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焔垂が去った後の病室では、鈴蘭が頭を抱えていた。
「まさか八乙女くんがあの事を知ってるなんて」
鈴蘭は思考を巡らせる。
「でも八乙女くんは何であれが
自殺じゃないって分かったの?」
千歳は何も答えず、そんな鈴蘭をただ黙ったまま見つめていた。
「ん?」
その時、鈴蘭は誰かの気配を感じ、反射的に病室のドアへ視線を向ける。
しかしそこには誰もいない。
「気のせいか・・・」
そう呟いた瞬間だった。
「気のせいじゃ無いよ」
すぐ背後から聞こえた女性の声に、鈴蘭は息を呑む。
「え?」
恐る恐る振り返る。
「あ・・ああ・・・」
そこに立っていたのは、忘れるはずのない少女だった。
「ち、千歳!?」
千歳は穏やかな笑みを浮かべる。
「久しぶりだね・・鈴蘭・・・」
鈴蘭の顔から血の気が引いていく。
「な、なんで、なんであんたがここに居るの?」
千歳はどこか寂しげに微笑んだ。
「なんでだろうね?」
その曖昧な返答に、鈴蘭は震える声で続ける。
「あんたは確実に死んだはず・・・なのに」
千歳は病室の扉を見つめながら静かに口を開いた。
「あの男の子・・信じてたみたいだよ」
少し間を置き、真っ直ぐ鈴蘭を見据える。
「鈴蘭の事・・・」
鈴蘭は何も言い返せず、沈黙だけが病室を支配する。
やがて千歳は、小さく微笑んだ。
「でもよかったよ・・・」
「よ、よかった?」
鈴蘭が戸惑いを浮かべる。
「あんたは罪悪感なんて
これっぽっちも持ってなかった」
その一言は、まるで最後の確認だった。
千歳の瞳から温もりが消える。
「あの時から何も変わってなかった」
冷え切った声が病室に響く。
「私ね・・さっきの子とある約束してたの」
「や、約束?」
鈴蘭は恐る恐る尋ねる。
「あんたに罪悪感が少しでも残ってれば
殺すことは勘弁してあげる。けど──」
#普通
野々さくら
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ありあ
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千歳は一呼吸置く。
鈴蘭はそんな千歳に不安な眼差しを向ける。
「け、けど?・・・なに?」
「罪悪感がなかった場合は私の好きにするって」
「あ、こ、これは・・・」
「私は彼に義理は通した
だから心置きなく、あんたを殺せる」
鈴蘭は一歩後ずさる。
「ま、待ってよ・・・」
「なに?まさか今更命乞い?そんなの意味ないよ」
すると千歳は思い出したかのように
「あ、そう言えばこれって
鈴蘭が私に言った言葉だったね」
千歳は皮肉げに笑った。
「まぁ、因果応報だよね・・・」
「こっち来んなよ!」
鈴蘭は枕を掴み、力任せに投げつける。
だが枕は、幽体となった千歳の身体を何の抵抗もなくすり抜け、そのまま床へと落ちた。
「あ・・ああ・・・」
「そんなの当たらないよ」
千歳は冷たい笑みを浮かべたまま、一歩ずつ鈴蘭との距離を縮めていく。
「だって私、とっくに死んでるから・・・」
千歳はすでにこの世の存在ではない。
それを改めて認識した鈴蘭の顔は、みるみる青ざめていく。
「さぁ、死ねよ」
千歳が静かに右手を鈴蘭へとかざした、その瞬間だった。
まるで見えない手が首を締め上げるように、鈴蘭は突然喉を押さえ、苦しみ始める。
「うぐぅ・・・うぅ・・・」
空気を求めても肺に入らない。
喉が焼けるように痛み、呼吸のたびに意識が遠のいていく。
そんな鈴蘭を見下ろしながら、千歳は冷たく言い放った。
「もっと苦しめ・・・」
さらに一歩近づき、囁くように続ける。
「もっと・・もっと・・・」
「あぐっ・・うぅ・・・」
鈴蘭の身体は痙攣し、必死にもがくことしかできない。
やがて千歳は何かを思い出したように動きを止めた。
その脳裏に、不意に一人の男が姿が浮かぶ。
涙を流しながら自分を必死に止めようとしていた焔垂。
その表情が鮮明によみがえった瞬間、千歳は小さく舌打ちをした。
「ちっ・・・」
すると鈴蘭の首を締め上げていた力がふっと消える。
「がはっ!」
鈴蘭は床へ崩れ落ち、激しく咳き込みながら酸素を貪るように息を吸った。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
乱れた呼吸だけが病室に響く。
そんな鈴蘭を見下ろし、千歳はふっと笑みを浮かべた。
「殺すのは辞めとこうかな」
「な、なによ・・・それ」
鈴蘭は咳き込みながら顔を上げる。
千歳はどこか楽しそうな表情で言う。
「それよりももっと面白い事思いついた」
「は、はぁ?」
理解できずに眉をひそめる鈴蘭。
千歳はゆっくりと顔を近づけ、不敵な笑みを浮かべたまま鈴蘭の耳元へ囁く。
「ずー 〜っと見てるから・・鈴蘭の事」
「ず、ずっと?」
「そう・・・ず〜〜っと・・・ね」
その声は優しいのに、底知れない不気味さを孕んでいた。
「あんたがご飯食べてる時も」
一拍置いて、さらに続ける。
「お風呂に入ってる時も寝てる時も
好きな人とデートしてる時もエッチしてる時も」
鈴蘭は言葉を失い、恐怖で身体を震わせる。
千歳は最後に微笑みながら告げた。
「ず〜っとそばに居て、ず〜っと見てるからね」
すると千歳の目から光が失われる。
「でも・・もしかしたら、今後
殺したくなる時がくるかもしれないその時は──」
千歳は一呼吸置く。
「容赦なく殺すから・・まぁそれは
明日かもしれないし明後日かもしれない
はたまた1年後かもしれないし10年後かもしれない
鈴蘭の命の手綱握ってず〜〜っと見てるから
じゃあ、また会おうね、鈴蘭」
その言葉を残すと、千歳の身体は白い霧が風に溶けるように、ゆっくりと消えていった。
あとには静まり返った病室と、青ざめた表情の鈴蘭だけが残されていた。
コメント
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第58話読みました!千歳の再登場マジで鳥肌…!「罪悪感なかったら♡♡♡」って約束してたのに、焔垂くんの涙思い出して♡♡♡のやめたとこ、千歳の複雑な感情が伝わってきて切なかった😭 最後の「ずっと見てる」の台詞、優しい声なのに底知れない怖さがあって最高にエモかったです…!続き気になりすぎるんだけど!!💕