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さぶた@気分屋
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#ミステリー
穏霞 乃矢
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露に
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どうでしたか。音楽室。
…綺麗だった?
へぇ。あなたにも見えるんですか?
あの部屋に溜まった思いってやつ。
あなたのきらきら星、シノノメさんは気に入ったみたいでしたね。
そうそう。君は『ひとりでに鳴るピアノ』って知ってます?
あれね、ここで人間が鳴らした曲だったりするんですよ。
今?今じゃないですよ。
未来、か…。それとも、過去か。
未来で七不思議がもう一度流行って絶対の力を取り戻さない限りは過去に届くんじゃないですかね?
聞いたわけじゃないので知りませんけど。
次の七不思議は、あなたと大変相性が悪いです。
ミウマさんの比じゃない。
今回だけは、私に従って下さい。
危険なら行かなければいい?
そんな簡単な世界じゃないです。
あなたは、本当に帰りたいですか?
…なら、言う通りに動いて下さい。
いいえ。ここで説明することはできません。
…できないんですって。
いえ。話すことはいくらでもできるんです。
ただ…時間帯が問題でして…
ここで話すと、呼び寄せることになりますが、よろしいでしょうか。
良くないでしょう?
そもそも、七不思議というのはどの時代も噂と因果で結ばれているものです。
そして、ここを乗り越えた人間はいない。
ただの一人も。
…そうです。恐ろしさが分かりましたか。
もともと逃れることなんて不可能に近いのに、更に強化してどうするんですか?
ここですね。
そう。階段です。
ここは何階ですか?
はい。4階ですね。
あなたは実に運が悪い。
強化材料が限界まで揃ってしまっている。
ここまで来ると何をしてもほとんど意味がないので、少しだけ話しますね。
絶対に、知りたいと思わないで下さい。
百歩譲って、思っても構いません。
後ろを振り返ってはいけない。
立ち止まってはいけない。
それから…階段の段数を数えてはダメです。
もう一度聞きます。
あなたは、帰りたいですか?
…ですよね。
ここ。見て下さい。
廊下と階段の踊り場で、床の色が違いますよね。
これは”境界”です。
境界をまたぐ行為は、呪術的に大きな意味を持つ…というのは有名な話ですが。
厄介なことに、これで境界が成立してしまっているんですよね。
あなたは、ここに来た時から怪異に積極的に関わろうとしていますね。
それでも、あなたはまだ生きている。
それはただ、状況と相手がよかっただけです。
元来、怪異に関わるのは犯してはいけない禁忌…
命を一か八かドブに捨てているようなもの。
あなたは生きて帰って下さい。
さぁ。肆時間目を始めましょう。
ここをまたいだら、振り返ってはいけません。
私が先に行きましょうか?
そうですか。ではお先にどうぞ。
止まらないで!
はい。歩き続けて下さい。
そのうち歩いてもいられなくなるので体力温存でもしときます?
乾いたブラックジョーク…面白いこと言いますねぇ。
これがジョークに聞こえます?
そうだ。この怪異の説明といきましょうか。
この怪異は七不思議が4番。通称、『四時四十四分の階段』です。
はは。不吉でしょう?
この怪異は、この時間”以外は”普通の階段です。
そして、普通に通るだけならなんら問題はない。
だから、運が悪いって言ったでしょう?
でも、一つだけ、あなたにとって良かったことがある。
それは、上るか下りるか選べることです。
私は、圧倒的に下りるのを推奨しますが。
最悪、転がり落ちても逃げられますから。
怪我、する?
正気ですか?
怪異に喰われるより、階段から落ちる方がずっといいですよ。
はい。そのまま下り続けて。
絶対に後ろを 振り返っちゃダメです。
今はまだ急ぐ必要はありません。
とにかく、温存して下さい。
…噂をすれば。
少しペースを上げましょうか。
踊り場まで無理に行く必要もありません。
どうせもうすぐたどり着けなくなります。
温存。分かりました?
それから…よく聞いて下さい。
怪異は本来、噂話で構成されているものです。
七不思議、妖怪、都市伝説…
ですが。
この学校に限らず、人間を大量に喰った怪異は、ありえないほど強くなる。
今回の…怪異は、何十人もの人間を糧にして知識もついていると思われます。
どうか、耳を貸さないで。
後ろを見ないで。
立ち止まらないで、数えないで。
…本当は、四時四十五分まで耐え抜けばいいだけの怪異なんですけどね。
あなたは運悪くちょうどその時間に迷い込み、更に時間が止まる、という稀に見られる現象も重なった。
音楽室が4階に生成される、という予想外のアクシデントも重なり、向こうは完全に油断していると思われます。
まぁ、大丈夫でしょう。
進み続けて。
あなたが後ろを向く必要はない。
前を向いて――
『また守れない』
焦らないで下さいっ!
後ろじゃない。
これは肉声じゃない。
とにかく前に進んで下さい。
違います。
耳を塞いでも意味はない。
この七不思議4番は、頭に直接話しかけるタイプの怪異です。
つまり、あなたと怪異の間にパイプができてしまった、と言うことです。
もう聞かないで下さい。
『また犠牲になる』
違います。
…あぁ、失礼しました。
聞かなくて良い。
耳を貸さなくていいです。
あなたは攻撃されてない。
集中して。
急がないで下さい。
『また、間に合わない』
…一つ忠告しましょうか。
度が過ぎます。
それは私への攻撃ではないですか?
人間は狩りの対象でいいですが。
案内人に攻撃するのは”あなたの”恨みですか?
それとも、”人間の”恨みですか?
『こいつらは お前が殺したようなもんだ。そいつも、皆 ここで死ぬ』
…
忠告は、しましたよ。七不思議4番。
私は、案内人。
ですが、この学校を管理しているのも私です。
そして、私の本来の役割はそっちです。
できれば、自然に営まれる怪談を守ろうとはしているのですが…
少しオイタが過ぎますね。
管理対象『七不思議4番 四時四十四分の階段』。
今から私は案内人ではなく、管理者として管理対象を祓います。
…残念です。
本当なら、あなたも七不思議として残すつもりでした。
一線を踏み越えたのは、お前自身ですから。
長い間、七不思議としてのお役目、本当にお疲れ様でした。
では。さようなら。