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「……随分と、仲睦まじいね」

さすがにもう、我慢出来なかった。

「外までリリーの楽し気な声が聞こえてきたよ」

薄く開いていた厩舎きゅうしゃの扉を大きく開けて中へ踏み込むなり、思わずそんな言葉が口を突いていた。

自分でも制御しきれなかった言葉を、ランディリックは笑みで覆い隠しながら二人の間へと歩み入る。


「ランディ!」

「ランディリック様!」


驚いたように振り返った二人が、それぞれ違う呼び方でランディリックの名を呼んだ。

リリアンナは嬉しそうに、カイルは気まずそうに。


「でしょう? カイルと馬たちのお世話をしていると、時間を忘れちゃうの!」

リリアンナが弾む声でそう言った瞬間、胸奥の棘はさらに深く突き刺さった。

顔には出さなかったつもりだが、もしかしたら体中から負のオーラが発せられていたのかも知れない。

カイルが慌てて「リ、リリー嬢……!」と狼狽するのを横目に、ランディリックは内心のざわめきを押し隠し、柔らかな声で言葉を重ねた。

「それは良かったね。――だが、今からダンスの練習をすることになった。戻ろうか」


いつものように優しい物言いだが、どこか有無を言わせぬランディリックの言葉に、リリアンナが「え?」と声を漏らす。

「そんな、いきなり?」

小首を傾げて問うリリアンナへ、ランディリックは笑みを崩さぬまま、「僕の方の予定が空いたからね。急だが入れたんだ。こんな機会はめったにない。リリー、ダンスも社交界では大切な所作のひとつだからね」と言い置き、彼女の背へとそっと手を添えた。

「でも、カイルがっ」

「カイル。あとで他のものを遣わすから。何かあったらその者に頼ってもらえるかな?」

ランディリックの視線に、カイルは「かしこまりました」と答えることしか出来なかった。



***



屋敷に戻ると、まずナディエルを呼び、リリアンナの着替えを手配する。


カイルの元へ出向いているリリアンナの服装はいつも軽装。それは普段もう少し華美な服装をしている貴族の女性にとって、下着と呼んでも過言ではないワンピースキルティルだ。


もちろんシルクを混ぜた柔らかな生地は光沢があって美しいし、ストンと落ちたすそも、優美な弧を描く胸元や袖口そでぐちに施された刺繍も最上級のものをしつらえさせている。村娘などからしてみれば普段着よりも余所行き。


いや、もしかしたら一生袖を通すことすら敵わないような上質なものだ。


けれど、それでもそんな薄布のまま若い男と一日中一緒にいると思うと、ランディリックの心はざわついてしまう。


カイルの介助をしてクルクルと動き回ることを思えば、その服装はベストな選択だというのは分かる。だが、それでも屋敷へ戻ればいつも通り煌びやかな貴族然としたドレスに身を包んで欲しいし、できることならば湯あみをさせて馬小屋のにおいも落とさせたい。


(いや、馬より不快なのはあの男の……)


そこまで考えてランディリックは意図的に思考を停止した。

ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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