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──────Iれいまり視点──────
醜い争いである。そりゃそうだ、と自身の感想を一蹴する。
争っている場所は現実ではない、という私の予想は当たっていたらしく、体内にある魔力を変換して作られている魔法を扱うことはできず、拳などの殴る行為もあまりダメージが通らない。と、いうより痛みという概念がなく、殴ったとしても傷もできないし、痛みもなかった。物理的な戦い、というよりもどちらがより多くこの無意味な空間を耐え続けるか、それが勝敗を決めていた。
痛みがないというのにお互いに殴り合いを続けるのは、ケジメであり、覚悟であり、負けず嫌いという性格の現れだった。
それはお互い様、というように相手側も引く気はなく、殴られてもすぐに蹴りを返してくる。蹴られたというのに衝撃もなく、怯むこともなく殴り返しておく。醜すぎる、なんて今の状況を観客のように揶揄しつつも、引く気はなかった。何せ、体力も無限なのだ。想像上の争いに終幕なんてものはない。
そう思っているからこそ、油断していたのだ。
───体感で十数時間経ったくらいだった。急に私の体がよろけ始め、その隙をつかれて思いっきり顔面パンチをくらい、後方へ吹っ飛んだ。
「───は?」
本当に、心からは?と思った。先程までの常識が急に無くなってしまう。安心して寄りかかっていたものが急に外され、その勢いで転落してしまったかのような錯覚。なんで、もしかして違うルールが脳内にあるのか?何があってこんな。さっきまでよろける、なんて明らかな体の異常はなかったし、後方へ吹っ飛ぶ、なんていう衝撃なんてなかった。
私が混乱に陥っている間に相手は待ってくれている、なんていうご都合主義が起きることなんて無く。そのまま馬乗りされて、顔面を殴られ続ける。創造神が「面いいなー」と言っていた顔が笑いながら私を殴り続けた。こんな能天気な顔をしながら何をしやがる、という反論をしようにも、殴られ続けて頬は腫れていき、喋りにくくなる。喋る暇があったら息を吸い、脳内にあるはずがない酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。
そして、殴られる度に頬に痛みがはしり、骨が砕ける音が何回も響く。さっきまでと何もかもが違う。足をジタバタさせて抵抗を試みるが、相手に生えた翼で抑えられ、意味を失くす。
「あはは!!!なんで痛みがあるのか不思議って顔してるね〜!!教えて欲しい???教えて欲しい!?!?」
まるで新しいことを知ったばかりな無邪気な子供のようなことを言いながら私の頬から流れでた血に濡れた手で殴り続け、甲高い声で狂ったように笑い続ける。化け物が。そう吐き出したいのに、その前に殴られて言葉は空に消えた。
「それはねぇ!今、体の主導権がそっちにあるから、長時間こんな高精度の立体空間を想像し続けたら脳が疲れちゃうんだよ!現実世界でご飯も食べてないから、体はフラフラだしね!!それに、脳が段々錯覚してきてるんだよ!こっちの世界が現実かもって!だから、椎名ちゃんが感じてるのはいわゆる幻肢痛ってやつ!」
教えて、なんて一言も言ってないのに、ペラペラと話してくれるそいつに、なんともお人好しだな、なんて皮肉を言いたいが、それは不可能だった。
また、殴られ始める。話すために緩めていた手は力強くなり、殴り、殴り、殴り───。
これ、もしかして私が降参しない限り終わらないのでは?そう思うほど果てしなく続く。なるほど、レイマリの方はまだ体の主導権を握ってないから、体の痛みも、疲れも、衝撃も何もないのだろう。抵抗は無意味だと強く痛感させられる。
体の主導権を渡したら?───それはつまり敗北であり、そして私がこの世界からの脱落を意味していた。───それだけは許せない。こいつは、ゼンを見殺しにしたも同然なのに、その罪を償わずのうのうと生きているのを私が許せる訳がなかった。死ね。死ね。ガキみたいなことを思ってしまうけれど、そう思わずにはいられない。何か、なにか打開策は無いのか───。
そう、脳内の思考で繰り広げられる一方的な争いの中、無い脳を働かせる。
───そして、思い出す。取っておきの切り札の存在を。
勝てる。いや、勝つしかない。けど、そしたら約束したと言われるあの天使を殺す手段はどうなってしまうのか。───いや、そんなことはどうだっていい。今、生きなければならない。それに、この殺し方が最も美しいし、そして1番復讐のしがいがある。
