キィーーーッ…ドン!
高校3年の最後の夏。俺はこのときに起こった悲劇を今でも鮮明に覚えている。
君を轢きずり鳴き叫ぶ車の音。美しいと感じてしまう程真っ赤に染まった血飛沫の色。そして夏の香りと混ざり合いむせ返る血の香り…
これは時折僕の夢となり何度も僕の脳裏にトラウマを植え付けてゆく。
あれから今日でちょうど7年がたつ。俺は社会人として仕事にもだいぶ慣れて、そこそこ充実した日々を送っている。
今日は彼女の誕生日だから会いに行こうと思う。あいつはきっと1人寂しく俺が来るのを待っているだろう。
そんなことを考えながら1人車を走らせる。
さてここで1つ俺の昔話でもしようか。内容は…そうだな、高校3年最後の夏の話をしよう…
俺と彼女はまるで漫画の中にしか存在しないような珍しいカップルだった。俺の父親はとある会社の社長で、俺の家庭は俗に言う金持ちだった。一方彼女は言われてもどこにあるのかわからないような田舎から引っ越してきた貧乏人だった。
基本俺の周りには金持ちのやつらが寄ってくるので彼女の存在がとても新鮮だった。
彼女といると心が苦しくなる。そして気持ちの抑えが効かなくなった時、気が付いたら告っていた。彼女はかなり戸惑いながらもOKしてくれた。まさに天にも登る気持ちだったのを今でも覚えている。
そして彼女と付き合ってから半年がたったころ、あの悲劇が起きてしまう。
その日は彼女の誕生日だった。俺はこれまでにない程の幸福感と共に彼女とのデートを楽しんだ。
「○○」
俺は彼女の名前を呼びプレゼントを薬指にはめる
「!これ…」
「そう、ペアリング」
「本当なら結婚指輪を渡したかったんだけど、俺たちはまだあと1年も待たなきゃだからさ。せめて俺の気持ちを伝えたくて…」
「っありがとう…どうしよう…私今すっごく幸せだぁ…」
「よかった…俺も幸せ」
お互いに愛を伝え合い、時間も時間だったのでそろそろ帰ろうとなり、しばらく歩いたところで…
キィーーーッ…ドン!
1台の暴走した車が突っ込んできたのだ。
俺がこの状況を理解するのに数分はかかった。
「○○…?」
震えた声で彼女に呼び掛けるがなんの返しもこない。
「!あぁ…そうだ救急車」
震える手を無理矢理動かし俺は急いで助けを呼んだ。
俺は助けが来るまで彼女の命を救うためできることは全てした。
すると一瞬だけ彼女はうっすらと目を開け、霞んだ声でこう言った
「○○君…私に幸せを与えてくれてありがとう…大好きだよ…愛してる…」
これが彼女の最後の笑顔だった
「俺も○○のことが大好きだ!愛してる!だから…」
だから…どうか逝かないでくれ…!俺を置いてかないで…
そう言い終わる前に彼女は最後の力を使い切ったかのようにすぅっと眠りに落ちた…
ここから先はただただ喪失感にまみれていた
病院には俺も同行した。
そして7月29日23時55分。彼女は静かに息を引き取った…
「心中お察し申し上げます…どうか彼女さんにお会いになってください…その方が彼女さんも安心できると思いますので…」
「…はい」
安置室のドアを開けるとそこには真っ白になりベッドに横たわる彼女がいた
「…冷たい」
いつもは温かい手も今は氷のように冷たい。りんごのようにほんのり赤く染まっていた頬も温かみを失っている。
「…○○」
試しに名前を呼んでみるがなんの反応もない。
このとき俺は彼女はもうこの世にいないということを改めて実感した。途端に大粒の涙がボロボロと溢れ出てきた…
そして俺は涙が止まるまでずっと…ずっと彼女の名前を呼び続けた…
俺の昔話はここまで。これより先の話は…何となく想像できるでしょ?
彼女の元に着いた。
「久しぶり」
「ごめんな。最近忙しくって全然会いに来れなくて…寂しい思いさせちゃったかな…」
「今日○○の誕生日だからさ、ちゃんとプレゼント持ってきたんだぜ」
コトン…
「誕生日おめでとう」
「プレゼント…本当は直接指にはめてあげたかったな…」
「これ、なんだと思う?」
「結婚指輪なんだ。2人で一緒だね」
「○○…」
○○も生きていれば俺と同い年なんだな…なんか俺だけ歳を重ねていっているみたいだ…
本来なら高校卒業したら結婚して一緒に暮らして、子供なんか作ったりして…幸せに生きていたはずなのにな…
けれど愛する気持ちが少しでも揺らぐことは絶対に無い。俺の人生にはいつだって○○がいる。それだけで俺は幸せだ…きっと○○も幸せを感じてくれているはずだ…
「○○、大好きだ。愛している」
『私も愛しているわ』
「!」
「○○…?」
なぜだか涙が溢れてきた
「っ…○○…」
今日は君の誕生日であり君がこの世を去った日…
強く愛する気持ちがぶつかり合えば、奇跡が起きるのかもしれない…
コメント
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語彙力ありすぎて禿げちゃう((
あああ…切ない… ちゃんと指輪用意して行ってあげるの良いですね…((語彙力喪失