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これはきっと、おれがまだそこまでマフィアとしての訓練を受けさせられていない頃の事だろう。
?「さくらー。」
🌸「ん?どうしたの?」
?「僕、さくらのこと好きだよ。」
🌸「まだそんなこと言ってるの?笑
からかうのはやめてよ笑」
?「嘘じゃないってば!」
少し不服そうに怒る男の子。
この子はよくおれをからかうんだ。
「好きだよ」とか「可愛いね」とか、本当は思っても無いことをおれに言う。
この子はおれより少し年下だから、おれがずっとお兄ちゃんみたいにお世話をしてきた。
だけどいつの日か、こうやってからかうようになったのだ。
?「僕が大人になったらさ、さくらは僕と結婚してくれるの?」
🌸「えぇー、そうだなぁ。良い子にしてたらしてあげる。」
なんて、軽い冗談をその子に言った。
だけどそれを聞いたその子は、嬉しそうに目を輝かせていた。
?「ほんとに!?絶対だからね!!」
🌸「ふふっ、じゃあ指切りでもする?」
?「うん!」
おれは小指を、おれより少し小さなその子の小指と絡めて言った。
🌸「絶対結婚しような。」
🌸「……ん、…。」
なんだか少し、懐かしい夢を見ていた気がする。
怖い夢でも楽しい夢でも無い、穏やかな夢を。
当然夢だから、今はもう思い出せない。
おれの記憶力が無いのも一つの理由だと思うけど。
…それより、ここはどこだろう。
目の前には知らない景色が広がる。
おれは昨日、家に帰った記憶がない。
昨日の記憶といえば…。
🌟「あ、起きたんだね。おはよ。」
🌸「どうしてここに…。」
近くには彼がいた。
そして冷静そうにおれを見下ろしている。
おれはもし彼に突然攻撃されても対応できるように、素早く体を起こした。
🌟「どうしてって言われてもねえ。ここは僕の家だよ。」
🌸「…え、?」
🌟「勝手に連れてきちゃってごめんね。君は眠ってたし、いろいろあって僕の家に連れてきちゃった。」
そうだ、確かにおれは昨日、お酒に酔って眠ってしまったんだ。
彼がおれをここに連れてきたなら、辻褄は合う。
🌸「…ありがとう。それじゃあおれは帰るから、」
🌟「ちょっと待って。この僕がタダで帰らせるとでも思う?」
さっさとここを出ようと思ったけど、そうはいかないみたい。
🌸「…別に良くない?おれ感謝したし。」
🌟「あのね、君が眠った後に隠れてた敵が、何人も僕たちを囲んで襲ってきたんだよ」
「それを君を守りながら倒したんだから、僕に報酬くれても良いでしょ?」
あの時の銃声の正体は、これだったのかもしれない。
だとすると、今彼が言ったことを信じる方が自然だ。
だけど、少しおかしな点がある。
どうして彼は敵であるおれを守ったのか。
敵を倒した後でも、おれを殺せる時間なんていくらでもあったはず。
🌟「あ、君を守ったのは、僕の気まぐれとでも思って良いよ。」
おれが考えていることを察したのか、彼はそうおれに言った。
そういうところは凄いけど、ちょっと悔しい。
🌸「…それで、報酬って何。」
🌟「そんな難しいことじゃないんだけど…週に一回、僕とデートしてよ。」
🌸「…え。」
彼がおれに言ったのは、思っても無いことだった。
🌟「まぁ君に拒否権なんて無いんだけどね。来週の土曜日、街でデートしようか。」
🌸「……別に良いけど。」
🌟「じゃあ決まりね。詳しいことはこれに書いたから、ちゃんと来てよ。」
彼はおれに一つの紙を差し出した。
準備が良いな。
率直な感想はそれくらい。
週に一回デート、それはおれにとっても好都合だ。
だって、敵を知ることができるチャンスだから。
逆におれの情報を渡さないようにするのには、充分気を付けないといけないのだけど。
おれは、土曜日を気長に待った。