テラーノベル
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深夜のスタジオ。全体リハーサルが終わり、メンバーが次々と帰路につく中、佐久間大介は一人、ベンチに浅く腰掛けて天井を見上げていた。
「……はぁ……」
小さく吐き出した息には、隠しきれない疲労が混じっていた。
いつもなら誰よりも元気に「お疲れ様でしたー!」と叫ぶ彼が、今日は指一本動かすのも億劫そうにしている。
誰にも弱音を吐かず、笑顔の仮面で疲れを隠し通した一日。
けれど、その仮面が剥がれる瞬間を見逃さない男が一人だけいた。
「……らしくない溜め息」
足音もなく近づいてきた宮舘涼太が、佐久間の隣に腰を下ろした。
手には温かい紅茶のボトルが2本。
「……あ、だてさん。……まだいたの?」
「相棒が動けないでいるのに、置いて帰れるわけがでしょ?」
宮舘はそう言うと、ボトルのキャップを開け、佐久間の手元に握らせた。
温かさが冷えた指先に染み渡る。
「……バレてた?」
「当然じゃん。俺たちがどれだけの時間を過ごしてきたと思ってんの」
宮舘の静かな声。
かつて二人の間には、言葉を交わすことさえぎこちない「氷河期」があった。
だが、その冷たい季節を越え、ぶつかり合い、認め合った今、二人の絆は誰よりも太く、強固なものになっている。
「佐久間。……無理して笑うのは、お前の美学かもしれないけど」
宮舘がそっと手を伸ばし、佐久間の頭を引き寄せた。
佐久間の頭が、宮舘の広い肩に乗る。
「俺の前では、その仮面を外してよ。……俺は、お前の弱さごと受け止めるために、ここにいるから」
「……りょーた……」
その言葉が引き金となり、佐久間の張り詰めていた糸がプツンと切れた。
佐久間は宮舘の肩に額を押し付け、震える声で呟いた。
「……しんどかった。……今日、全然うまくいかなくて……」
「うん」
「……俺、足引っ張ったかも……」
「そんなことないよ?佐久間がいたから、現場は今日も明るかったから」
宮舘は佐久間の背中を、一定のリズムで優しく叩き続けた。
その手つきは、凍えた心を溶かすように温かい。
「……昔はさ、お互い何考えてるか分かんなかったのにね」
「そうだね。…だからこそ、今は言葉にしなくても伝わるのかなって。思う」
宮舘は少しだけ体勢を変え、佐久間を抱き込むように腕を回した。
佐久間も、そのロイヤルなコートの温もりに甘えるように身を預ける。
「……今は、涼太が隣にいると……すげぇ安心する」
「…俺も、お前の太陽のような明るさに救われてるよ?」
宮舘は佐久間の髪に唇を寄せ、誓うように囁いた。
「ちょっと休みな。……お前が再び輝けるようになるまで、俺が雨風を凌ぐ盾になってやる」
「…んふふ、キザだなぁ……」
「貴族だからかな?」
佐久間が小さく笑う。その笑声には、いつもの元気が少しだけ戻っていた。
氷河期を越えた二人の間には、もう冷たい風は吹かない。
あるのは、お互いを支え合う、春の日差しのような温かい信頼だけだった。
コメント
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いつもげんきなさっくんも落ち込むことあるよね~ だてさまに癒されちゃってくれ! 続きまってます!
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