「あの…さ、私もしかして、聞いたらいけないようなこと聞いてたりする…?」
彼をもっとよく知りたいと思って、やや踏み込んでみた話だったけれど、あまり聞くべきではなかったようにも思えていた。
「いや、いいって。ここまで聞いたんだから、全部聞いとけや」
ハンドルを握り、正面を見つめたままで銀河が口にする。
「うん…」
「……いつも『紫の目が神秘的』だとか言われて、勝手に王子様扱いをされて、その王子様キャラと少しでも違うことをすると、『イメージと違う』だとか言いたい放題に叩かれて。
だいたいそんなイメージなんて俺が作ったもんでもないし、そっちが勝手に作ったんだろ…って思ってな。
そんな風に、勝手なイメージとかを押し付けられるのが嫌で、俺は周りとの関わりを極力避けてたんだよ…」
銀河が打ち明けてくれた話に、知らず知らずの内に涙がこぼれていた。
「……おまえ、何泣いて……」
私の涙に気づいた銀河が、唖然とした顔で口をつぐんだ。
「えっ、ああ……泣いてたんだ、私……」
カバンからハンカチを出して涙を拭いながら、
「なんかね……私といっしょだと思って……」
ふと気づいたら、いつの間にか自分のことを語り出していた。
「……私も、ミス・キャンパスに選ばれて理沙様とか呼ばれて、勝手なイメージばかりを植え付けられて、イメージ通りじゃないとわかると、途端にみんな離れていって……。
だから、そんな風に急に離れていかれるのが恐くて、自分の気もちに嘘ばかりついて、なるべく周りとうまくやろうとしてたから……」
拭いた涙が再び滲んで、ぐしぐしと目をこすりながら話した。
「……だから、俺と似てるかもって言っただろ?」
銀河がそう言うと、運転席から片手を伸ばして、ふっと労わるように私の頭を撫でた。
「……でもな、俺はおまえみたいに、嘘をついてまで周りとうまくやろうとはしなかったけどな。結局、イメージと違うということも含めて、周りはそういう風に俺を見てるんだと受け入れた上に、俺自身は、俺なりにやるだけだからって。いつまでも現実逃避してても、なんも解決しねぇしなって」
そう、きっぱりと言い切った──。
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