「ねえ、恋ってなんだと思う?」
周りに空いてる椅子は何個かあるし、僕が座っているソファーもあと3、4人は座れそうなスペースが空いているのに、元貴はわざわざ僕の膝に座り、そう問いかけてきた。
「え〜なんだろ…ドキドキする気持ちとか?」
元貴が膝に乗ってくる事なんて日常茶飯事なので、今更動揺したりはしないけど、質問の方は少し僕の事を動揺させる。
「普通すぎ。あとは?」
「ひどい!えぇ〜あとは…いつもその人の事を考えちゃうとか?」
「ふーん。次!」
「え、次?んん〜…その人と居ると楽しい気持ちになるとか?」
「そんなの、友達と居ても思うじゃん。却下!次。」
「確かに…ってか、なにこれ?!」
もしかして、これは元貴が納得するまで続く感じ?
恋が何かなんて僕だってよく分からないのに。
困った顔をしながら元貴を見るけど、元貴は納得する答えが出るまで僕の膝から退く気はないらしく、次の答えを要求してくる。
きっと、元貴は分かってるんだ。
今までの答えは、僕の本当じゃないって事を。
「…恋は…ドキドキして素敵なものだけど、そんなのほんの一瞬だけで、本当は辛くて、切なくて、泣きたくなっちゃって…やめたくなっちゃうけど、それでも離れる事が出来ないもの…かな。…て、ごめん、よく分かんないよね。」
僕は観念したように、ふうっと息を吐くと、僕が想ってる恋と言うものを元貴に話した。
元貴はさっきとは違い、真剣に僕の言葉に耳を傾け、余りまとまらない僕の本当の恋を最後まで黙って聞いてくれた。
「分かるよ。そっか、…涼ちゃんは辛い恋をしてるんだね。」
「そう、だね。」
「ふーん、やっぱり好きな人居るんだ。」
「あ、いや!違くて…!」
「ははっ、もう無理だって。涼ちゃん、そうだねって言っちゃったもん。だって、恋をするには相手が必要だからね!」
あまりに本当の事を話したせいで、うっかり言わなくてもいい“本当”まで話してしまった僕は、慌てて訂正するけど、そんなのもう後の祭り。
元貴はいたずらっ子のように笑うと、ヒョイッと僕の膝から降りた。
「涼ちゃんの恋、……いに伝わればいいね。」
「え?」
「ううん!なんでもない。…あ、はーい!今、行くー!」
スタッフさんに呼ばれて、僕から離れていく元貴。
最後、なんて言ったんだろ?声が小さくてちゃんと聞こえなかった。
それにしても、恋をするには相手が必要…か。
確かにそうだよね。
恋は1人じゃ出来ないもん。
…まあ、その相手は君なんだけど。
-fin-
コメント
4件
うあー!すれ違いぃぃぃ🥺
初コメ失礼します! 大森さんが最後に言ったの「わかいに伝わればいいね」ってことですか!? すれ違い泣きます😭😭毎回最高です!