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#一次創作
ruruha
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ruruha
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悲鳴が上がる。
どちらの悲鳴だったのか、分からない。
蝋燭の外れた燭台の先は尖っていた。
その先が、影の腹を貫く。
そして、影の舌が喉を貫く。
今まで経験したことのない痛みの最中でも、私の手には肉を貫く悍ましい感触が伝わってきた。
喉を貫かせれたせいで、悲鳴はもう上げられない。
刺された影が吠えて、激しく身をくねらせた。
軽々と宙に浮いて、めちゃくちゃに床に叩きつける。
私の口からは、微かに声が漏れただけ。
叫びたいのに、声が出ない。
痛みと絶叫が体の中で膨れ上がって、頭と耳、全ての感覚が混乱する。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
脳と全身・世界が痛みと恐怖で埋め尽くされていく。
痛い痛い痛い痛い怖い痛い痛い怖い痛い痛い痛い怖い!!
背中に鈍い痛み。
喉を突き抜けた舌の尖端がくねって、今度は背中に突き刺さった。
どこが痛いのかとか、どっちが痛いのかなんてよくわからない。
本当に痛いのかどうかさえ。
舌がズブズブと音を立てて、背中から体内に入り込んでくる。
夢中で自分の喉に突き刺さる舌を掴んだ。
どくんどくんと舌が脈打っているのを、手のひらで感じとる。
私の血が吸われて、彼女に流れ込んでいるのだ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛イ痛い痛イ痛い!
不意に違う声が思考に割り込んでいるのに気づいた。
痛い怖い痛い痛イ怖い痛い怖イ痛い嬉シイ!
これは……この声は……私と同じ……声。
痛い 痛イ
冷たい 冷タイ
苦しい 苦シイ
どくん、どくん。
手のひらから伝わる鼓動と、私の胸の鼓動。
次第に同期していく。
熱い 熱イ
冷たい 冷タイ
悲しい 悲シイ
嬉しい 嬉シイ
寂しい 寂シイ
暗い 暗イ
眩しい 眩シイ
分かんない!
意識が薄れていった。
血と一緒に私も彼女も飲み込まれていく。
ああ、私は彼女になる。
だめ!だめ!だめ!
私は必死で意識を繋ぎ止めた。
諦めちゃだめ。
私は私を無くさない。
情けなくて、弱くて、ちっぽけで、くだらなくって、私なんだから。
ヒトじゃなくたって、立派でなくったって、ここにいるのは、ここで苦しんでいるのは私なんだから!!
ーーワタシ?
頭の中で声が聞こえる。
舌っ足らずな子供の声。
同時に、脳の中の強い風が止んだ。
もうほとんど見えないのに、視界がクリアになった気分。
それはあなただって同じ?
好きで”影”になったんじゃないよね。
私たち、好きで吸血鬼に生まれたんじゃないよね。
自分の好きなところなんてあんまり見つけられないのに、それでも自分を無くするのが怖いと思うのはどうして?
それは理屈じゃ割りきれない思い。
私という存在の意地。
どんなに迷ったって、諦めてしまいたくなったって、それは私の中で訴え続ける。
譲れないわ。
無くさない。
手放すなんてできない。
それなら、あなただってそう思うんだろう。
私は舌から手を離す。
暗んでいく視界の中、精一杯両腕を伸ばしてもう一人の自分を求める。
喉に刺さった舌がぐじゅと嫌な音を立てて、より深く私に沈み込んだ。
もう体の全てが痛みと同化して、痛みが分からない。
手が届いた。
『私』は思ったよりずっと小さくて、痩せこけている。
血でヌルヌルしたその体を抱きしめた。
レナ
頭の中から……ううん、血管の奥から声がする。
そうか。
あなた、寂しかっただけなんだ。
地下は暗くて心地よくて、血は美味しいよね。
でも一人ぼっちで……寂しかったよね。
レナ
全身に張り巡らされた私の血管から、誰かが私の名を呼んでいる。
ようやく、夜、私を呼んだのが私自身の血だと気づいた。
レナ
そう。私に触ってみたかったんだ。その舌で、肌で。
あったかいって、不思議なんだもんね。
深く深く舌が喉に、背中に、体の中に染み込んでいく。
もう感覚がない。
本当に起きて、ここにいるのだろうか?
レナ……
ああ、あなたの声だけが聞こえる。
私のものならなんでもあげる。
大切なもの、楽しかった思い出、悲しかった出来事。
何もかも全部。
だから私にも分けて欲しい。
力を!強さを!長く伸びた舌を!全部私たちのもの。
ワタシタチノ?
そう。
いいことも悪いことも、全部二人ではんぶんこしよう。
舌が伸びる。
目が赤くなる。
力がみなぎる。
私たちは私たちになる。
「う……」
朦朧としたまま、私は腕の力を頼りに上半身を起こした。
固い床に押し付けられていたほっぺが少し痛い。
気を失っていた……どれくらい?
顔を上げると、目の前にはドロドロとした肉の塊があった。
それはゆっくりと溶け出し、茶色の汗がじんわりと染み出していく。
血と……濃密な土の臭い。
それが何なのかはよくわからないのに、不思議と肌馴染みのいい匂いがした。
薄れていく懐かしい気配を惜しんで、思い切り空気を吸い込む。
何だか息がしづらいことに気づいた。
喉に手を当てると、ヌルヌルした血の感触。
肉の裂けているのを指先で感じる。
そうか、それで息がしづらいんだ。
痛みを感じたが、それ以上に寒気の方がひどい。
力が入らない。
変な汗がこめかみを伝う。
貧血を起こしているみたい。
寒くて頭がぐるぐるする……。
でも……立たなきゃ。
顔を上げた。祭壇に眠るお母さんが見える。
「おかあさ……」
立ち上がろうとして、バランスを崩した。
「!」
倒れそうになった私を支えたのは。
「…………」
「アーウィン……」
アーウィンが私の腕を掴んでいる。
ふっと肩から力が抜けた。
ヒトでもヒトでなくても、私の側にずっとあった顔……。
ふらつく私をきちんと立たせる。
大丈夫。私は立てる。
「アーウィン、良かった。お母さん、無事だったの……」
裂けた喉元から血と息が漏れる。
はっきりしない声になってしまった。
アーウィンはそれでも微笑んだ。
嬉しい。いつもの笑顔だ。
ちょっと皮肉っぽくて、でも穏やかな微笑み。
コメント
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おお……37話、めっちゃ重くて熱い戦いだった……! 「痛い痛い痛い」の反復が脳に直接響いてくるみたいで、読んでるこっちまで息苦しくなったわ。でもそこで「私は私を無くさない」って踏ん張る主人公、めっちゃカッコよかった。 影(レナ)の寂しさに気づいて「半分こしよう」って抱きしめたシーン、グッときたね。痛みと優しさが混ざってる感じがたまらん。 ラストのアーウィンの微笑み、あれでようやく息つけた気がする。次が気になる🔥