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#普通
野々さくら
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ありあ
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病室には午後の優しいが差し込んでいた。
信愛たちが去ったあとも、静寂だけが流れている。
ベッドの上で眠っていた鈴蘭は、ゆっくりと瞼を開け、小さく唸り声を漏らした。
「う、うー・・・ん」
その気配に気づいた焔垂が、慌てて椅子から立ち上がる。
「先輩?」
鈴蘭はぼんやりと視線を向けると、驚いたように目を丸くした。
「え!? 八乙女くん?」
焔垂は照れくさそうに頭を掻く。
「す、すいません・・・お見舞いに来たんですけど
先輩、寝てたから起こしちゃまずいと思って」
鈴蘭は困ったように笑い返した。
「もう、いるならそう言ってよ
寝顔見られたの、恥ずかしいじゃん」
少し頬を赤らめながら続ける。
それを見て焔垂は慌てて頭を下げた。
「ご、ごめんなさい」
鈴蘭は首を横に振る。
「でも、来てくれてありがとう」
その言葉に焔垂は柔らかく微笑んだ。
「いえ、先輩には常日頃からお世話になってますから」
鈴蘭は少し体を起こし、興味深そうに尋ねる。
「それより、探求倶楽部は順調?
事故のこと調べてくれてんだよね?」
焔垂の表情が少し曇る。
「は、はい・・・」
短く答えたあと、意を決したように顔を上げた。
「その事で、先輩に確認したい事があるんです」
鈴蘭は首をかしげる。
「私に?なに?私で役に立たてるなら何でも協力するよ?」
焔垂は決意したようにゆっくりと口を開く。
「先輩はとある女性の霊に狙われてました」
鈴蘭は苦笑しながら眉をひそめた。
「は?女性の霊?」
焔垂は静かに頷く。
「先輩だけじゃありません」
一呼吸置いて続ける。
「今回の事故の被害に遭った4人の女子高生は
みんな同じ女性の霊に狙われていました」
鈴蘭の表情から笑みが消える。
「なに・・・それ」
焔垂は鈴蘭の目を真っすぐ見据えた。
「その女性の生前の名前は、春日井千歳」
鈴蘭の瞳が大きく揺れる。
「え?」
部屋の空気が一気に重くなる。
焔垂は静かに問いかけた。
「先輩は、この名前・・知ってますよね?」
鈴蘭は視線を泳がせ、ぎこちなく笑った。
「な、何の事?」
焔垂は表情を変えない。
「しらばっくれるんですか?」
冷静な口調のまま、決定的な言葉を告げる。
「先輩が中学の時に、友人と共謀して
殺した女の子の名前なんですよね?」
鈴蘭の顔色がみるみる青ざめる。
「な、何言ってんの? 八乙女くん」
焔垂は一切目を逸らさなかった。
「中学の頃は、江古田飛鳥さんや他の生徒を巻き込んで
随分と好き勝手やってたみたいですね?」
鈴蘭は息を呑む。
「なんで飛鳥の名前を八乙女くんが?」
焔垂は淡々と事実を並べる。
「今回の事故の被害者はみんな田原坂中学出身でした」
そして静かに続ける。
「そして同時に春日井千歳さんへの
いじめと殺人に関与していた人ばかりでした」
鈴蘭は言葉を失う。
「なに・・それ・・・」
焔垂の声だけが病室に響く。
「あの事故は──」
ほんのわずかに間を置く。
「無惨に殺された春日井千歳さんの復讐だったんです」
沈黙が病室を包み込む。
鈴蘭は何も言えず、ただ俯いた。
焔垂は最後の一言を静かに突きつける。
「しかも三瓶先輩は、殺人を犯したくせに」
冷たい視線が鈴蘭を射抜く。
「目撃者が居ないのをいいことに
千歳さんは自殺したと事実を捏造した」
病室に重苦しい沈黙が流れた。
焔垂は静かに鈴蘭を見つめたまま、低い声で言う。
「だから今だに、警察に捕まってない」
鈴蘭は何も答えない。
ただ、無言のまま焔垂を見つめ返していた。
焔垂はゆっくりと言葉を続ける。
「先輩は・・・自首するべきです」
その一言が病室の空気をさらに冷たくした。
「全ての罪を自白して警察に──」
鈴蘭は深くため息をつき、呆れたように首を振る。
「さっきから何、訳の分かんない事言ってんの?」
困惑したように眉を寄せる。
「千歳? 殺人?私には何の事だか分からない」
焔垂は信じられないという表情で問い返す。
「先輩・・・罪悪感とか無いんですか?」
鈴蘭は不思議そうに首を傾げた。
「罪悪感って何?」
そのまま淡々と続ける。
「そもそも私は何もしてないし」
そして挑発するように口元を緩めた。
「納得できないって顔してるね?
なら警察でも呼んでみたら?」
焔垂は言葉を失う。
鈴蘭は畳み掛けるように話を続けた。
「でも仮に警察が来たら、何て説明するの?」
静かな笑みを浮かべる。
「『千歳の霊が私たちに殺されました『 』
って証言したとでも言うつもり?」
少し肩をすくめた。
「警察がそんな漫画みたいな話、誰が信じるの?」
焔垂は唇を噛み締める。
「そ、それは・・・」
鈴蘭は一歩も譲らない。
「証拠は何ひとつ無い、八乙女くんの勝手な
妄想で私を殺人犯呼ばわりしないでくれる?」
焔垂は拳を握り締める。
「なんで・・・」
その瞬間。
背後に、確かな人の気配を感じた。
霊感がなく霊視のできない焔垂でさえ、その存在だけはハッキリと分かるほどの重い気配だった。
(千歳さん・・・)
焔垂はゆっくりと病室に置かれた鏡に視線を移す。
そこには、自分の背後に静かに立つ千歳の姿があった。
青白い肌に感情を押し殺したような無表情。
その瞳だけが、鈴蘭をじっと見つめている。
焔垂は何も言えず、強く拳を握り締めた。
やがて、静かに息を吐く。
「分かりました・・・」
悔しさを押し殺すように俯く。
「先輩を信じた俺がバカでした」
震える声で続けた。
「少しくらい罪の意識を持ってるってそう信じてました」
鈴蘭は呆れたようにため息をつく。
「まだ言ってるの?」
焔垂はゆっくりと立ち上がり、鈴蘭の目をまっすぐ見る。
「先輩・・・」
一度だけ立ち止まり、小さく呟く。
「さようなら」
そのまま病室を後にする。
俯いたまま歩く焔垂の頬には、一筋の涙が静かに伝っていた。
残された鈴蘭は首を傾げ、不思議そうに呟く。
「何よさようならって、意味わかんない」
病室には再び静寂だけが残った。
焔垂は無言で病室から出てくると、長椅子に腰を下ろし、顔を両手で覆った。
「八乙女くん?その・・・三瓶さんは?」
信愛の問いかけに焔垂は沈黙したまま俯く。
「後は──」
焔垂の言葉に一同が注目する。
「後は千歳さんに任せるよ」
コメント
1件
うわっ、まさか焔垂が直接鈴蘭先輩に詰め寄る展開になるとは…! しかも鈴蘭がまったく揺るがなくて、逆に「警察呼んでみたら?」って余裕かますの、めっちゃゾッとしたわ。焔垂の「さようなら」と涙、そして最後の「千歳さんに任せるよ」で終わる感じ、次の話が待ちきれない…。千歳さんの霊が背後に立ってた描写も鳥肌もんだった🔥