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守らせてMy Precious.

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守らせてMy Precious.

2 - 掬われる指、触れ合う鼻先

♥

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2025年08月27日

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記憶を手繰って物思いに耽っていると、ぎゅっと俺を抱き締めている照に意識を呼び戻される。



「ねぇ、一緒に住むの、やだ?」

子供みたいな声で、強請るような言い方をする照にきゅんとする。


大方、今日の昼間、めめがうちの阿部ちゃんと一緒に住むようになってからの話を聞いて、四六時中一緒にいられることに、なにかしらの魅力を感じたのだろうと思う。



俺たちは同棲こそしてはいないが、 毎日照の家で一緒に過ごしている。

触られることに怖さを感じてしまう俺のトラウマを克服しようと、パーティーの日に付き合うようになってから、照は毎日俺に「泊まっていって」と言うようになった。


照の腕の長さの分だけの距離を隔てて指先から始まったこの関係は、ゆっくりと濃い時間を掛けながら、今もずっと育ち続けている。


今日はなんだか、過去のことをよく思い出すなぁと、今、目の前にいる照を置き去りにしていることに申し訳なさを感じつつも、俺はまた記憶の旅に出た。
























「ふっか、腕伸ばして」

「こう?」

「そう。触るよ?」

「うん……っひ……!」

「大丈夫、大丈夫だよ。指先にだけ集中して」



付き合った日の翌晩のことは、今でもよく覚えている。

初めて入った照の部屋で、ソファーに座るよう促されるまま大人しく座ると、照は俺から少し離れたところの床に腰を下ろした。

俺が腕を伸ばすと、照はゆっくりとした動作で俺の指を下から右手で掬い上げた。

触れられることに身構えてはいたものの、思わず小さな声が出てしまって申し訳なくなった。



照に言われた通りに、自分の意識を触れ合っている指先だけに集中させると、なんとも言えない感覚になった。照の指は暖かくて、俺を落ち着かせるように親指の腹でトントンと優しく指を叩く。そうかと思うと、今度はその腹にまったりとしたペースで撫でられる。


「ぅ、ふ……っんん…っ…」

「平気?怖くない?」

「ぅん…っ、へぃ…き……」

「ちゃんと息して。止めないで」

「っふ、はぁ…っ、、ッん…っひゅ…ッ」

「こら、ゆっくり吸わないと辛いよ?」



強張った俺の体はなかなか言うことを聞いてくれなくて、緊張から勝手に呼吸を止めてしまったくせに、体内に十分な酸素が足りないと気付くと、大急ぎで新しい空気を取り込もうとする。



息の仕方を思い出させるように、いつの間にか俺の手の甲に乗せられていた照の左手が、一定のテンポで触れては離れてを繰り返す。その拍子に合わせるように、息を吸い込んで、また吐き出す。

反復するうちにだんだんと落ち着いていく。

照の手が心地いいと体が覚え始めていく。



同時に得体の知れない感覚が襲う。

触れられた場所がやけに熱い。


不安になって照に視線を送ると、なんとも切なそうに目を細めている照と目が合った。

熱っぽいのに悲しげで、苦しそうなのに幸せそうで、照はそんな目をしていた。


「愛おしい」


そう言われているみたいだった。




照のその目に、俺の胸はぎゅっと締め付けられて、ドクドクって主張する心臓がうるさくて、苦しくなる。

くらっと頭が沸騰して、全身がぴりっと痺れる。

でも、決して不快じゃない。


いつの間にか、普通に照と触れ合えていることに気付いて嬉しくなる。



「照」

「ん?なに?」

「平気になってきた。怖くない」

「ほんと?よかった、なら、もう少しだけ進もうか」

「へ?」

「ちゃんと息し続けててね」

「う、うん?……っ!」


俺の手を取っていた照の右手が、するっと俺の指と絡まる。

照は立ち上がってから、俺の隣に座る。俺たちの手は繋がれたままで、お互いが肘を曲げた分だけ、体がぐっと近付く。

距離が詰まったことに体が縮んで、また息を呑む。

呼吸しなければ、と思った瞬間には、照の左手が俺の繋いでいない方の腕を取って柔く撫でた。


「ッぁ!?ちょ、、ひかる…っ」

「これは?大丈夫?」

「平気なんだけど…それ、、なんか……っ」







おかしい。

やっぱりおかしい。


これ、怖いだけじゃない。

この感覚は、なに……………?



