そして、馬車の中に入り、椅子に下ろされ、もちげてくれた人も座った。
持ち上げてくれた人は、被っていたローブを脱ぎ、顔を初めて見た
整った顔…。高い鼻、男性らしい目
おまけに、この世で一番偉い、人間だということ…。
さっき、僕を商品扱いした人も多分人間だったけど、こんなに近くで見たのは初めて
やっぱり、品がある
男性に見とれていると、馬車が走り出した
ガタンと揺れ、びっくりして声を出しそうになるが、グッとこらえ、声は出さなかった
馬車が走り始めて数時間、なんの会話もなくただただ、時間が過ぎてゆく
男性は資料を見たり、仕事をしているように見える
邪魔しちゃいけないけど、なにか、仲良くなるきっかけがあるといいんだけど
と考えたが、思い浮かばなかった
きっかけなんていい、とりあえず、話すことから始めよう
「あ、あの…」
「なんだ?」
思ったよりもいい声で少しドキッとしてしまった
喋りかけたのはいいものの、何を話せば…。
あっ…。そうだ!名前を聞こう
「お名前を聞いてもいいですか?」
「あぁ、名前はリードだ」
リード様!
「お前の名前は?」
な、名前…。
実は忘れてしまって、名前が無い
「そ、その…。名前が無いんです」
「はぁ?」
「名がないだと?」
リード様、呆れていらっしゃる
そうだよね、名を忘れたなんて
「ふむ…。ノワール…。なんでどうだろう?」
ノ、ノワール。いい名前
それに、リード様が着けてくくださったんだから、大切にする!
「はい!今日から僕の名前はノワールです!」と笑顔でリード様に言った
それから、名前を確認しあっただけの、話となってしまった
でも、数十分したあとリード様から、口を開いた
「ノワール、言い忘れていたが、お前は」
「2ヶ月後に死ぬ」
突然言われたことに、頭が混乱した
やっと、自由の身を手に入れたと思った矢先、リード様から死ぬ宣言されたら、誰でも混乱状態に陥るだろう
でも、2ヶ月も生きられるんだ。気楽に行こ
どうせ、恨まれて死ぬ人生。なら、助けてくれたリード様に役に立って死にたい
だから、「はい!」と笑顔で答えた
僕の思っていなかった笑顔に、リード様は驚いたものの、すぐに仕事に取り掛かった
そして僕は死んでしまう二ヶ月間何をしようかと、馬車の窓から、夜空を眺めていた
コメント
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凄い続きが気になるッ! 新しい物語も最高です、!! パン屋のお話見てきます!