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「ウウニャ……ゥ……」

「アック様、シーニャが気付きそうですよ~」

「そ、そうだな」

「ですから、アック様! 暴れるかもしれないのでしっかりと注目をしてくださいよ~!」


ルティの両親に見送られたおれたちは、ファレワル村の奥で湧出している温泉に浸かっている。ルシナさんや村の人によれば、村の温泉は古くからあり運気アップの効果がある上、生命力を高めることが出来るという言い伝えがあるらしい。


「命の泉に浸かることが出来るのは冒険者のみ。村の人間は近づくことも出来ないのだよ」

「……なるほど。確かに冒険者なら、意気揚々と町へ進むかもしれないですね」

「もちろん無理はしなくていいのだよ。あくまでも言い伝えであるし、温泉に浸かったからといって命を落とさないわけでは無いのだよ」

「でしょうね」


これまで何度か旅の冒険者が村を訪れ、温泉に浸かり気分を良くして町へと進んだ者は数知れず。しかし、奥から戻って来た者は誰一人としていないらしい。


その町で命を落としたのかは定かではないらしいが、村の人間は町に近い温泉には近づかないようだ。


◇◇


「アック様、温泉行かないんですか~? 汗が凄くて早く入りたいです~!」

「村のあちこちに見られる露天でもいいんじゃないか?」

「お母さまが言うには、奥の温泉以外は村の人しか入れないみたいです。それに、奥の温泉は美肌効果があってスベスベになるそうでして……アック様~」

「……分かった。入っていい」


お湯汲みを終えたルティは汗だくだったこともあり、恥ずかしげも無く勢いよく入湯。メイドエプロン姿の彼女はあっという間に服を脱ぎ捨てた。


それはともかく、おれはシーニャをおんぶしていてそう簡単には脱衣出来ない。まずはシーニャをその場に降ろし、鞘《さや》の中で眠っているフィーサを地面に置いた。


話に聞いた温泉は濁りの無い透明な湯をしていて、相当に熱いのか湯気が物凄い。おれとルティは熱耐性があるからいいが、シーニャには厳しそうに思える。


シーニャの装備を脱がし、徐々に湯に浸からせることにした。フィーサに関しては溺れる心配は無いということで、浅い所に立てかけている。


「アック様、入らないんですか~?」

「すでに入っているぞ! フィーサの近くにいてやらないとな」

「それじゃあ駄目ですよ~! シーニャをお近くで見てもらわないと!」

「ルティが見てればいいだろ」

「駄目ですよ! 熱いのが苦手なシーニャが暴れたら大変なことになるじゃないですか~!」


しばらくして、


「ウ、ウニャ……熱い、熱すぎるのだ……な、何なのだ!? ウギニャアア!!」

「ひゃぁぁ~!? アック様アック様! 早く早く彼女を抑えてくださぁぁい!」

「あぁ、もう!」


何の恥ずかしさも無いのかルティはどこも隠していない。逆におれだけが気を遣っている状態の中、とうとうシーニャが目を覚ました。


「ド、ドワーフ! 何なのだ、何なのだ!! 熱い所に連れて来て、シーニャをどうするつもりなのだ!?」

「違いますよぉぉぉ!! ひぃやぁぁ! あ、暴れないで~!!」

「アック、アックはどこなのだ~!!」


ルティの予想通り、目覚めたシーニャが暴れ出した。まさか眠っている間に湯船に浸かっているなど、シーニャも思っていなかったはず。ただでさえ熱いのが苦手なシーニャなので、目の前のルティに掴みかかろうとしている。


これはまずいな。


そうするとおれが行動を起こすしかないのか。


「おのれ、おのれ~!! ウゥゥ……!」

「ひ、ひぃえぇぇ!?」


湯気が凄いとはいえ、ルティとシーニャの姿ははっきりと見えている。双方に何かあっては元も子もないので、やぶれかぶれで二人に向かって湯船に飛び込んだ。


「ウ、ウニャッ!?」

「はぇっ!?」


耐性がありつつも湯船の中に突っ込むと、とてつもなく熱い。顔だけはさすがにそこまで完全な熱耐性が無いので、火傷をしそうなくらいの痛みがある。


そんな状態下の中、薄々と感じていたのは自分の顔がスライムのような弾力の中に包まれているような感覚だ。


「む……むむぅ……これは回復魔法か?」

「ウニャン~アックの頭があるのだ~! アックを撫でて包み込むのだ。ウニャッ!」

「アック様がとうとう……! そうですよね~! 同い年ですもの。理性はどこかで弾けてくれると信じていましたよ!!」

「い、いやっ、待て……むごがっ!? お、押さえつけるな」


やはりこの二人相手にこの行動はまずかったか。


「ウニャ~! アックを離してたまるかなのだ~!」

「ぜひぜひぜひ、私にもっともっと強く抱きついて、動かしてくださぁい~」


どうやらシーニャの胸に突っ込み、押さえつけられた状態にあるようだ。そして押さえつけられていることでもがいているが、強い握力でルティの体を掴んでしまっている。


そのせいか熱さはともかく徐々に気持ち良くなっていて、シーニャに身を委ねてしまいかねない。一方、ルティに対してはあらゆる部分に触れまくっているようだ。


ルティだけが身悶えを起こしているが、シーニャはおれを離してくれない。彼女たちのケンカを止められたのはいいが、どうすれば開放されるんだろうか。


幸運《ラッキー》な出来事ではあるが、これで運気上昇を使い果たされても困るんだが。

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