アマガイに来て6日目。
窓の隙間から入る暖かい日差しと美味しそうなご飯の香りでいつもの様に目を覚ます。
体を起こしグーッと背筋を伸ばし、ふと目の前を見ると まだ夢の中にいるソメイだけがいた。
今日はソメイがご飯担当のはず。そして、いつもならまだ寝ているはずのシダレとヤエの姿が見当たらない。
もしかしたら2人はもうご飯のテーブルに居るのかもしれない。そう思いソメイを起こさないようにそっとご飯の匂いのする、いつものテーブルへと向かった。
少しづつ料理をしている音が大きく聞こえ始め、私の食欲を掻き立てる中
いつものテーブルと料理中のヤエの姿が目に入った。
「おはよう」
ヤエに声をかけるとあちらも私に気がついた様で
「サクラ!おはようっ!」
と元気に返した。そう言えばシダレはここに居ないな…と思いヤエに聞いてみる。
「ねぇ、ヤエ?シダレって……」
「あ、サクラ!あそこのお皿取ってくれる?」
「え?うん」
テーブルに置いてあった白の綺麗なお皿を取り、ヤエに渡しながらもう一度聞いてみる
「シダレって……」
「ありがとうっ!あ、もう1つだけ…いい?」
また、話しを逸らされてしまう。そう思った私はヤエにこう言った。
「いいけど…その前に質問!それに答えてくれなかったらやってあげないっ!」
するとヤエは一瞬困った様な顔をしたがそれを私に悟られない様にする為か、いつも通りを装ってこう答えた。
「いいよ。どうしたの?」
「シダレは?何処に行ったの?」
私のその質問にヤエは口角は上がっているのに何処か寂しそうな顔をして私に言った。
「さぁ?僕はよく知らないな。」
そんな曖昧な解答に思わず
「そっか…」
と分かりやすくテンションが下がってしまった。ヤエはそんな私を申し訳なさそうに見つめていた。
「あ……もう1つ…私何やるんだっけ?」
と自分なりにいつも通りやろうとしてみるけれど、ヤエの表情は曇る一方。
少しだけ2人の間に沈黙が流れた。
ふと気を取り直したヤエが
「あぁ…えっと…ソメイを起こして来て欲しいんだよねっ。もうご飯できるから…」
と言いこの場の苦しい雰囲気に飲み込まれないようにいつも通りに戻れるように
「うん…わかった」
とこの場を後にソメイを起こしに行った。
私達の会話を知らないソメイが起きてからやっといつも通りの平和な雰囲気になった。
その事にほっとして美味しい和食を食べながら呑気に
「(ご飯食べ終わったら何しようかな)」
と考える。ふと、私の前に座っているソメイが何かを思い出した様に口を開いた
「あ、そう言えば今日はヤエと一緒に遊んでね」
「自分は見回りの担当だから…」
と白米をほっぺパンパンに詰めて美味しそうにはにかみ言う。
ヤエも美味しそうに白米を食べながらコクリと頷く。
そんな状況に
「(あぁ…もうシダレは居ないんだ)」
と心のどこかで察して私もコクリと頷いた。
食事後、ヤエがお皿を洗ってソメイは何処かへと見回りに行ってしまったので1人ぽつんと待って居ると後ろから
「おまたせっ!」
と声がかかった。振り向くとお皿を洗い終わったヤエが立っていて
「じゃあ!行こっか!」
とシダレ同様、桜のブランコの場所へと向かう事になった。
川を渡り、花畑を超え、坂を登っている最中ヤエに不思議な話しをされた。
「ねぇ、サクラ?」
「なぁに?」
「サクラってさお花に詳しいっ?」
「え…全然詳しくないよ。急にどうしたの?」
「ソメイにさ贈り物欲しいって言われたんでしょ?」
「うん」
「そしたら僕と見たお花畑に咲いてたお花とかはやめてねっ?」
「…うん?」
それだけで話は終ってしまった。私の頭に、はてなが沢山浮かぶ中、少し遠くに桜のピンク色が見えてきた
「あ!見えた!」
と少しはしゃぎながら指を指すとヤエも少しだけテンションが上がった様に
「ほんとだっ!じゃあどっちが先に着くか勝負ね!」
「よ〜い、どんっ!」
と言い、突然かけっこが始まった。
「待ってよ〜!」
と慌てて私も追いかけるとあっと言う間にヤエを抜かした。
するとヤエはびっくりした様に
「サクラ早い〜!負けないからもんねっ!」
と少しだけスピードをあげた。
思いのほかいい勝負をして
最初に桜のブランコへと到着したのは私だった。
そして数秒後に遅れてヤエが到着した。
「負けた〜っ!」
と悔しそうにヤエが言って私は自慢気に
「勝った〜!」
と右手を上にあげた。
「なんでそんな早いのっ!」とほっぺを膨らましているヤエを横目にまじかに見える空を見ると、昨日シダレと来た時より遅かったのか綺麗なオレンジ色に少し遠くに青色がうっすらと見えた。
するとヤエが隣から
「サクラって空好きだよね〜」
と言った。私は空から目を離さずただコクリと頷く。
少しだけ2人で空を見つめていた。
「ねぇサクラ」
「どうしたの?」
突然名前を呼ばれてヤエへと目線を移すと
ヤエと目が合い、ヤエが少しだけ微笑んでこう言った。
「もし、ここから僕達が居なくなっちゃったりしたら。」
「シダレみたいに。」
「まぁ、もしだけど…居なくなっちゃったら川を見て、上流に向かって走って。 」
「それで会おう。」
そんなシダレと同じ様な事を言っていて、
私も「ヤダ」と言いたくなったのに何故かいえなかった。いっちゃダメな気がした。
ヤエに帰ろうと言われてシダレの居ない夕食を取ったあと、ヤエは私に
「またねっ!」
そう、いつも通りに笑いかけた。
私の中では何かまたかけてしまうような気がした。
コメント
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どこ!?どこへ行ってしまったの!?
うわぁぁ…わぁぁ…わぁ… 全然わからん…どうして居なくなるんだ…