「ったく、酷い目に遭った…」
まぁ、遅刻した結果担任はもちろん、生活指導の先生にも怒られてしまった…
「内申点に響かないといいんだが…」
俺は大学進学するつもりなので、学力はもちろん生活面でも気をつけなくてはならない。…光葉は進学か、就職か知らないが。まぁ、あいつならどうにか生きていけるだろ。
「ねぇねぇ聞いた?三組の渡辺さん、奇病になっちゃったんだって!」
「え、渡辺さんって、あの?」
「そう!ちょー優等生の渡辺さん!」
「なんの奇病になったの?」
「さぁ?そこまでは。でも、いま渡辺さん追われてるらしいよ〜政府の人にさ。」
「まじか、うちらも気をつけないとね。」
「それな〜あ、てか、今からどっか、遊びに行かね?」
「笑ちょっ笑同級生が危ない目に遭ってんのにいいの?笑」
「いやーしょーじき、うちあいつ嫌いだし。奇病になって『ざまぁ笑』って感じだし笑」
「うわーひどー笑」
キャハハハといいながら、通り過ぎていく女子生徒数名。…クズどもが。どうしてあういう奴らが奇病にならないのだろう。…本当に腹が立つ。そして、政府の人間もそうだ。何で病気になっただけで殺さなくちゃならない?人に害をなす病気ならまだしも、いや、それでも殺す必要はないだろう。暴走しないよう監視するとか、他にも色々方法があったはずだ。なのに、なんで…。
「…ねぇ、…ねぇ、…ねえってば!!」
「ん?」
「『ん?』じゃないわ!!なーにかわいいかわいい双子の妹無視してんだ!君の片割れの妹が呼んでるんだよ?返事くらいせんかい!」
「はいはい、すみませんでしたね」
「敬語がおかしくない?…ま、いっか。早くかえろーよ。今日、ママが光希の好きな鯖の味噌煮だって!」
「ほんとか?それは楽しみだな!」
「ほーんと光希って味覚がオジサンみたい…」
「なんだよ、悪いのかよ」
「べーつにぃ〜?」
この時俺は知らなかった。小さな運命の歯車が回り始めていることに。