コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
この所…無線での仕事が後を絶たない。
どんなに疲れていても、以前まであった休む時間が今ではほとんど無く、ずっと動かされている状態だ。
「お疲れ様です132番…今回の報酬です」
いつものようにお金が出てくる
然し,腕が動かない…これを受け取れば、またすぐに仕事が来る…そんな気がした
今の仕事なんて全く楽しくないしやりがいすらも感じない,寧ろやめていっそ解放されたいくらいだ
しかしどこへ行く?お金を稼ぐ為に、今目の前にある道はこの機械と…無線機しかないのだ
「……ッもう限界だ…」
視界が歪み、お金が出されたまま、そのまま意識を失い倒れてしまった
暗殺ターゲットとナイト
「……うっ…」
気が付くと辺りが真っ暗だった
星空が綺麗に映し出された夜空に美しい満月が浮かんでいる
立ち上がること無く,上を見上げて…白い息を吐き出した
お金は床に散らばっており、電源は切れていた
電源を切るためにお金をばらまいたのだろう
「……腹減った…」
ご飯はいつもそこらの自販機にあるものを買っていた
どうやら自販機は奴らが仕切ってるみたいで、作動し続けているようだ
と言っても,軽く食べられる様なものの為、栄養なんて全くない
無線機が小さく揺れている
あぁ__また仕事だ…
昔ながらの癖で,体が勝手に動き出す。
しかし…体が限界なのは、自分でも気付く程だった
きっとこの依頼を終わらせれば…自分は死ぬだろう
恐ろしい事だが心のどこかで,余裕の隙間が空いた気がした。
「……もうお前はいらない」
散らばった紙くずを取る事もせず…目的地へと足を運んだ
雨が降ってきた夜道
雷も時々光り、なかなかに危険な状態ではあったが,そんなこともうどうだって良かった
楽になりたい__頭の中でそんな言葉しか出てこなかった
歩く耽美に血の味がした喉も、反撃を食らって打たれた腹や手足も…孤独で寂しかった時間も…もう時期終わるのだから
今度の工場は入り込んだ山道の奥にあった森の中だった
自分の中で、最後の仕事という事もあり今までの中でダントツで辛い道のりではあるものの…動く足を止めることは無かった
木の根を掴み、よじ登って…時々濡れた泥沼に滑って体を打つが…休む事はしない
そしてついに見つけた…大きな屋敷を
かなり茂っている様子だが、このぐらいのフェンスなら木を伝ってよじ登れば簡単に入り込めるだろう
周りを警戒し、木に手をかけ登り中へと入ると入口まで素早く移動し,大きな扉に手をかけた
こんなの見た事ない…まるで門だ。かなり大きな屋敷だ
工場には見えないが……何しろ今回の依頼は報酬が今までとは桁違いの量だ…その分殺されないように警戒しなくてはならない
耳打ちをし、音がしないことを確認した後大きな門から中へとゆっくり忍び込んだ
鍵はかかってない…見た目でもわかるが本当に人が住んでるのか危うい状態だ…まるで廃墟のような
一体何人いるか分からない,ナイフを忍び込ませ、ライフルを手元に持ち、十分に警戒をした
中はホールのような広さだった左右に開かれた階段から先は、真っ暗で何も見えず,目の前に大きな扉が目立っていた
(……人の気配を感じない…幾ら何でも無防備過ぎないか…?)
1歩前に出すと…床が、軋む音がした_
強い雨が窓に当たり雷の音が外に聞こえながら…電気をつけ、椅子に座り一息ついている人の姿が合った
男は1人で、なにかに気がつくと,小さなベルを鳴らす
チリリン……__
「……お呼びでしょうか」
メイドの格好をした女性らしき人が男の部屋へと入ってくる
「…侵入者だ…処分しなさい」
一言呟くと、メイドはカクカクと軋ませたような音を出しながらお辞儀をし,その場から出ていった
廊下には扉がいくつもついているため,一から調べてはキリがない…
こういうケースはだいたい地下の方に基地を作るのが多いのだ
目の前にある扉を全て無視し、只管に地下へと目指した
奥の方へ進んでいると、ガシャンガシャン妙な重低音が響き始めた
身を潜めると,階段から登ってきたのはメイドの格好した女性の……ロボットだった
(…!?……なっ…!)
