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そう思っての提案だったが、純一は俯いたまま
きゅっと自分の膝の上の布地を握りしめ、掠れた声で呟いた。
「……りひとさん…ぼくとデートするの、たのしい…?つまん、ない……?」
「えっと……どうして、急にそう思ったの?」
唐突な問いかけに、俺は少し驚いて聞き返す。
「……だって、ぼく、他のカップルさんみたいに、遠出したり長時間デートしたりできないから…」
「せっかくのお休みなのに、りひとさんを楽しませられてるのか、不安で……っ」
純一の瞳には、またしても自分を責めるような切ない色が浮かんでいた。
昨日会社で「普通」を求められ、傷ついた記憶が、また頭を擡げてしまったのだろう。
「…そんな風に思わせちゃったなら、ごめん。でも俺は、純一とデートするのすごく楽しいよ?」
「お外出ても、こんなに短い、たった2時間のデートしかできないのに…?」
縋るような目で、確かめるように俺を見つめてくる純一。
「……うん。時間の長さなんて関係ないよ。どんなに短くても、俺はこうして純一と手を繋いでデートできたこととか、お気に入りのカフェに一緒に行けたっていうこと自体が嬉しいんだよ」
「そ、そんなことが……?」
「そう。今日の服装だって、純一にすっごく似合ってて最高に可愛いし、ケーキを『おいしい』って幸せそうに食べてる純一の笑顔も見られた」
「俺にとっては、これ以上ないくらい楽しい2時間だったよ?」
「……本当…?りひとさん幸せ?」
「うん、十分すぎるほど幸せ。それにね、俺たち一緒に住んでるんだから。たとえ2時間のデートで帰ったとしても全然寂しくならないしさ」
純一の心の奥底にある不安を、温かい体温で溶かし尽くすように
俺は彼の柔らかな髪を優しく撫で
そのまま細い身体を腕の中に引き寄せて強く抱きしめた。
「…りひとさん…っ、ありがとう…すっごく嬉しい…」
「こちらこそ、デートしてくれてありがとう。おうちに帰ったらさ、あったかいお茶でも飲んで、ゆっくり過ごそうね」
「うんっ!あ……あのね、帰ったら、たくさん甘えても、いい……っ?」
腕の中で、純一が小さく顔を上気させながら、ねだるように囁く。
「ふふっ……もちろん。たくさん甘えていいし、キスもたくさんしようね」
「うん……っ!」
静かな公園のベンチで、二人。
お互いの境界線が心地よく融け合っていくのを感じながら、俺たちはしばらくの間
ただ静かに、互いの愛おしい体温を確かめ合っていた。
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