テラーノベル
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眠い。
湯気に霞む浴室は、逃げ場のない熱がこもっている。
「……ぁ、ちゅうや、もう、おわり……?」
中也の膝の間に座らされた太宰は、背中を流される感触に身を委ねながら、心細げに声を上げた。幼児化した身体は薄っすらと骨が浮き出るほど細く、中也の大きな手のひらと対照的なほどに白い。
その白い肌の上には、本物(大人)の時よりはまだ薄いとはいえ、幾筋もの赤いリスカ跡が、痛々しく、けれどどこか装飾品のように刻まれている。
「まだだ。手前が自分じゃちゃんと洗えねぇからだろうが」
中也は低い声で言いながら、たっぷりと泡立てたタオルで太宰の細い脇腹をなぞる。 中也の指先が脇の近くに触れた瞬間、太宰の肩がびくりと跳ねた。
「ふふ……くすぐったい、よ。ちゅうや、そこ、だめぇ」
身をよじる太宰の笑い声は、ひらがな混じりの、甘えた響き。 記憶がある太宰は、自分がこうして「くすぐったがって身悶える子供」を演じれば、中也がどれほど独占欲を掻き立てられるかを知っている。もっと構ってほしい。もっと自分に触れて、この消えてしまいそうな身体を繋ぎ止めてほしい。
「……動くなって。ほら、じっとしてろ」
中也の手が、今度は太宰の手首をつかむ。 傷跡をなぞるように滑る中也の指先には、慈しみとは別の、冷徹なまでの支配欲が宿っていた。太宰はそれを「中也の優しさ」だと信じ込んで、熱っぽい溜息を漏らす。
「ちゅうやのおてて、おおきくて、ちょっと……いたいくらい、ぎゅってされるの、きらいじゃないよ」
無自覚な捕捉される側の素質が、幼い言葉となって零れる。 中也の瞳の奥で、ドロリとした何かが濁るのを、太宰は気づかない。
「……そうかよ。じゃあ、もっと『ぎゅっ』としてやるから、俺から離れるんじゃねぇぞ、太宰」
首筋に落とされた中也の視線は、もはやお世話をする大人のものではなかった。 けれど、太宰はただ、構ってもらえている幸福感の中で、白い肌をピンク色に染めて中也に身を預け続けた。
コメント
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んっへ好き((( 文章力もすごいし太宰さんが可愛すぎるよぉぉぉぉ!!!!