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これは、なんだろう。
とても嫌な感じがした。
美里に悪気はないんだろうけど、嫌味に聞こえてしまう。
ああ、私ってどうして心がこんなにも汚くなってしまったんだろう。
友達の心配を受け取って、こんなに嫌な気分になるとか。
「ありがとう。生活感ね。アパレル店員として、気をつけるよ」
お客様が見て<あの洋服可愛い>って思える着回しとかしなきゃいけないのに。顔に疲れが出ているって、ダメだよね。
美里と別れ、自宅マンションへ帰る。
隼人は今日、何をしているんだろう。
玄関を開けると、そこには大きな段ボールが廊下に置いてあった。
「なにこれ?」
こんな大きな荷物、何を買ったんだろう。私じゃない。
宛名を見ると、隼人の名前だ。
「送り主は……。英語で書いてあってわからない」
中身が気になる。しかもこんな廊下に置かれたら、邪魔なんだけど。
「隼人。この荷物なに?」
私は部屋にいるはずの隼人に声をかけた。
しかし返事はない。
「教えてくれないなら、勝手に開けるから」
本当は開けるつもりなんてないんだけど。
「おい!人の荷物、見るなよ」
隼人が慌てて、自室から出てきた。
何年一緒にいると思っているの?
隼人の性格、わかっているよ。
「荷物なに? また大きなものを買ったの?」
私が段ボールを指さすと、隼人はふぅと息を吐いたあと
「ギターだよ!最終日の個展のあと、ライブをやるから。その時のために買ったんだ」
吹っ切れたかのように声を大きくして答えた。
「はっ?ギター何本目?この間も同じようなことを言って買ったばっかりじゃん。どうして新しく買う必要があるの?」
この前、新しいギターを買ったばかりなのは知っている。
五本以上は持っているはずだ。
私には音の質とか種類はわからないけれど、どうしてギリギリの生活をしている時に何万円もする買い物が平気でできるんだろう。
「良いじゃん。別に!音が全然違うんだよ。曲によって変えたいんだ。穂乃果にはわからないと思うけど」
「いやいやいや。そのお金、どこから出した?まさかまた……」
「リボ払いでカードで買ったよ」
ああ。もういやだ。私は最近買い物も控えている。
財布は別にしているけど、何があるかわからないから。怖くて使えない。欲しい物、我慢してるのに。
どうして隼人は、わかってくれないの?
「買い物するくらいの余裕あるんなら、私への借金返してよ!もう絶対に貸さないから」
「夫婦は共通の財産なんだろ?俺が画家として売れたら、すぐ返せる額じゃん。ちょっと待ってろよ」
ああ、謝罪もない。私への感謝の気持ちもないんだ。
<いつ売れんの!?一生売れなかったらどうするの?>
本当は、本音をぶつけてしまいたい。
だけど、それはあまりにも酷いよね。
私は自分を落ち着かせようと、深く深呼吸をする。
「それより、夕飯は?お前、今日仕事休みだろ?」
夕ご飯?休み?
ぷつんと私の中で何かが切れた。
「私はあなたのお母さんじゃないの!たまには夕ご飯くらい、自分で作ったら!」
私は帰ってきて早々、くるっと玄関へ向き直し、出て行こうとした。
隼人の顔なんて、見たくない。
私が靴を履いているうしろ姿を見ながら
「あー。清々する。すぐに帰ってこなくていいから」
そんな言葉をかけられた。
なにそれ!?
思わず、バタンと大きく玄関ドアを閉めてしまった。
ご近所さんへ響いてしまったかな。
そんなことを反省しながら、どこへ行こうか考える。
たまにはお酒でも飲みたい気分。久しぶりに明日もお休みだから。
ダメ元で、親友の|有栖《ありす》にでも声をかけるか。
スマホでメッセージを送ると、すぐに<ピコン>と返事がきた。
<いいよ!飲みに行こう>
待ち合わせをして、大衆居酒屋で有栖と食事兼飲み会をすることになった。
「久しぶり!ありがとう。急に誘ってごめんね」
「ううん。大丈夫!今日、暇だったから。こっちまで来てもらってごめん」
目の前にいる親友、|関谷有栖《せきやありす》は、私の中学からの親友。
高校は別だったけれど、都内に住んでいることもあり、たまにこうしてご飯を食べに行く仲だ。有栖は結婚していない。
彼氏はいるみたいだけれど、結婚には至らず、たまに愚痴を聞く。彼女はトレーニングジムの受付兼事務員として働いている。隼人とも会ったことがあり、昔はよく家に来ていた。
「何かあったのー?」
私の話を聞いてくれようとする有栖は、飲みに行くのが私相手だと言うのに、肩とデコルテを出すオフショルダースタイルだった。フェミニンな淡いピンクのトップスなのに、デニムで甘さを抑えている辺りが、さすがのモテコーデだと思う。
「私って最近、生活感丸出し?疲れてる顔してる?」
美里に言われ、気になっていたことを有栖に聞く。
「えっ、いきなり?久しぶりに会ったけど。別に変わらないよ。普通だよ」
有栖はどうしてそんなことを言うの?と不思議そうだった。
「高校の時の友だちとご飯行った時に、そんなことを言われて。ちょっと気になった」
ぐびっとビールを飲む。久しぶりに飲むビール、美味しい。最近我慢していたから。
「え、マジ、私たちくらいの仲だったらわかるけどさ。そんなこと言ってくる友達っている?美里って、高校の時、地味だった子だよね?」
私は有栖に美里に言われたことを話した。
「なにそれ?こっちは生活しんどいって言ってるのに。子どもの話とか。家が欲しいとか。旦那は安定しているとか。天然でマウントとってきてるんじゃない?」
全然気が付かなかった。
いや、美里はそんなことをする子じゃなかったはず。
「あっちには悪気ないかもしれないけど。完璧、自分の方が幸せみたいなこと遠まわしに言ってきてるじゃん。おまけに年下男子とカフェ巡りとか。有り得ない」
ビールの追加を頼んだ有栖は
「多いよね。おとなしかった昔の友だちが大人になってから、マウントとってくるの。マジ、ウザい」
一杯目のビールを空にした。
そういえば、美里、私のことを高校生の時は憧れてたって最後に言ってきた。
もしかしてそれって、だけど今は、私の方が幸せですって言いたかったの?
あぁ、自分で考えておいて、これは、卑屈な考えすぎるな。
「高校の時、穂乃果が付き合ってた玲央くんいるじゃん?美里って子、玲央くんと委員会が同じで好きになって、告白したけどフラれたって話だよね。その時のこととか、恨んでたんじゃない?」
コメント
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煉彩さん、第4話読みました! 隼人とのギターのやり取り、リアルすぎて胸が痛かったです…「夫婦は共通の財産」って、借金返してないのにその理屈はズルいなって思いました。美里のマウント疑惑も有栖がバッサリ言ってくれてスッキリ!ラストの玲央くんの名前、なんか物語動きそうで次が気になります🔥
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