sideシャルルダルク
マリーナの頬への口づけに、俺は大人気なく腹を立てていた。
マリーナも強情ゆえ、余計に腹が立った。
なんとくだらぬ喧嘩をしているのだろう、と思ったが、やはり俺から折れるのはシャクだった。
だが、このままというのも…
その隙に他の男に取られでもしたら…
そんな考えを打ち消すように仕事に力を入れていた。
外交ではマラライカとの平和協定を結び、関税の調整をし、財務では新たにタバコ税を取り入れた。
俺の仕事っぷりには、バルサック兄上とラヒト兄上も流石シャルルだ、と驚いていた。
そんなこんなで忙しい日を過ごす中、急遽、バルサック兄上から呼び出しがかかった。
一体なんの用だろうか…?
仕事においては、完璧なはずだ。
そんな事を思いながら、兄上の政務室に入っていくと…
「おぉ、シャルル。
仕事に打ち込んでおるそうだな。
ブッ…!」
バルサック兄上は最後に吹き出した。
「何がおかしいのですか!?」
「お前が仕事に打ち込む時は、落ち込んだ時よ。
みんな知っておるわ。
…マリーナか?」
兄上は言った。
「さて、何のことか…」
「話はそのことでは無い。」
「と申しますと?」
俺は尋ね返す。
「ふむ。
隣国のマラライカとの外交は順風満帆のようだな。」
「はぁ…
それが?」
「マラライカの国王ヘイガル様から、お前にヘラ王女と結婚させたい、と申し入れがあったぞ。」
「はぁ!?」
俺は驚いた。
「この場合の結婚とは、もちろん正妃として、という意味だ。
わかるな?
相手は王女であるからな。」
「ちょっと待ってください!
俺は……」
「マリーナを愛している…か…
しかし、マリーナは貴族といえど、所詮は侯爵令嬢だ。
王女とは比べ物にならぬ。
いや、マリーナを否定しておるわけではない。
ただ…
シャルル、そなたももう25歳だ。
そろそろ、身を固めて世継ぎの1人や2人おっても良かろう。」
兄上はいう。
「ヘラ王女のお気持ちはどうなのですか?」
「お前にぞっこんだそうだ。」
兄上がニヤリと答える。
「はぁ…
食事しただけでございますが…」
はっきり言って迷惑だった。
俺が抱きたいと思うのも、愛しいのもマリーナだけだった。
「まぁ、断るなら、それこそ外交問題にならぬよう、細心の礼儀をもってせよ。」
兄上は言い、俺は頷き政務室から出て行った。
もう一度ヘラ王女ときちんと話さなくてはなるまい…
さらに俺は気が重くなり、それを忘れようと仕事に打ち込んだ。
そろそろ、マリーナの笑顔が見たいものだ…
そんな事がふと頭に浮かんだ。