バクバクと鳴り続ける心臓が喉元まで迫り上がってきて、口から出そうになる。

つぅっと照の指が俺の腕に沿って上下する。骨張った関節が二の腕の近くまで上がってくると、ざわっと背骨が疼いて、たまらず変な声が出た。



「ひかる…ッ、、それ、だめ…っ」

「やっぱ怖い?」

「そうじゃなくて……ぁ、っなんか、、変になりそ…ッぅぁッ!?!?」

「……もしかして、感じてる?」

「…………はっ?」






…あ、そういうこと?!


久しく人と触れ合ってなくて、そういう感覚を忘れていた。

じっくりと自分の体の状態を感じ取ってみる。

照の言う通り、確かに俺の息子周辺はじんわりと熱を持ち始めていた。


誰とも触れ合うことができなくなってしまっても、所詮は人間。毎日生きていれば、生理現象で自然と欲は溜まるものだ。

これまでは一人でどうにかできていたし、何も問題はなかった。しかし、今日は照がいる。このまま触れ合っていて、もし万が一、照が俺の状態に気付いて、今日の段階でそこまで進むようなことになったらと思うと、さすがの照でも、それはまだ怖すぎた。

俺の息子がこれ以上の主張をする前に手を打たねばと、俺は照にやんわり伝えた。



「照、今日はここまでがいい…」

「うん、分かった」

「ありがと、ごめんな」

「謝んないで。時間かけて治していこう?でも…」

「ん?」

「感じやすいふっか、可愛かったよ」

「んな…ッ!?!」



照は、いたづらっ子みたいに大きな笑みを浮かべながら、「抱き潰せる日が来るの、楽しみに待ってるね」となかなかに恐ろしいことを言った。俺の息子の状態は恐らくバレていたのだと思う。