罪を償わせるのだ。
だから、私はこの力を使う。
この【世界】において誰も逆らうこともできず、紛うことなきチートの力である。
そう、これは強制的な物語の書き換え。元々書かれていた内容を取り消し、私が新たに書き換えてしまう。
と、言っても。それなりに条件も制限もあるわけで。条件は───親しい友が死んだ時に使える。今回で言うゼンである。そう、こいつがゼンを殺さないように立ち回っていれば私は間違いなくこの戦いに負けていた。こいつの敗因の一つである。
制限は1人にまでしか使えず、その対象を殺すことができ、またその過程を私が選ぶことができる、というもの。そして、発動中は物語の中の干渉、影響を受けずに発動できてしまう。
こいつには最悪の死をプレゼントしてやろう。私はそう思い考え始める。
───その方法ではなく、今、いかに自分が醜いか、という内容を。物語の外の力を使う、なんて卑怯極まりなく、そして相手からしたら理不尽の極みである。こんな力を、使ってしまってもいいのか。たしかに、目の前の相手はゼンを見殺しにしやがった大罪人だ。けど、けどだ。それだけで、こんな理不尽に命を取られる理由にはなるのか?元はといえば、私がレイマリを殺して、成り代わったから起きた事件だ。元の物語では明るくて、こんな笑い方をする子じゃなかった。───私のせいで、この子の人格を傷つけてしまったのでは?
そう考えると、自己否定が頭から離れない。こんなことをしていい権限なんて私には無いくせに。圧倒的上位存在から貰った力をなりふり構わず振るっても良いものか。許されるのか。
───いや、心を悪魔にしろ、椎名。わがままになって、自分以外はゴミクズのような思え。無価値なものを片付けて誰が文句を言うんだ。それに、ゼンは悪魔側の味方なんだ。それを意図的に殺したあいつは許されるべき存在ではなく、裁かれるべきなのだ。
裁くために必要なのは、時には言葉だが、簡単なのは暴力だ。苦しめて、罪を償わせろ。やれ、やるんだ。やらなきゃ、ゼンの顔を見ることができない。これが発動できた、ということはゼンが死んだんだぞ。恨みを晴らせよ!!
「───ッ死ね!!!苦しんで!!死ねぇぇえ!!!」
心からの絶叫。それとともに最悪のシナリオをレイマリに押し付けて。
そして、物語は動き始める。
瞬時にレイマリの姿は消えて、私は現実世界で目を覚ますことになった。
あれは罰だったのだ。
レイマリはきっと今頃神によって拷問されていることだろう。私は『レイマリが神界に飛んで、神によって殺される』と書き換えた。脳内で戦ってる時に溢れてきた”あれ”通りだとすれば、レイマリは神を無理やり引きずり下ろして攻撃していたのだろう。神は下界に下ろされると、何もすることができなくなる。まあ、下界に干渉しないようにするためのルールだが。それを利用した椎名によって神は散々自分の意思じゃない力で下界で暴れ散らかされた訳だ。さぞ恨みつらみが溜まっていることだろう。だから、神界なら力を無制限に使える神々の土俵にレイマリをワープさせたわけだ。今頃───。
これ以上はやめておく。それに、今回私の冷酷さについてしれた。───大切な悪魔を殺されただけで、あそこまで悲惨なことができるものなのだろうか。しかも、私もまた、同じく天使を殺しまくった犯罪者だ。そんな奴が、レイマリの人生を奪った私が、そんなことをしてもいい権利はあったのか。そんなことを考えながら、起き上がろうとする。が、それは出来なかった。
───お腹がすいた。水も欲しい。え、普通に死にそう。
後で知ったが、私はどうやら5日ほど寝込んでいたらしい。
しかも、神器を持った天使を始末できた、という朗報も知った。
…何があったのかを聞こうとしたが、その前におかゆと水をいただくことにした。
ここで切ります!サラリと死ぬ天使!!そして本編にも出た【神の権限】を初めて使用したシーンにもなりますね。一応伏線として、この話が始まる前にその話を書いたのですが…だいぶ昔なので覚えてますかね?
ちなみに神器もちの天使の死に方は1話か2話程度でまとめて書く予定です。そして、Iルートもそろそろ終わり!そしたらあとはSルートをサクッと1話程度にまとめてレイマリ編は畳もうと思ってます。何回もこの話をしてる気が…まあまあ!高校生になる前にいろいろやっちゃいましょ!
それでは!おつはる!