃないか。
刺したフォークをケーキから一度抜いて、お皿の上に置き、オーナーの方に向き直る。
ふっかのことを手で示しながら、オーナーに伝えた。
「オーナー、改めて紹介します。こいつ、俺の友人の深澤くんです。渡辺さんのマネージャーです。」
「ちょ、おい」
「え、翔太の?そうだったんですね。これは、ご挨拶が遅れました。翔太がいつもお世話になってます。ここのカフェのオーナーをしてます。宮舘と申します。」
「え、あ、どうも…?宮舘さん?うちの渡辺とお知り合いですか?」
「渡辺さんの恋人さんだよ」
「ぅぇ!?うそぉ!??!!?」
「いつも阿部と来てくださるので、深澤さんが阿部のお友達だってことは知っていましたが、まさか翔太がお世話になっている人だったとは…。翔太がなにかご迷惑をおかけしてはいませんか?」
「ぁ、いやいや!全然!!みんなほんとに頑張ってくれてます」
「そうですか、、ならよかった…」
渡辺さんの普段の様子を聞いて、安心したような顔をするオーナーを見ていると、本当に渡辺さんのことを大切に思っているんだろうということが、伝わってきた。
「翔太は少し前からだけど、めめも最近はだいぶ落ち着いた顔つきになったよ。二人があいつらのそばにいてくれてるからなんだろうな。俺は仕事の時しか支えられないんで、それ以外の時は、あいつらのこと、どうかよろしくお願いします。」
ふっかは急に真面目な顔をして、俺とオーナーに頭を下げた。いつもの飄々とした雰囲気なんて面影もないほどに真剣なの で、俺は拍子抜けしてしまった。
オーナーも深く深く頭を下げているので、俺もそれ に倣い、慌ててふっかにお辞儀をした。
頭を上げて、三人で笑う。なんだか、本当に不思議な出会いだ。
思いがけなくて、深くなるほど尊くて、一生分のご縁に出会えたような気がした。
「こんな繋がり、想像もしてなかった。これなら大丈夫かな。」
ふっかは誰に言うでもなく、そう呟いて、オーナーに向かって照れくさそうに笑った。
「また来ます。連れて行きたい奴がいるんです。今度は、そいつと、阿部ちゃんと一緒に」
「いつでもお持ちしております。」
オーナーは優しく微笑み、上品にお辞儀をした。
夜も更け、宮舘は、立てかけていた“open”の看板をしまおうと店の外に出る。
「ふぅ、今日も一日頑張った」
寒空の下、幾千の光となって輝く星を眺めながら、宮舘は今日一日の出来事を思い出す。驚くような出会い、大切な人が増えていく嬉しさ、人生というものは、なんとも予測がつかないものである。
感慨深さと充足感に満ちたようなため息を吐き出す宮舘に、一人の男が声をかけた。
「なんや、もう閉店かいな。間に合わんかったかぁ。」
明るく、楽しそうに話すその男の声に振り返り、宮舘は親しみを込めて返す。
「久しぶりだね、元気にしてた?」
「おん、いつでも絶好調やで!」
「今日はどうしたの?」
「前に連絡した、あの件で下見しとこ思てな。」
「下見も何も、頻繁に来てくれるんだから、うちの構造わかってるでしょ?」
「まぁまぁ、会う口実なんてなんぼあってもええやんか。俺とだての仲なんやし」
「はいはい。もう閉店だけど、まぁ、せっかく来てくれたしコーヒーでも飲んでく?」
「ええの!?おおきに!せや、あん人とはうまくいっとるん?」
「うん、おかげさまで。もうすぐ帰ってくると思うよ」
「そらええ事やな!二人仲良くが一番やで。」
“close”の看板を下げて、宮舘とその男は、カランコロンと鳴り響くドアを潜っていった。
To Be Continued…………