それに、二の腕を軽くなぞられたくらいでこの調子なら、めでたく照と最後まで行った暁には、確実に俺の意識は無事ではないことも直感した。

それはそれで別の意味で不安になったが、いつか、そこまで行けるようになりたいとも思う。


だいぶ最低なことを言っているはずなのに、相手が照だからなのか、不思議と嫌な気はしなかった。






それからも照は、嫌な顔ひとつせずに、毎日俺のリハビリをしてくれた。

腕、肩、首に指で触れる。

足首からふくらはぎ、膝、太ももまで、たくさんの日にちと時間を使って、少しずつ触れてくれた。


俺の接触恐怖症は、触られることに敏感に反応してしまうというものであるが、俺はとんでもないことに気が付いた。

今までは触れられることを察知して、未然にそれを避けていたから気にも留めていなかったのだ。

接触という行為そのものに対して、極度に神経質になっていたところに、照という存在が現れて、この恐怖症の副作用がひょこっと顔を出した。




たぶん。いや、 絶対。

俺、感じやすい体になってる………っ!!…と。




照はこのリハビリ期間中、全くその気が無かったのだろう。

つんと軽く指先でつつくだけ、さらっと優しく手の平で撫でるだけ、ふわっと柔らかく両手で包み込むだけ。

側から見れば淡白な触れ合いに見えただろうが、俺の体はいちいち敏感に反応して、俺の口からは小さな声が漏れ続けた。



そんな生活はその後も続いていって、その日のトラウマを克服しようの会では、照が俺の内腿を撫でていた。

この頃には、膝を曲げた俺の足の間に、照が入って来ても大丈夫だと感じるくらいには、距離の近さについての恐怖心はほとんど無くなっていた。



「…ッ、ひかる…っ」

「どうした?」

「それ…っぁぅ、、だめ…ぇ、っく…ぁ」

「これ怖い?気持ち悪い?」



いくら俺のためとは言え、逐一「大丈夫?」とか「怖くない?」とか「これは?」とか聞かれると、流石に恥ずかしくて、居た堪れなくなってくる。

それに対して、照を不安にさせないようにって「大丈夫」とか「怖いんじゃなくて気持ちいいの」と答えるのが、もう、ある種の羞恥プレイのようにも思えた。

もし、その狙いがあるんだとしたら、照はとんでもない変態ではないか?と思うが、照にそんな感じは全くしなかったので、俺は余計に困った。



照は真剣に俺の恐怖症を治そうとしてくれているというのに、一方、俺はそのリハビリで感じまくっているのだから。

申し訳なさと、羞恥心と、気持ち良さで涙が滲む。

おまけに、今日の照の手は俺の息子から測って、先日の二の腕よりも遥かに近い内腿に置かれている。

脚の付け根の骨に照の手が触れるたびに、否が応でもビクッと体が跳ねてしまう。


スウェットの中で徐々に上を向き始めているこいつをどうにか宥めたくても、脚の間に照がいるので、どうすることもできない。


「怖くない…っ、怖くないから、そこやめて…ッひぅっ!」

「ねぇ、まだ大丈夫?」

「へっ?」

「まだいける?」

「ぁ、うん…大丈夫だけど…何するの…?」

「下脱がすね」

「ちょ!!?待て待て待て?!!?」



いきなり何を聞いて来るかと思えば、次の瞬間には俺のスウェットは照に下着ごと剥ぎ取られていた。

普段隠している部分まで肌を晒すことに、少し怖くなる。

閉じたくても照がいて脚を閉じられない。

これから何をされるのかと思うと、今度は快感じゃなくて底無しに溢れ出てくる恐怖と、ほんの少しの期待で体が震える。

不安が拭えないまま、俺は照を見上げて尋ねた。



「なにするの…?」

「苦しそうだったから出したほうがいいかなって」

「ぇ、、、ぃゃ…だ、大丈夫だよ…?」

「まだ早いか。ちょっと待ってて」


照は一度ソファーから降りて、どこかへ行った。

どうやら緩く主張を始めていた俺の息子に照は気付いていたようで、俺は照を待っている間、恥ずかしさから、膝を抱えてうずくまった。


照はすぐに戻って来て、その手にはネクタイが一本握られていた。



「見えなかったら怖くないかもだから、ちょっと我慢してて」

「ちょ、っ、、ぇ…これ、やだ…ひかる、どこ…?」


流れるように照に目を覆われると、真っ暗な視界に怯えの念が募る。

手探りで照を探すと、俺の手をぎゅっと照が握ってくれた。

突然触れた感触に、俺の体はまた跳ねた。

見えないというだけで、体がもっと敏感になってしまっている気がして、俺は心の中で「照…逆効果だよ…」とぼやいた。



照は俺と手を繋いだまま、気持ちよさと、これから始まることに勝手に期待して勃ち上がった俺のそれに突然触れて、上下に扱き始めた。

