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───5月10日 午前9時13分頃
私立 導標(しるべ)高等学校に通う
光根(ひかりね) 路(15)が学校の敷地内で倒れているのが
見回りをしていた学校の先生によって発見された。
発見当時、路君は意識不明の重体だったがその後搬送先の病院で奇跡的な回復を遂げた。警察の調査関係者によると路君は自殺をするつもりで学校の屋上から飛び降りたが、生えていた高い木に引っかかり、木がクッションになって助かったそうだ。
目を覚ますとそこは白い天井に白い壁、ベッドがいくつか置いてある変わり映えのない病室だった。
自分でもよく分からないのだが、どうやら助かってしまったようだ。
(「レール」は……切れなかったのか……)
まだ少し頭がぼんやりするがそういう事実がなんとなく理解できてきた。俺は世界から見捨てられているようだ。
「光音さん、失礼します。」
その声とともに病室のドアが開き白衣を着た、私は医者です、と言わんばかりの人がこちらへ向かってきた。
「あなたは今両足が骨折していて、腕にも靭帯の損傷が見られる状態です。まぁそうですね、全治7ヶ月といったところでしょうか。ですがこれだけで済んでいるのが奇跡なくらいです。もっと自分を大切にしてくださいね。
あとは、何かございましたら枕元のナースコールで呼んでください。」
俺は自分を大切にできていなかったのだろうか?
正直、自分がこれ以上壊れてしまわないように、自分を最後まで大切にしたかったからこの決断に踏み切ったと思っている部分もあった。
(まさかこんな結果になるなんてな……)
ここで俺が助かってしまうことも決められたことだったんだろうか。だとしたら皮肉なものだ。
すでに俺が進もうとする足は折れ、俺の心はバッキバキに粉砕しているというのに、「俺」という「本」の筆者はいったい俺にこれ以上何を求めるのか、俺には理解しきれなかった。
そして、今の路には無気力な心と足枷(あしかせ)とも言える自分自身の体だけが残っていた……。