名探偵の真意
今まで中森警部に疑われたことはあったが、警察全体で快斗が疑われたことは一度もなかった。
どこから情報が漏れてしまったのか、怪盗キッドをやっていけると過信していた自分は結局だめだったのかと心で責めながら、あくまでもポーカーフェイスを貫き通す。
「…なんでオレに怪盗キッドっつー疑惑がかかってんだよ」
「俺が匿名で警察にリークしたってだけ。オメーと協力体制を築くためにな」
「ハッ!それでオレがオメーと組むとでも!?」
やや投げやりな口調で言うと、新一から予想外な提案が返ってくる。
「俺が怪盗キッドをやってやるよ。俺が黒羽快斗に変装するよりバレにくいと思うぜ?」
脳の処理に時間がかかりフリーズしてしまった快斗は、ハッとして慌てて言葉を返す。
「オ、オメーが?キッドやる意味って何だよ?」
「俺とオメーの共犯関係。どうだ?おもしれーだろ?」
「おもしろくねーよ!」
大体怪盗と探偵が協力ってあり得ねーだろ!と思わずツッコミを入れると、面白くないといった顔をした新一が返事をする。
「とりあえず衣装を貸せ。 いつまでもオメーに出し抜かれたままではいられねーんだよ」
正義感で探偵をやってるわけじゃねえし、つまんねえからそんなことはしねえけどなと返すと、身震いをした快斗は必死に言葉を紡ぐ。
「わ、わーったよ!衣装な!ついてこい!」
(オメーがそこまで怪盗キッドと協力したい理由は知らねえが、信じるぜ、名探偵…)
余裕そうな声色や見た目の裏に隠した新一の焦りや不安を感じ取った快斗は、折れた振りをし、衣装を渡すべく新一を部屋へと連れて行った。
(流石にいきなりは強引すぎたか。こんなつもりはなかったんだがつい焦りが…ごめんな黒羽…)
新一が江古田高校へと転校する1ヶ月ほど前、
新一の父である工藤優作は、久しぶりに日本の工藤家へと帰ってきていた。
「新一、久しぶりだな」
「と、父さん…!?帰ってくるなら言ってくれたら良かったのに」
「忘れ物を取りに来ただけだけなんだ」
ドアを開けた先が予想外の人物であったことに驚きながらも、先程まで寝ていた新一は再び眠気に襲われる。
「起こして悪かったね。ソファで仮眠を取っていなさい」
「ありがとう、父さん」
そうして二人は家へ入った後新一はソファに寝転ぶと、急激な睡魔に襲われ眠りについた。
「その声は…久しぶりだ。怪盗1412号…いや、黒羽盗一。」
続く
(これから更新頻度落ちていきます😢)