自分でするのとは全然違う刺激は強烈で、優しくて、触れられた瞬間に達してしまいそうだった。




「ッァあ“!?」

「平気?怖くない?」

「へぃ、きだって…ば…ぁぁ“ッ!!」

「うん、気持ちよさそう。よかった。」

「ひか、っ、も、だめ…でちゃぅ、、…っ」

「いいよ、出して」


久々に自分の体液が迫り上がってくるのを感じて、頭の中が真っ白になっていく。何も考えられないはずなのに、俺の思考の中には色々なことが一斉に浮かんで来る。




いつも俺ばっかり。

照は気持ちよくなってない。

俺、照に何もできてない。


こうやって性的に触れ合ったのはその日が初めてだった。

それですら、俺ばかりが気持ちよくて、照には何のメリットもない。

キスしたのだって、あの日、照の前でパニックを起こした時が最後だった。


照は、最終的なゴールを俺の顔と捉えているのだろう。

これまで照は、体の端から顔に向かっていくように触れて、段階を踏みながら俺との距離を縮めてくれていた。



だから、あの日以来、照とはキスしてない。



申し訳なかった。

照に何もできていないことが。

俺ばかりが愛されてて、守られてて、それに甘えてしまってるって分かっているのに、何も返せていないことが。

俺が照の立場だったらと想像するけれど、俺ならきっと、もどかしくて仕方がないと思うだろうな、と思う。

しかし、照はこれまで一度もそんな顔も態度も、俺に見せたことが無かった。


切なくて、苦しい。

何もできない自分が情けなくて、悔しくて、また泣きそうになる。




「ひかっ、ひかぁッ、手ぇはなして…っぁん“ぅ”ッ!」

「いきな?大丈夫だから」


暗い視界の中で、耳の中に優しい声色が溶けていく。

照の吐息と、こめかみに感じた唇の感触が追い打ちをかける。正面は外していたが、初めて顔に触れられたことに反応した俺の全身を、引き波に攫われたように心許ない切なさが襲う。

ビクビクと腰が大きく震えて、俺はそのまま照の手の中に欲を吐き出した。


前のめりに、力の抜け切った体をくたっと傾けると、俺の額は照の肩口に収まった。

見えない状態だと、触れるまで何が起きるかがわからないから、確かに恐怖は半減していたなと振り返って、そんなことを考える。

これは新しい発見だと思ったが、これだと照があまり感じられなくて、少し不安というか、少し寂しいという気もした。



「ひかぁ…これ取って…」

「ん、、はい」

「ありがと、ん…ふへ、、ひかるだ」

「ん?どした?」

「ひかるが見えなかったからさびしかったのー…」

「…っ」

「黙んないでよ、スベッたみたいで恥ずかしくなるじゃん」

「いつもスベッてるよ?」

「おぉい!…ねぇ、ひかる。 ごめんね。いつも」

「なにが?」

「俺ばっかりで。俺、照に何も返せてない。」

「そんなこと考えなくていい。俺がしたくてしてるの」





照は優しい。

俺にはもったい無いくらいに。

こいつに俺ができること、、きっとそう、なんだっていいんだ。


“俺がしたくてする”


それでいい。

何ができるのかな、なんて難しく考える必要なんてない。




照が俺にしてくれることの全てには、俺へのたくさんの「愛してる」が詰まってる。

反対に、俺も照にたくさんの「愛してる」を返していけたらいいんだと思えた。



俺がしたいこと、俺ができそうなこと。

まだ不安だし怖いけれど、照となら平気って、そんな変な自信が少しだけ顔を出す。

勇気を出してみたかった。

いつも俺に触れてくれる照に、今度は俺が触れたかった。




久方振りだった 相手がいる状態での慰めに少しだけ疲れた体を起こす。俺は肩に沈めていた頭を上げて、照の左頬に少しだけ震えている手を添えた。



きっと、あの日の俺は、初めてこの家で触れ合った日の照と、同じ目をしていたような気がする。

苦しいのに幸せで、軽い情事の余韻にやけに熱っぽく潤んでは、照を想うと切なくて。


「愛おしい」


そう伝わったらいいな、なんて願いながら。





「…っ、、ありがと…照、すき…」




照が目指していたであろうゴールを超えて触れ合った先、お互いの鼻が触れ合うほどに近付いた視界の中で、大きく開かれた照の目は、ゆらゆらと揺れていた。























To Be Continued………………………………





















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