数多くのロボットを見てきたが、こんなにも作り込まれた完成度の高いものは見た事がない…
ロボットが目の前まで来るのを確認すると、突然動きをピタリと止めた
カクカク首を動かし、窓の方に視線を向ける
「侵入者は…アナタですね」
「…ッ!バレたか…!」
ロボの手が銃口に変わり、そこからいくつもの弾が襲う
素早く身を動かし、壁を足で蹴り上げ、宙返りをして華麗に避ける
柔らかくよく動く体を使い反動でライフルを向け狙いをつける隙も与えずロボットに目掛け弾を2発打ち込んだ
ロボットの頭部分に2発命中すると、ロボットはガクガク腕や足、首をぐるぐると動かし次第に動かなくなった
「……ここから来たのか…」
下へ続く階段を見下ろしライフル銃の弾を詰め直し準備をした後…下へと降りていった
廊下があったが,そのまま前へ歩き、次第にぶち当たる扉の前で足を止めた
覚悟を決め、手を掛けようとした時…背後からものすごい殺気を感じ取り、すぐさま身を下げた
弾は扉に何弾も打ち込まれ、先程倒したはずのロボットが目の前に立っていた
(……バカな!急所は狙ったはず…!!)
銃口を向けられ、さらに目の前まで詰め寄ってくる。
「……ッ!」
咄嗟に入る予定だった目の前の扉を開け、中へと入る
尽かさずロボットも扉を突き抜け入ってくると、銃口を構える
誰も居ない部屋では窓が開かれており強い風が白いカーテンを靡かせた
雨は机一面をびしょびしょに濡らしており、雷の音も強くなっている
「……!まさか逃げたか?」
ロボットの銃口が向けられ、何弾も連続で放たれる
机をひっくり返し、銃弾を避けるが弾は肩を勢い良く掠めた
「ッぃっ…て…ッ!」
太ももに拵えた拳銃を取り出し、電球を打ち割る
視界が真っ暗で,かすかに動きを止めたロボットに目掛け、さらに5発と全身に打ち込む
再び、ガタガタと異常動作を見せた後、そのまま動かなくなった
「……ッハ…ざま…み…」
すると、片方も意識なくしその場に倒れ込む
真っ暗で銃弾が飛び散った部屋は月光の青白い光が部屋に差し込む
ガラスを砕く音を鳴らしながら部屋へと入ってきた男は壊れたロボットに見向きもせずに倒れた人間の方へと屈む
「お前…もう時期死にますね」
声に反応し、目だけをゆっくり開くと
目の前に白衣姿の男が自分のすぐ側で屈んでいた
「良くもまぁ…やってくれたものですよ、人の部屋で」
「ハハッ…お前も…死ね…」
倒れた拍子に手元から離れた拳銃を男が拾い上げると倒れた頭にカチャ…っと突き付けた
先程打たれた肩から流れた血がじわじわ広がっていく…
「…最初で最後ですが…お前からは死人の匂いがします。誠に不快なので処分次第、窓から捨てて狼の餌にでもします」
拳銃に力がグッと込められたのを頭で感じ取ると、倒れていた体がふわっと宙に浮かぶ
「……!!」
「死人だと…それはお前だろ?…人殺し」
気が付くと白衣の男の方が倒れていてその上に跨るように押さえつけていた
手元にはナイフが握られていて、男の首元で鈍く光っている
「……ふふっハハッ!!いいザマだなぁ?…殺す側が殺される側になるのを見るのは!」
「悪趣味……ますます不快ですね」
「そーか!!じゃ見れなくなるように楽にしてやる」
グッとナイフに力が籠った時
カラン__と床にナイフが落ちた
先程まで跨っていた体は横転し、男の上に伸し掛るように倒れ込んだ
「…死にましたか」
乗っかった体を雑に腕で突き飛ばすと、男は立ち上がる
床から零れるような血液は光の反射で紫色に見えた
無線機から声が聞こえた
__132番…お前には期待をしていたようだっ
たが……死んでしまえばただの死体だ…今まで
ご苦労だったな__
ブチッと無線機が切れる
「……132番?」