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現実的ではない、非現実的な出会い。
それは十時十分、交差点に飛び出したときだけ現れる少年を指している。
詳しいことは何も分からない。納得して受け入れるには難しい問題。しかしここへ来るたび、今までの常識は全て砕け散る。
異世界に行ってますなんて現実で言えば、たちまち痛い人だ。良い病院紹介するよ、と言われて終わりだろう。
でも俺はその痛い人の仲間入りをした。
馬鹿馬鹿しいの一言で切り捨てることができない。否定することができない。なんせ今まさに、この非現実的な空間に滞在しているのだから。
「清心、今日は一時間だけね。やっぱしいつまで居ていいとか分からないからさ。何かあったら怖いし」
清心は今日も交差点に踏み入り、白露に会いに来ていた。
白露は清心が来た際、必ず制限時間を設けた。二十四時間内なら神経質になる必要はないんじゃないかと踏んでいるが、この世界については分かっていることの方が少ない。
確証がない以上、ここに長く留まることは控えた方がいい。滞在時間は短いに越したことはないだろう。
でも、それなら白露は?
彼は最低でも十年ここにいると言っていた。名前も出生も忘れて、これ以上ここにいたらどうなる?
これ以上忘れることと言ったら何だろう。
例えば、“人間であること”を忘れる……なんてこともあるんだろうか。
「清心!」
「ん?」
色々と考えごとをしていた。……それを遮ったのは白露だ。見ると、頬を膨らまして俺の膝に乗っている。
「もう、何回も呼んでんのに。どうしたの? 疲れてて眠い?」
「あー……ごめん、大丈夫だよ。何の話してたんだっけ?」
「今一番売れっ子の俳優の三股話!」
「そうだっけ……でもお前テレビ見られないから、今話題の話なんかしても分かんないだろ」
冷静につっこむと、彼は可笑しそうに首を振った。清心のする話なら何でも面白い、と微笑む。それを見たら、細かいことなんてどうでもよく思えた。
白露の笑顔を見ていたい。
自分も大概、単純だ。