今回一生ブライド視点です
episode17 いつも通りに
「何してんだこのバカ!!!」
ブライドside
現場に到着した際、見えたのは例の彼女の姿。
と、無数に飛び交うウイルス。
現場は山奥にある小さな村。村の者に話を聞くと、いきなり気持ち悪さを覚え外に出たら外には映矢輝がいたのだと言う。
中には高熱を出し倒れた者もおり、村に住むほぼ全員が体調不良を訴えていた。
彼らを一度映矢輝から死角になる位置に待機させ、戦闘態勢に入る。
映矢輝はこちらを見るや否や杖をこちらに向けて魔法陣を広げる。
久々に感じる映矢輝の強い魔力。その魔法陣からは魔法での攻撃。七色に輝く弾幕と元素の混合技だ。
自分の俊敏性を活かして逃げながらも戦う。
その間にも他の家屋を無言で壊していくもんだから、人間を守るので精一杯。
映矢輝の方がやや優勢かと思った直後、所夜が飛んできた。
「怪我はありませんか?遅れて申し訳ないです。」
そう言いながらも、所夜は映矢輝と直接対面。私に一度任せろと圧をかけているように感じる。
「私は何ともない。だが村の者は倒れた家屋やウイルスによって怪我をしている。ほとんど全員ウイルスにやられてるな。治療薬大量に頼んどいてくれ。」
「了解しました!!」
とりあえず所夜と一時耐えて、オブサーバー本部から薬が届くのを待つことに。
その間は所夜が空間からバリア状のドームを出しその中で戦って時間稼ぎ、私はウイルスとの応戦と怪我人や病人の護衛をする事になった。
作戦が決まった途端、所夜は早速空間を展開する。そして所夜の姿が見えなくなったのを合図に自分の仕事に取り掛かる。
と言ってもウイルスをいつも通りぶった斬るだけ。本部から薬が届くまでは民家の者を守るのが最優先だ。
先程一時的に避難させた場所へ向かい、次の避難場所をさがす。
まだ比較的安全そうな家を見つけた。ここなら大丈夫そうだ。
自慢の力で素早く村人を運び、布団を持ち込み寝かせる。
唯一ウイルスにかかっていない若者に中から絶対出ないで鍵をかけるよう命じる。これでもう暴れ放題。
外に出て、鍵がしまった音を聞きウイルスを切りに向かう。
村の土地を広く使って戦い、順調にウイルスの数を減らす。周りの木々のおかげか、はたまた偶然か、空気も少しばかり澄んできている。
これでより戦いやすくなった。一瞬の隙も見逃さず、細い刃を貫く。
大量にこそいるものの、一体一体の精度はそこまで高くないし強くない。
村人が1点に避難しているおかげで自由に動けるので、時間はかからなかった。
ある程度数が少なくなった所で、本部から薬が届いた。中を開けて素早く怪我人の元へ走る。
空気が澄んだおかげか、心做しか病人達の顔色が回復しているように感じる。兵士時代の経験を活かし、正確に注射針を打つ。
後はこれを繰り返すだけ。だが、人数が人数だ。小さいとはいえ、村は村。人は多い。
なるべく早く、正確に注射針を差し込み、ある程度方が着いたので、一時休憩。この作業だけで1時間半ほど消費してしまった。
所夜に早く応戦しなければ。10秒ほど座り、深く息を吸い込む。よし。まだ戦える。
残りの残党を排除し、村人達にもう安心しろと伝え鍵を開けて換気をさせる。
知識に溢れている訳では無いので、あとは本業に任せるとしよう。
本部に救護班を要請し、所夜の空間がある方へと向かう。
「おい所夜。こっちはあらかた終わった。応戦するから空間開けろ。」
すると、空間の1部が自動ドアのように開いた。ちなみになぜ自動ドアを知ってるかと言うと、デパートに行った時所夜に教えられたから。
こんな風に開くのかよ、と思いつつも心の内に秘めておく。
そして覚悟を決め、空間の内部へと踏み込む。
入った途端分かる、血の生臭い匂いと2人の気配と匂い。
一体どんな有様になっているのか、見た途端に全てを理解した。
ありえないほどの魔力と魔法陣の数。そして壊れ果てた電車と焦げた弾幕。
少し嗅ぐだけで、その力が伝わる魔力。あいつの本来の力がこれ程だったとは思っていなかった。
そしてまさかと思って2度見した。が、間違っていなかった。映矢輝が所夜を追い詰めていたのだ。
そして、ついに所夜に杖が向けられる。まずい、止めろと本能がそう訴えかける。
咄嗟に身体が動いた。所夜に覆い被さるように庇い、映矢輝から距離をとる。
魔法はギリギリの所で当たらず、映矢輝は舌打ちをした。
「おい……!大丈夫かよ……!」
およそ自分の口から出たとは思えないくらいに情けない声。血には見慣れているはずなのに、何故かモヤモヤする。
「いやぁ、やらかしましたね。まさか貴方に助けられる日が来るなんて思っていませんでしたよ…。」
「戦闘員って、常に最悪を予想しなきゃいけないんですね。今回の任務、映矢輝さんが絡んでると知らずに油断していたのが間違いでした、、。」
「あぁ、後、彼女の急所はやはり心臓。まぁ、人体の構造をしているので当たり前といえば当たり前ですがね、、。」
「もういい。それ以上喋るな。止血するから黙って寝てろ。」
そういうと、本当に寝たらしい。当然だ。
私は自分の行動を悔やむ。
最初におかしいと思うべきだった、と。
彼女が私を空間の中に入れた時点で察するべきだった。
私に過保護と言っていいくらい付きまとい、付きまとい守る女だ。
危険な現場に私を入れ込む時点でSOSのサインだったのだろう。
気づかなかった、気づけなかった。どうして?
