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研究室のソファに押し倒されたまま、冬馬先生の熱い視線に射抜かれる。
「今夜は帰さない」という言葉の重みに、心臓が爆発しそうだった。
けれど、彼は私の唇に触れる寸前で動きを止め、ふっと意地悪く笑った。
「……と言いたいところだが、明日は朝イチで重要な回診がある。お前に寝不足でミスをされては困るからな」
彼は私の顎を軽く指で弾き、身体を離した。
「っ……!からかったんですか!?」
「いいや。半分は本気だ。……残りの半分は、お前が俺にふさわしい事務員として、明日も完璧に動くことへの期待だ」
結局、その日は「特別講義」と称して、深夜まで難しい論文の整理を叩き込まれた。
ドSな指導に泣きそうになりながらも
彼が淹れてくれた二杯目のコーヒーが驚くほど甘くて
私は自分がすっかり彼に飼い慣らされていることを自覚した。
◆◇◆◇
翌日───
病院内では、ある噂が広まっていた。
『氷の冬馬先生が、最近特定の事務員を付きっきりで指導しているらしい』
お昼時、給湯室で同僚たちのヒソヒソ話が聞こえてくる。
「海老名さん、大丈夫かな。あの冬馬先生に目をつけられるなんて、相当しごかれてるよね」
「でも、先生、他の事務員には目も合わせないのに。海老名さんにだけは、なんだか執着してるっていうか……」
私は胸が締め付けられる思いで、その場を立ち去った。
執着
それは、私にとって甘い言葉であると同時に、彼という「天才」のキャリアを傷つけかねない毒でもある。
そんな不安を抱えたまま、私は医局の廊下で冬馬先生と
彼をライバル視している外科部長の息子・高木医師に出くわした。
「冬馬先生、最近事務員を私物化しているって噂ですよ。公私混同は感心しませんね」
高木医師の嫌味な視線が、私に注がれる。
「彼女、なかなか優秀じゃないか。冬馬先生が手放すなら、僕の専属にしてもいいんだけど?」
高木医師が私の肩に手を置こうとした、その瞬間──
「触るな」
冬馬先生の声が、氷の刃のように廊下を震わせた。
彼は私の前に立ちはだかり、私の肩を引き寄せて自分の方へ抱き込んだ。
「彼女の能力は俺が引き出している最中だ。……ゴミのような男の手に触れさせて、彼女の価値を下げられては困るからな」
言い放つ言葉は、相変わらず冷酷で酷いもの。
けれど、抱き寄せられた肩に込められた力は、何よりも強く私を「自分のものだ」と主張していた。
高木医師が顔を真っ赤にして去っていく。
二人きりになった廊下で、私はようやく息を吐いた。
「……先生、あんな言い方したらまた角が立ちますよ」
「事実を言ったまでだ。……海老名」
「はい……?」
先生は私を抱いたまま、耳元で低く囁いた。
「……お前の『居場所』がどこか、もう一度教育し直す必要がありそうだな」
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