テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コアラと木の実
790
junp_Sn-Fk.
1,720
さや
132
放課後。
校門へ向かって歩く翔太の足が、ふっと止まった。
胸の奥が苦しい。
それでも、ゆっくり呼吸を整えながら空を見上げる。
夕焼けに染まる空は、とてもきれいだった。
「……。」
誰にも聞こえないくらい小さな声で、翔太はつぶやく。
「……生きたい。」
余命を告げられてから何年もたった。
「あと一年。」
「あと半年。」
そう数えられてきた。
何度も「覚悟してください」と言われ、そのたびに一人で受け止めてきた。
それでも、本当の気持ちは違った。
もっと学校に通いたい。
友達を作ってみたい。
普通に笑ってみたい。
文化祭にも、体育祭にも参加したい。
卒業式を迎えたい。
そして──大人になりたい。
「……まだ、生きたい。」
その声は震えていた。
涙が一粒だけ頬を伝う。
翔太はすぐに袖で拭き、いつもの無表情に戻る。
「泣いてる暇なんてない。」
そう自分に言い聞かせ、ゆっくり歩き出した。
その背中を、校舎の窓から阿部亮平が偶然見つめていた。
「……渡辺。」
いつも一人で歩くその姿が、今日はどこか苦しそうに見えた。
亮平は小さな違和感を胸に抱きながら、翔太が夕暮れの中へ消えていくのを静かに見送った。
コメント
7件

うー 全部1人で抱えるの 早く手を差し伸べてあげて欲しい。

うん…読んだよ。第4話、すごく胸にきた。 翔太くんの「生きたい」って言葉、夕焼けの空の下で小さくこぼれたみたいに響いてきて、切なかった。あの、涙をすぐに拭いて無表情に戻るところが、余命と向き合ってきた彼の強さと寂しさを感じさせて。亮平くんが偶然その背中を見てる描写も、この静かな伏線がすごく好き。生きたいって、こんなにまっすぐな願いなんだなって思ったよ。