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「まじか、傘忘れた」
傘もないのに外は生憎の雨だった。雨が止むまで待つにしても時間かかりそう。
天気予報見ておけばよかった。
ひさしの下から出られないまま途方にくれる。
「○○」
名前を呼ばれて声のほうへ振り返る。
「…久しぶり北斗」
そこには傘を持った元彼の姿。職場が同じだと見かけることも多い。
北斗が私の肩を抱いて傘を傾けた。
「傘忘れたんでしょ?入っていきなよ、家まで送る」
1つの傘に入ると顔の距離も近くなる。なんとなく目を逸らしてしまった。
「忘れたよ。でも私達別れたよね?」
「そのことなんだけど、もう1回やり直せないかな?」
振ったのは私からだった。
好きなんだけど、束縛が激しくて疲れた。自分の人生を全部北斗に捧げることはできない、合わないんだと思う。
「無理だよ」
「なんで?彼氏できた、とか?」
「もう好きじゃないから。それだけ」
「待って!」
北斗が私の手首を掴んで引き寄せる。そのまま抱きしめられた。
「好きじゃなくてもいい、今度こそ幸せにするから、だから」
すぐに離れないとまた気持ちを持っていかれそうで怖かった。
「離して、」
突然、後ろへ肩を引っ張られ背中から誰かにぶつかった。
「なにしてんの」
「__樹!?」
なにしてんのってこっちのセリフ!
急なことで樹の腕の中で硬まる。
「俺ら2人の問題なんで邪魔しないでもらえません?」
「嫌がってんだからやめろよ」
お互い睨み合って一触即発の空気が流れる。間に立つ私は傍観することしかできない。
「○○、その人誰?」
「彼氏」
「あ、え?ちが」
私が口を開くより先に樹が答えた。
北斗へ見せつけるように手を絡める。
「帰ろ」
されるがまま腕を引かれて早足で歩き出した。