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その日は朝から雨だった。天気予報は外れ、干してた洗濯物が見事にびしょ濡れ。
俺がベランダからタオルを引っ込めてリビングに戻ると、
ソファに座ってたるかが、ジトッとした目でこっちを見ていた。
「言ったじゃん。今週は雨多いって」
「天気予報、外れたんだって」
「じゃあ信じるお前が悪い」
スマホをいじりながら、いつもの口調で刺してくる。
…でも、ほんのちょっとだけ、目が笑ってるように見えたのは、気のせいか。
その日の昼ごはんは、俺が作る番だった。
冷蔵庫にあったのは、卵、ツナ缶、キャベツ、マヨネーズ。
結局、ツナキャベツの卵焼き、という微妙な料理が完成した。
「いただきます」
「……マヨネーズ多すぎなんだよ」
一口食べた瞬間、るかがつぶやいた。
「いや、ツナに合わせるならこれくらいでしょ」
「キャベツが死んでんの。味バランス、壊滅的」
「文句あるなら自分で作れば?」
「うちは“食べる係”なんだけど?」
口は悪いくせに、箸は止まらない。
俺は黙って、もう一口卵焼きを口に入れる。
「…てか、お前さ」
「ん?」
「なんで料理できんの?彼女いた?」
唐突すぎて、飲みかけの味噌汁でむせた。
「いねーよ。実家で仕込まれた」
「へぇ…健全な家庭」
「…そうでもないけどな」
るかはそれ以上何も言わなかった。
ただ黙って、ご飯を食べ続けていた。
食後、俺が洗い物をしてると、
彼女は何気なく水を出してる横に立ってきて、
ポンと小さな声でつぶやいた。
「次、うち作る。文句言わせないくらいのやつ」
「おう、楽しみにしとく」
「…あ、でもマヨは使わないから。トラウマレベルで」
「なんでだよ」
「キャベツが泣いてる」