そして今、こいつをここまで追い詰めた彼女。数日前に家に来た時とは想像できない雰囲気と魔力とその力。
無邪気に振りまく笑顔は、もうその面影すら見せてはくれない。
今でこそ魔力回復のために攻撃をしてこないが、もうすぐ、戦わなければいけない。
できるか?私に。油断していたとはいえ、私の何倍もの力を持つ所夜に勝利した彼女に勝てるのか。
そもそもさっきだって優勢になられてた。所夜が居なかったら、それこそ追い詰められていたかもしれない。
手先が震えて収まらない。いつもは武者震いだと強がるが、今はそんな気力もない。
こんな手じゃ、止まる血も止まらねぇよ。バカ。さっさといつもみてぇに止血くらいしろ。
いっつも庇って守ってもらってばっかりでよ、たまにはてめぇでやれよ。
なんで肝心な時にこの身体は言うことを聞かないんだよ。動けよ。鞭で叩かれなきゃ動けねぇのかよ。
自分でも分からない。なんでなんだよ。震えを止めろ、動け、今度は私が守れ、映矢輝を倒せ。でも、あの一緒に過ごした時間は?私に、そもそも倒せるのか?
思考がごちゃ混ぜになる。もう何も考えることは出来ない。
そもそも、なんで今私はこんな気持ちになっている?
わかんねぇよ、どうしろって言うんだ。
「もっとここをこうしなさい?」
「お前には決定権も拒否権もない」
「なんでこんな簡単な事も出来ないのよ!!」
「お前の事をなんで産んだのか分からない」
「さっさと俺の前から失せろ。」
「気持ち悪い」
「感情がないお化けだぁ!」
「あの兵長、役たたずだよな」
「できて当たり前」
「しっかりやれ」
「もっと強くなれ」
「恥さらし」
そして、なんで、私は今泣いている?
ドンッ
「何してんだこのバカ!!」
ふと、そんな声がした。
背中を、強く蹴られた気がした。
振り返ると、そこには。
「師匠……?」
「何情けない顔してんのよ。貴方そんな感性豊かだっけ?」
「えっ、、?、いやでも、、?はぁっ、?」
「まぁそんな事はどうでもいいわ。私は忠告をしに来てあげたの。よく聞きなさい。」
「今、ここで諦めたらあなたもその子も死ぬ。」
「分かっているでしょうけど、あの魔法使いはとっても強いわね。でも、あなたなら勝てる。」
「……かいかぶりすぎだよ。勝てると思ってんのか、私に。」
「ええ、思ってるわ。いいからよく聞きなさい。私が勝てるったら勝てるのよ」
「いい?いま、あなたの思考は戦ってるの。自分の気持ちと、事実が。」
「私は稽古の時、いつも言ってるわよね?自分の気持ちで動いて事実を解決しろって」
「だから、何としても、この子を守り切りなさい。そして、魔法使いを倒しなさい。最後にあなたとその子と魔法使いの3人で家に帰りなさい。」
「私は応援することしか出来ない、背中をぶっ飛ばすことしかできない。でも貴方ならできる。私の教え子なんだから」
「……もう、涙は止まったわね?」
「……ああ。もう師匠に慰められる歳じゃ無くなったんだがな。」
「あら、そうかしら?」
「じゃあ最後に、私はもうこれしか言えないから」
「頑張ってね。ずっと先生は、貴方の一番の応援隊だから。」
「……っふ、相変わらず脳みそが筋肉でできてんのかよ」
「でも、、ありがとなぁ、師匠。」
「おかげでいつもの私に戻れたよ。」
すると、魔力回復が終わったのか映矢輝が話しかける
「話はそれで終わり……?」
「あぁ、お前を倒す覚悟ができたからな。」
「っふ、馬鹿馬鹿しい。地獄の神であるこの私に勝てるとでも思っているの?たかが人間風情が。」
「っは、地獄の神?そんじゃそこらにいるただのガキじゃねぇか」
「いいぞ?そこまで余裕ならやってやるよ地獄の神様?」
「お前の最後の遺言を聞いてやる!この人間様を舐め腐った愚か者に鉄拳制裁を降ろすこの私がなぁ!」
なんとか1ヶ月分の遅れを取り戻すために頑張りました!
ついに、ついにブライドの心境に変化が起きましたね✨
いやーここのシーン書くの楽しすぎて1日で書き終えちゃいましたよ
次回もお楽しみにー!
コメント
2件
ブライドが!!ついにブライドの心が!温かみ?人間み?を帯びていくというか、、最終的にどうなっていくのか楽しみです!✨