テラーノベル
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重厚な鉄の扉が、鈍い音を立てて開く。 皇室の至宝が眠る地下宝物庫――そこは、空気そのものが黄金の輝きを帯びているかのような空間だった。
「……ここが、我が国の歴史そのものだ。ソフィア、圧倒されたか?」
エスコートするカイル殿下が、誇らしげに私の横顔を覗き込む。
「ええ、殿下……。あまりに神々しくて、言葉も出ませんわ」
私はうっとりと頬を染め、微笑みを浮かべて見せた。――だが、その裏で、ガチ鑑定士の目つきをした私は素早くお宝を査定していた。
(……さて、換金性の高いお宝はどれかしら? 絵画は嵩張るからパス。王冠は目立ちすぎて闇市で足がつく。狙うなら小粒で高価な……そう、これ!)
物色する私の目に留まったのは、一番奥のケースに鎮座する、大粒のアレキサンドライトを連ねた首飾り――『暁の瞳』。
「殿下、この首飾り……なんて素晴らしいのでしょう♡」
彼によると、初代皇帝が妃に贈った由緒ある品だが、デザインが古く誰も身に着けない「死蔵品」らしい。
《……これだわ。一粒でも相当な金貨になる。全部いただいてドレスの裏に縫い込めば、一生遊んで暮らせるじゃない! しかも一粒ずつ外せる特別加工?! なら、さっそく一粒……》
私は殿下の目を盗み、その宝石に指を伸ばした。……その瞬間。
――パァァァァンッ!!
「っ!?」
鼓膜を刺す高音とともに、私の指先から一瞬、鮮烈な「エメラルド」の奔流が溢れ出した。
(えっ……。緑? これって、ゲームの聖女だけが使える治癒の光(セイント・オーラ)!?)
「ソフィア、離れろ……っ!」
カイル殿下の鋭い声が飛ぶ。背後から強引に引き剥がされたが、急に意識が遠のき、私はそのまま深い闇の中へと落ちていった。
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