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さかなな
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『お餅』🌹
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まるで夢でも見ているかのような、この状況。
小出さんと僕は今、ひとつの小さな空間――自室に二人きりである。僕はパジャマ姿のままベッドに腰掛け、小出さんは小さな丸テーブルの前にちょこんと座る。
小出さんが、見慣れた僕の部屋の風景と混ざり合う。夢にまで見たこのシチュエーション。まさか、それが今日叶ってしまうとは。
「園川くん。これ、ポカリだよ。あと、熱あったら冷たいもの食べたくなると思ってアイスも買ってきたの。良かったら食べてね」
小出さんは手に持っていたビニール袋の中から、スポーツドリンクのペットボトルとカップアイスを取り出して手渡してくれた。僕を想って買ってきてくれた、小出さんの優しい気持ちのこもったお見舞いの品。嬉しいったらありゃしない。
「小出さん、ありがとうね。今日は会えないと思ってたからすごく嬉しいよ。でも風邪うつしちゃうと申し訳ないな」
「ううん、大丈夫だよ。私めったに風邪引かないから。健康だけには自信あるの」
言って、小出さんはちょっと誇らしげに胸を張った。確かに小出さん、僕の知る限りでは学校を風邪で休んだりしたことがなかった。そう。意外にも小出さんは健康優良児なのである。
「園川くんにいくらメッセージしても既読にならないから、私すっっごく心配したんだよ! 授業中も全然集中できなかったし!」
頬っぺたをぷくりと膨らましながら、プンプンと僕に抗議する小出さん。心配してくれてたんだ。というか、メッセージ……?
「あ、本当だ。ごめんね。スマホの音を消したままだったから気付かなかったよ」
机の上に置きっぱなしだったスマホを見ると、ありゃビックリ。なんと、通知の数が三十六件! よほど心配してくれていたみたいで、アプリ『ネットライン』を開いたら、小出さんからのメッセージが雪崩のように一気に流れ込んできた。
【園川くん、体調どう?(´・ω・)】
【園川くん、寝てるのかな?(´・ω・)】
【園川くん……?】
【え、うそ、もしかして園川くん……
倒れちゃった……!? (´;Д;`)】
【すぐ行くよ! 待っててね、園川くん!
ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘】
「園川くん! ちゃんとスマホ見なさい!」
おお、小出さんがプンスカ怒っている。小出さんの怒ってる顔、初めてみたかも。でも僕、一応病人なんですけど。逐一スマホをチェックするのって中々に難しいと思うんですけど。
だけど、小出さんはすぐに笑顔に戻って『良かった』と呟いた。ああ、木漏れ日のように柔らかで、温かなこの笑顔。これが見たかったんだ。だから学校を休みたくなかったんだ。
よし。また明日学校でこの笑顔を見られるように、早く元気にな、は、は──
「ハァーーックション!!!」
「そ、園川くん、大丈夫!? 大変! 早く布団に戻って! 悪化しちゃうよ!」
「う、うん……ごめんね、じゃあ横にならせてもらうよ。小出さんが来てくれたのに、寝るのはなんかもったいないけどね」
「そんなことないよ、病人なんだから。ほら、ちゃんと肩までお布団掛けて。ゆっくり寝るの。はい、おやすみなさい」
ベッドに横になった僕に、小出さんは深く布団を掛けてくれた。なんか今日の小出さん、お母さんみたいだな。小出お母さん。
で、僕の妄想fがスタート。小出さんって、どんなお母さんになるんだろう。子供に優しいお母さんになりそうだけど、意外とスパルタ教育を施す鬼ママみたいになったりして。子供に対してエリート教育施したりするの。勉強しなさい! とか、小言が煩い鬼ママ。
……ないな。エリート教育施すとしても勉強じゃなくて、小説とか漫画とかを徹底的に叩き込んでオタクのエリートに育だてそう。そういう意味では教育熱心なお母さんであるな。うむ。
そして、夫はもちろん僕。なんてね。
でも、そんな未来を僕は望む。
──と。僕が素敵な未来予想図を描いていると。
「園川くん……じっとしてて」
「え、小出さん……ど、どうしたの……」
ベッドで横になる僕の顔をジーッと見つめながら、小出さんが顔を近付けてきた。
【続く】