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第6話「はじめての依頼と、“共鳴”する力」
冒険者ギルドに登録してから、二日後――
アレスとリアは、初めての依頼を受けることになった。
「依頼内容は、王都近郊の森に現れた魔獣“フォレストウルフ”の討伐。
討伐数は1体、報酬は銀貨3枚。危険度は低めのFランクね」
受付嬢の説明に、アレスは頷く。
「了解です。行こう、リア」
「う、うん……!」
リアは緊張した面持ちでうなずいた。
だがその横顔は、以前より少しだけ凛としていた。
◆ ◆ ◆
森は、王都から徒歩で1時間ほどの距離にある。
木々が生い茂り、日差しを遮る中、アレスたちは奥へと進んでいた。
「……あの、アレス」
歩きながら、リアがぽつりと口を開く。
「わたし、本当に役に立てるのかな……?」
「そりゃもちろん」
即答するアレスに、リアは驚いた顔をした。
「リアは“共鳴”できる。俺のスキルと、たぶん何かが繋がってる。
あのとき、奴隷商のとこで見せたあの力……あれは俺だけじゃなかった」
「……うん。でも、あれは……アレスのそばにいたから、できた気がする」
「それで十分だよ。俺はひとりじゃ何もわからないから。リアがいれば、戦える」
リアは小さく微笑んだ。
――そのとき、茂みの奥から、唸り声が聞こえた。
「来たな。フォレストウルフ……!」
獣のような影が跳ねる。鋭い牙と爪を持ち、草の中を素早く駆ける魔獣。
普通の新人なら、一撃でやられてもおかしくない相手だ。
だが、アレスは動じなかった。
「リア、隣にいてくれ。共鳴する」
リアがそっとアレスの背中に手を添えた瞬間――
スキル《最強》が発動。
さらに、リアのスキル《共鳴》がそれに反応し、未知の力が空間に溢れ出す。
「共鳴:最強適応」発動。
アレスの身体に、まばゆいオーラが走る。
たった1の筋力が、フォレストウルフの皮膚すら容易く切り裂ける力へと変換されていく。
「いける……ッ!」
アレスが飛び込むと同時に、フォレストウルフが襲いかかってくる。
その刹那――
ズバッ!
乾いた音とともに、フォレストウルフの体が宙を舞った。
アレスの剣が、的確に急所を貫いたのだ。
――一撃。
スキル〈最強〉と〈共鳴〉が合わさったその瞬間、
アレスは“ただの勇者”から“絶対勝利の存在”へと進化したのだった。
◆ ◆ ◆
「お、お疲れ様です……! ふたりとも無事で……!」
ギルドに戻ると、受付嬢が慌てて声をかけてくる。
アレスは討伐証拠として、フォレストウルフの牙を差し出した。
「これで、銀貨3枚……だね」
「は、はい。お見事です。初依頼でこの結果なんて……」
リアはそっとアレスを見上げた。
「ありがとう……アレス。わたし、生まれて初めて……自分が何かできたって思えた」
「こっちこそ。リアがいなかったら、“最強”なんて、発動できなかったと思う」
その手と手が、自然と重なる。
それは――この世界で最も不安定で、最も強固な“絆”の始まりだった。
◆ ◆ ◆
その夜。
ギルドの片隅で、ローブ姿の少女がアレスたちをじっと見つめていた。
「最強と、共鳴……なるほど。あれが“神託候補”ってわけね」
その目には興味と、そしてほんのわずかな焦りが宿っていた。
彼女の名はまだ明かされない。
だが――物語は、静かに動き出している。