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#連載小説
観察者
310
椿
27
## 第三章 聞こえた声
「……たすけて……」
暗闇の奥から聞こえた声。
湊は息を止めた。
「この声……」
間違えるはずがない。
昔から知っている声だった。
「どうして……ここに?」
湊は一歩、暗闇へ進んだ。
すると、
「待って!」
後ろにいた男が叫んだ。
「何かおかしい!」
湊が振り返る。
「どういうこと?」
男は首を振った。
「さっきの試験でも、声を使って人を誘い出してたんだ」
「……!」
湊は足を止めた。
確かにそうかもしれない。
でも――
もう一度、声が聞こえた。
「……湊……」
名前を呼ばれた。
「……!」
湊は顔を上げる。
「今、俺の名前を……」
誰にも名前を教えていない。
なのに、暗闇の奥から確かに呼ばれた。
「助けに行く」
湊は走り出した。
「おい!」
後ろから声がしたが、止まらなかった。
廊下の先に、小さな部屋があった。
扉は少しだけ開いている。
湊がそっと扉を押す。
ギィィ……。
中には――
誰もいなかった。
「……え?」
机が一つ。
古いイスが一つ。
そして、壁に写真が一枚貼られていた。
湊は写真を手に取った。
そこには、今ここにいるはずのない人たちが写っている。
そして写真の中央には――
自分がいた。
「……なんで?」
写真の下には、文字が書かれていた。
**『被験者000 観察開始』**
湊の手が震えた。
「被験者……?」
そのとき。
――パチン。
部屋の電気が消えた。
「!」
真っ暗になる。
そして、スピーカーからあの声が響いた。
『正解です♪』
湊は振り返った。
『あなたは、最初からこの試験の特別参加者なんですよ♪』
「どういう意味だ!」
『それは――』
声が楽しそうに笑う。
『最後まで生き残れば分かります♪』
突然、部屋の奥の壁が開いた。
その向こうに、長い廊下が現れる。
そして廊下の先に――
大きな赤い扉があった。
扉には、
**『最終試験』**
と書かれている。
湊は拳を握った。
「……行くしかない」
その瞬間。
後ろから、
ドン!
大きな音がした。
湊が振り返る。
さっきまでいた部屋の入口に――
黒い影が立っていた。
長い腕。
真っ暗な顔。
そして、赤く光る二つの目。
影が一歩近づく。
湊は後ずさる。
「来るな……!」
影がさらに近づく。
そのとき――
「湊!」
遠くから声が響いた。
湊は振り返る。
赤い扉の向こうから、一人の大きな男が走ってくる。
黒い髪。
鋭い目。
そして、普通の人間とは思えないほど大きな体。
男は湊の前に立つと、影をにらみつけた。
「……俺の家族に手を出すな」
湊は目を見開いた。
「……誰?」
男は湊を見る。
そして静かに言った。
「朧だ」
その瞬間――
影が大きな声を上げた。
そして、二人に向かって走り出した。
朧は一歩前へ出る。
「湊。下がってろ」
「でも……!」
「大丈夫だ」
朧は拳を握った。
「ここからは、俺が守る」
赤い扉の向こうで――
新しい戦いが始まった。
コメント
1件
第3話、すごくどきどきしたよ……! 湊くんを呼ぶ声がまさか被験者000の試験の一部だったなんて、写真に自分が写ってるラストも背筋が冷えた。そこへ現れた朧さんの「俺の家族に手を出すな」がめっちゃ熱いし、守られる立場になった湊くんとの対比が好き。これからどうなるのか気になるー! 更新楽しみにしてるね🤍