――今日は春休み1日目。
私の進路はもう決まっているものの、健人くんが進む高校は 結局聞けていないまま。
もし今も健人くんと付き合っていたら、『頑張ろうね!』と言い合って、互いに励まし合っていたのかも知れない。
でも今は、そんな人は居ない。
やっぱり自分の壁を突破するには、自分で自分に勝つ必要があると思う。
健人くん達の力無しでも、自分で何とか打ち勝つんだ…!
そんな 気持ちだけの覚悟を決めてから、私は猛烈な特訓に励んだ。
・・・
「んー…… 難し… 分かんないよぉっ……。!」
「(本当にどうしよ… この問いに答えよ、って、どんだけ命令されてんの!マジ問いうっざ…)」
「(ってか、この問題集 難しすぎない!?ヤバ、教えて欲しい…)」
さっきの覚悟は何だったんだろうか…
まさに気持ちだけの覚悟だった…
やっぱ、自分だけじゃどうしようも無いのかな?
こんなんじゃ、先が思いやられる……。
でも、受験に合格しなければ 春人とすら一緒に居ることが出来なくなる。
友達無しで高校生活を送っていくなんて ごめんだ。
だから、絶対にこの勉強は外せない。
孤独の世界を勝ち抜いていくんだ……!
そんな真の覚悟をもう一度決め、一日中教科書とにらめっこをしていた。
―――夜
「七葉ーー、ご飯よー!」
「あ、はーい。」
お母さんの大声でやっと勉強から開放され、私は夕飯が並ぶ リビングに移動した。
「…七葉、最近元気が無いわよね。どうかしたの?中学で何かあった?」
「いや、特に何も…?」
「そんな嘘つかなくて良いのよ? ――あ、もしや健人くんとの仲に何かあったとか?」
「…」
そうだ、お母さんには健人くんの事を伝えてるから、私が付き合ってることも知ってるんだ。
だからか、妙に私の恋愛事情を気にしてくる。
いつもなら軽くスルーしている所だけど、今はそうにもいかなかった。
私は、顔に感情が出やすいから……。
ご飯を無言で食べつつ、お母さんの話に耳を傾ける。
「…もしかして、別れちゃったとか…?」
「ま、お母さんには関係無いよ。こっちの話だから。」
「―――そう。じゃあお母さん、ご飯片付けとくからね。」
「うん。」
ご飯をちょうど食べ終えた私。
今は健人くんの話をしたくない事をお母さんはちゃんと分かっていて、あえて深堀りせずに話を終わらせてくれた。
そして私は、また部屋に戻って 受験勉強にただ熱心に取り組んでいた。
今までの私の意志とはかけ離れた強さ____
それは、私が一番理解できているのかも知れない。
・・・
―――
「人を三回書いて、飲み込めば良いんだよね…?えっと…」
「全く… 七葉、受験だからって緊張しすぎだろー。」
「いや、春人が緊張してなさすぎなんだって!普通に有り得ないから!」
「そうかー?ま、たぶん受かるだろ。」
「もー!そんな安易な考えじゃ合格しないよ!?私、知らないからね?!」
「大丈夫だってw ってか、人の心配する前に自分の心配しろよーw」
「んもうっ……」
そう、私と春人がいるのは受験会場。
一緒の日に受験をするから、駅で待ち合わせをしてここに来たんだ。
私は人生で一番と言っても過言では無いほどの、心臓が破裂しそうな緊張をしていた。
それに比べて春人は… 見ての通り、緊張という概念を知らないかのように 平常心を保っている。
――春人はいつもこうなんだから…
本当に心配だ。
だけど、私だって人の事は言っていられない。
だって、春人だけ受かってしまう可能性だって大いにあるんだから…
どっちとも頭は良くないけどね。
でも… この受験で合格しなければ、二人で一緒に登校することは出来ないかも知れない。
いや、絶対出来ないだろう。
中学からずっと『一緒の高校行こう』と話をしていたのに、合格しなければ その夢は一瞬で散っていく。
それだけは本当に嫌…、、
幼馴染とすら一緒に居られなくなるのなら、私の居場所なんて無いよ…
また一からになって、孤独になるだけなの…?
そんな事を考えるのは勘弁して欲しい……。
だから、絶対この受験で“二人とも”合格して、希望の光へと突き進むんだ!
私は肩を軽く回し、緊張をほぐした。
―――とうとう試験開始20分前。
私達は 試験会場内に入り、様々な手続きを済ませて椅子で待機していた。
「(やっぱり心臓破裂するよぉっ……)」
でも、冷静でなければ問題は解けない。
落ち着いていなければ、家で復習してきた事が全て無駄になる。
そんな羽目にならないように、私は念には念を入れてきた。
“絶対大丈夫だ!お前に合格以外の道は無い……っ!!”
これは、中学の先生から言われた言葉。
受験に向けて 勢いをつけてくれたり、不安を抱える私の背中を 力一杯押してくれた。
そんな先生に恩返しの気持ちも込めて、本気で取り組まないといけない。
私の情熱の炎は、今盛んに大きく燃え、光輝いていくんだ―――!!
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