テラーノベル
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そこまで一気に言って、俺は自分の口を両手で塞いだ。
終わった。
何をご都合主義なツンデレみたいな寝言をぶっこいているんだ、俺は。
恥ずかしすぎて今すぐこの床に穴を掘って埋まりたい。
すると、直哉はしばらくの間、彫刻のように固まって黙り込んでいた。
静寂が部屋を支配する。
ふられたような恐怖が押し寄せ、俺が身を縮こまらせた、その時。
直哉の長い足が、ゆっくりと、けれど確実な足取りでこちらへと近づいてきた。
ベッドの端に、直哉の膝が触れる。
「……兄さん」
低く、空気を震わせるような声。
近い。
見上げれば、夕暮れの逆光を浴びた直哉の大きな身体が、俺を覆い尽くすように見下ろしていた。
久々のこの圧倒的な距離感に、心臓がドクンと跳ねる。
「俺、兄さんに嫌われたと思ってたんだよ」
「っ……」
「『重い』って言われたから。俺の気持ちが強すぎて、兄さんを苦しめてるなら、ちゃんと我慢しなきゃって。他の女子と帰るのも、兄さんがそっちの方が安心するならって、必死に耐えてたのに」
直哉の声が、微かに震えていた。
その響きが少しだけ寂しそうで、子供のように切なくて、俺の胸がズキリと痛む。
「ずっと、我慢してたのに」
「……な、直哉」
「兄さんからそんなこと言うの、本当に反則だから」
直哉の手が伸び、俺の両手首を強い力でガシッと掴んだ。
次の瞬間。
視界が反転し、強引に引き寄せられたかと思うと
ぎゅっと、骨が軋むほどの強さで抱きしめられていた。
「うわっ!?ちょ、おまっ……!」
久しぶりに感じる、直哉の圧倒的な体温。
ブレザー越しにも伝わる、硬くて大きな身体の厚み。
そして、俺の理性を狂わせる、大好きなあいつの匂い。
心臓が、耳のすぐ後ろで爆音を立てて鳴り響いている。
「……もう無理。兄さん不足で、本気で限界だった」
「お、お前…っ、力が強すぎ……っ」
「ねえ兄さん」
耳元で、直哉が低くクスクスと、けれどどこか熱を孕んだ声で笑った。
首筋に当たった直哉の唇の感触に、ゾクッと身体が震える。
「…もっと触っていい?ていうか…触って貰えなくて、不安になってたんだよね?そんなに、俺のこと……」
「……っ、分かった、分かったから」
「ふふっ、これから、毎日いっぱい触るからね。覚悟して」
「だから、距離が近……!」
言いかける前に、さらに腕の力が強まり、俺はそれ以上言葉を紡げなくなった。
直哉が、本当に嬉しそうに
宝物を片時も離したくない子供みたいに
俺を優しく、けれど絶対に拒めない強さで抱きしめ続けてくるから。
……くそ。
やっぱり、恥ずかしくて死にそうだけど。
この腕の中の、二十センチの体格差にすっぽり収まる距離感が
今の俺にとって、一番落ち着く場所だった。
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