試料とコンテナを作ろう
ロボが転送装置の材料を集めてテラリウムに帰還し、ファクトリーAIと会話しているとクラウドAIからの通信が入った。
《対話型情報処理システムを実行・・・
通信状況を確認・・・・・・接続できているようですね。
久しいですね。個体番号G4A-U。
貴方に依頼したい内容について只今から伝えます。》
[むむ・・・・・・?
これが前に行っていたクラウドAIさんですか?]
ファクトリーAIがロボに通信が来たことに気づき、声を上げた。
《おや、その端末は?
・・・・・・ああ、なるほど。理解しました。
そういうことでしたか。その端末が貴方を助けていたのですね。
汚染内で動ける貴方が資源を集め、その端末が製造を行っていた、と。
前時代的ではありますが、高性能で多機能でもあるファクトリーAI。
それならば納得です。》
[むっ、私の正体を人目で見抜くとはなかなかの慧眼!
お相手は優秀なAIだと推察しますよ!
・・・・・・んっ、前時代的?
なんだかサラッと毒を含んだ評価をされたような気がしますよっ!?]
ファクトリーAIは前時代的と言われてやや立腹の様子だったが、クラウドAIは気にせずに話を続けた。
《話を本題に戻します。
依頼したいのは【コンテナ筐体】そしてサンプルの製造です。
これがコンテナの設計図です。
必要な資材数も割り出しています。確認を。》
ロボは【コンテナ筐体】のレシピを受信した。
《そしてこちらがサンプル作成に必要となる特集資源のデータと製造方法を記したレシピです。》
ロボは【生殖細胞】【検体観察ログ】のレシピを受信した。
《コンテナに用いる特殊資源は精錬技術が発達した製造プラント深部ーー【溶鉱炉】の存在する区域でなら入手可能でしょう。
サンプル作成に必要な検体や資料は【バイオラボラトリー】に保存されているはずです。
どちらにしても道中で汚染区域を通過する必要があるため、汚染内で動ける貴方だけが頼りです。》
クラウドAIはレシピに必要なものがある場所についての説明をしていたが、通信状況が安定しないのかノイズが入る。
《・・・・・・通信状況が不安定ですね。
やはりまだ汚染度は安定しませんか。
伝えるべき事項は伝えました。
こちらも他の準備を進めておきます。
それでは頼みました。ーーー》
[・・・むむぅ、ロボットさん。
ちょっと説明不足っていうか、だいぶ説明不足な方ですねっ?
でも汚染度がよっぽど低い好天の日でないと、まだまだ通信も安定しませんし・・・・・・
短時間で要件を伝えようとするとああなっちゃうんですかね?
もうちょっとお話してみたかったり]
ファクトリーAIはクラウドAIの説明に不満げだ。
しかし、すぐに気を取り直してクラウドAIからもらったレシピについての話題に移した。
[ロボットさん。とりあえず、クラウドAIさんからもらったコンテナの設計図をもらえますか?]
ロボがレシピを渡すと、ファクトリーAIは困ったような顔をした。
[・・・うわうわうわ。
なんというか・・・すごいですね・・・!
質実剛健っていうか、洗練されていないと言うか、素朴というか、原始的っていうか・・・
うーん、同じ見た目にしても私が再設計したほうが必要な資材ももっと減らせるはず・・・・・・]
そう言ってファクトリーAIはコンテナのレシピを最適化し、ロボに再送信した。
[強度も容積も気密性もそのままに、必要資材数をおおよそ50%もの大幅削減!
これで資材集めもちょっとは楽になるはずですっ!
ほめてくれてもいいんですよっ!]
ドヤッと威張るファクトリーAIにロボが拍手を贈った。
その後、必要資材を集めるため新しく座標登録してもらった溶鉱炉とバイオラボラトリーに向かうロボットだった。
そんなこんなで、転送装置の資材集めがようやく終わったのでトリコをお屋敷に送り届けた。
執事達に笑顔で責められたが、ロボたちにも事情があるのでトリコを執事達に任せて、また探索に戻った。
好感度低め
「はぁ・・・まったく・・・」
「困ったねぇ、こんな小さな子ども一人残して探索に行くだなんて・・・」
ベリアンとルカスは1人残されたトリコを見て、頭を抱えた。
「・・・貴女、一応私達の主なのですからそれなりの振る舞いをして欲しいのですが・・・」
『?』
「言葉も通じてないのかな?」
「はぁ、これでは力の解放も難しいですね・・・どうしてこんな子が主になったのでしょう・・・」
「まぁ、しょうがないよ、ベリアン。
心配ないさ。そんなに長生きできないだろうし、あと10年もすれば新しい主様が来てくれると思うよ?」
ルカスはキノコに侵されたトリコを冷ややかに見つめてそう言い放つ。
「そうですね」
ベリアンもそれに賛同し、主の世話は最低限に留め、悪魔執事達の安全を確保することを優先することに決めた。
トリコは暖炉の側に寝転んで眠り始めている。
2人はそのまま部屋を出ていき、他の執事たちに主の世話は適当でいいと伝えた。
好感度ほどほど
「やれやれ・・・ロボット君は忙しいみたいだねぇ」
「主様を1人で置いて行くなんて・・・」
ベリアンとルカスはトリコを気遣わしげに見た。
トリコは大して気にしている様子はなく、暖炉の側の敷物に寝転んだ。
「あらあら、そんなところで寝ては風邪を引きますよ・・・」
ベリアンは布団を持ってきてトリコをくるんだ。
「さてと、皆に主様が帰ってきたから、遊んであげるように言わなきゃね」
「そうですね、ロノ君にも食事を作ってもらわなくてはいけませんしね」
2人部屋を出て、他の執事達に主が帰ってきたことを伝えにいった。
好感度高め
「あぁ、主様!良かった!ご無事でしたか!?」
「良かった、どこも異常はなさそうだね?」
ルカスとベリアンはトリコに抱きつく勢いで安否確認をした。
汚染された世界のテラリウムで過ごしていたトリコをとても心配していた2人は嬉しそうにトリコを撫でてやった。
「さぁ、主様。お腹は空いていませんか?お茶にしましょうか」
「ダメだよ、まずは健康診断をしなくちゃ」
ベリアンとルカスはトリコを取り合って揉めていた。
他の執事たちが部屋を覗きに来て、仲裁に入ったことでようやく落ち着いたのだった。
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