テラーノベル
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酒臭く、笑い声が響く
ひと街の居酒屋。
「ええ、仰る通りです」
酷い苦笑いを浮かべる俺。
ブラック企業の付き合い
というものほど、
地獄に近い現実のものはないと思う。
「ウチには若い奴が少なくてねえ、
小松原くんのような優秀な人材が欲しいよ。 」
取引先のおエラい様は
年寄り同士で媚びへつらう。
「そうでしょう?
そろそろ昇給でもさせようかと思っているんです」
するとうちの課長は調に乗り
ありもしないことを云う。
「いえいえ、
全て課長の尽力のお陰です。」
どうせそう云って欲しいだけだ。
俺は会社が有利になるよう
動くことしか許されない。
「そういえばもう1人
佐崎という若いのがいるんですがね」
課長が唐突に出した名前に
ドキッとする。
「実績はいいのですが
どうも軽薄というかね、
小松原くんから見てどう思う?」
こんな奴に佐崎の人間性を
評価する資格は無い。
そう、怒りが込み上げる。
「そうですね。 」
だが、その感情は隠すしかない。
「ですが ああ見えて
努力家ですよ、彼」
旨さなんて感じない発泡酒を
喉に流しながら、俺はそう云った 。
〃
媚び、笑い、呑む。
それを繰り返していた時。
背広の胸ポケットでスマホが震えた。
「申し訳ありません
少し外します 」
通話画面を開く動作をしながら
そう云い席を立つ。
表示された名前を見ると
俺のイラつき沈んだ心は
一気に晴れる。
「どうした?佐崎」
「随分嬉しそうな声出すんですね、
先輩?」
俺の心情を読み取り
図星をつく彼に
俺は否定出来ず声を詰まらせる。
「そこ、抜けれませんか?」
そんな俺を少し笑った声を
漏らしながら彼はそう云った。
〃
「お疲れ様です。先輩」
店ののれんをくぐり、
#グロ注意
ひな
11
38
冬夜の冷たい空気を浴びると
そこには彼がいた。
「いつからここに居たんだ?」
「最初っからですよ」
「全部聞いてました」そう言うように
彼はにこにこと笑みを浮かべる。
その笑顔に救われる。
「ったく、風邪ひくぞ」
先程まで上司に言っていた、
常套句のような気遣いでは無い。
お前には毎日会いたいから、
元気でいて欲しい。
そんな素直な願い。
「本当に抜けてこれたんですね。」
「ああ、あいつらもう大分
酔ってたし、 気づかないだろ」
「もし気づいたら
どうするんですか?」
「そんなの、
お前のためなら
降格でも降給でも受けるよ」
なんてキザな言葉が
口から滑り出る。
「ふふ、
もしかして先輩、
ちょっと酔ってます?」
目の前で彼は綺麗に笑い、
首を傾げ俺の顔を覗いてくる。
「そんな先輩には悪いですけど 」
「どうです?飲み直しませんか?」
〃
酒は香り、声も響く。
先程と似たような店のはずだ。
だが俺の心持ちは別種類の
飲食店にでも来ているように違う。
テーブル席にも関わらず
当たり前のように隣に座る彼。
彼といると一生体温の高い
顔のまま、愚痴を零し合う。
「俺、先輩が出世するのは
嬉しいですけど
部所が離れるのは嫌ですね 」
そんな云い合いの中で時々デレる
彼に胸の鼓動は高くなる。
酒が体内を巡り、
表情管理が上手くいかないまま
彼を見つめてしまっている。
〃
「寝ちゃいましたか」
酒と彼の声の心地良さに打たれ
俺は浅い眠りについていた。
彼の声は耳に入っているのか
入っていないのか。
不鮮明に響いている。
「おやすみなさい、先輩」
不明瞭な詩とともに
唇には柔らかい感触。
「………」
しばらく
じっと見つめられているような
感覚がした後、
また唇に同じ感触があり、
一滴の水が俺の舌に当たった気がした。
「ごめんなさい
1回じゃ足りませんでした」
「おやすみの口付けと、
お疲れ様の口移しです。」
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コメント
16件
初こめ失礼します !! 宣伝から来ました!! 見てみたらほんっっとうに神すぎて発狂しちゃいました !!!!( タイトルから神すぎて……🤦♀️💗 よかったら仲良くしませんか!!?

やーーだあ!!!!! ななななにこれ尊すぎじゃないのお!!! オバチャン流石に悶えたヨ😧😧😧😧😧💞💞💞💞