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暗殺ターゲットとナイト
「…そうか…132は死んだのか」
パソコンのモニター越しに女性が132番の死を告げた
相手をしていたおじさんの方は,顔色一つも変えずまるで決まっていたかのような答えを女性に返した
「奴にここがバレぬよう…通信機は電源を切れ。やつはもう用済みだ」
「かしこまりました」
モニターを男が消すと、机に置かれたチェス台の駒を倒した
「ふむ…1つ、戦力が落ちたな」
倒した駒をチェス台から叩き落とし、相手の駒を手前に移動させた
叩き落とされた駒は,コロコロ床に転がり,やがて止まった。
____……
_ゼ……__なさい_
起きなさい__ゼイ
「……はっ…!」
謎の声に起こされ、目を覚ます
冷や汗をかきながら、飛び起きると目からは涙がこぼれ落ちる
どれくらい眠っていたのだろう…ほとんど記憶なんてない
少し脳を休ませ…状況を整理する 今わかる状況は,ふかふかのベットに横になっていたことと、身体中の手当が終わってる事だ
ベットの横に洗面器があり暖かいお湯に綺麗で清潔なタオルが浸かっていた
何より…生きている
「……いッ……たたたっ!」
撃たれた肩から鈍い痛みが走る
あまりの痛さに声を押し殺していると、扉からノック音が響いた
「……ッ!」
身構える間もなく、扉が開き、ワゴンを押しながらメイドが入ってくる
以前戦っていたあのロボットだ
「……ッ!お前!」
構えるがしかし、辺りに武器が見当たらない
服装もまんま着替えている為隠し持っていたナイフなど全て押収されていたのだった
「落ち着いて下さい!傷口が開きます!!」
「は、はぁ!?誰のせいだと思ってんだ!!」
「あぁ!!それも今はで関係ありません!気を確かに…!!」
ベットに立ち上がると、素早く飛び移りロボットの背後に回る
開けっ放しの扉からダッシュで飛び出すと、後ろから追いかけてくる音がした
「止まってください!止まってください!」
「出口は…!!あの男は…!武器は!」
廊下を曲がると、別のメイドロボットがバケツを運んでいた
「……なっ!?もう一体!?」
「な、何事ですかああ!!」
既に遅く、そのままロボットとバケツ目掛けぶつかってしまったのだ
水が辺り一面に零れ、滑って体を打つとやっと動きが止まる
「……うっ…いてて……」
「あ……あああっ……そ、掃除が…あああっ…」
頭をぐるぐる回しながらバケツを運んでいたロボットがその場に倒れ込んだ
「…良いですか?大人しくしなさいよ」
手足を拘束され、身動きが取れないのを確認するとロボットは安心したように行動を始めた
しかし手足を拘束されたことに納得が行かず口や足を使って締め付けられた紐を外そうと抵抗する
「ッ!離せっ…解剖でもする気か!!」
「何を!物騒な!人間体内記録など、とっくに脳に入ってます!!」
机に置かれた洗面器のお湯を捨て、ポットから新しいお湯を注ぎ入れる
タオルを付けると絞り上げ、ゆっくりとこちらに近付いてくる
しかし近付いて来るロボットを止めた足で妨げた
「おい、来るな」
じたばた手足を動かし、最終的に足を退かして迫ってきた
「……ッ」
もうダメだ…やられる…ッ
ギュッ…と目を瞑ると、顔に暖かいものが優しく押し付けられる
ゆっくり目を開けると暖かいタオルで優しく顔を拭かれているのが視界に入ったのだ
「……何してんだよ…?」
「お風呂に入れる状態では無いので…お湯で汚れを拭き取っております」
説明をしながら行動をとめない
優しい布の感触が、懐かしい…
しまいには来ていた上の服をグイグイ脱がされる
しかしまた足で行動を妨げると、一言呟いた
「自分でやる」
「そうですか!それは失礼しました!」
ロボットが離れると、少し離れた距離で観察される
暫く見つめ合う時間が続いた
「あの…やらないのでしょうか?やはり痛みますか?」
「解け!!!」
「わあああっ大変失礼しました!!!」
その頃廊下では複数のロボットが零れた水の後始末と、倒れ込んでいるロボットを立たせようと動いていた
その様子を見ていたのは白衣を身にまとったあの男だった
眉をピクピクさせ怒りを押し殺しながらその様子をじっと見つめていた
次第に倒れていたロボットが立ち上がると、頭から煙を出し,完全にショートしてしまった
「……あの人間は何処だ…!」
用が全て終わり、ロボットは退室した頃、疲れ切った体が勝手にベットに投げ出された
逃げなければ…そんな言葉が頭にはあったが、体が言うことを聞かない
換気のために開かれた窓からは太陽の光と風が入ってくる
「……」
心にしまい込まれた懐かしさを感じながら…力がフッと抜けそのまま瞼が閉じた
扉が開く
ロボットが扉を開け、外から男が入ってくると、ベットの方へ視線を向けた
会釈をしたロボットはそのまま退出する
何も反応が無いことを確認した男はベットへと足音を立てながら近寄る
近くに立っていても、攻撃や声1つ上げないのは眠っている為だ。変に暴れたりしない顔は大人しい小動物のような寝顔
……スー__
その顔に手が触れようとした時、
大きな風が吹き荒れ窓から大きな音を立てた
男が一瞬視線を逸らした途端、ベッドで眠っていた目がパッと開く
「…!」
その目が男の姿を捉えると反応する間もなく男の手を無理やり引っ張りベットへ引きずり込んだ
布団が宙へ舞う空間で、目がパッチリ合う
先程まで寝ていたはずなのに、満面の笑みを浮かべた顔は何かを企んだ人間の顔そのものだ
すぐさま反動で立ち上がるとベットにバランスを崩した男を布団でぐるぐるにする
先程使われたロープで縛り上げ、抵抗させぬ状態にすると顔を出した男が睨みつけた
「クソガキ……」
男が呟くと笑みが不意に消え、ベットから床へと蹴り落とし満足そうにその上に座る
「ハッ!…勝負アリだな」
「殺されたくないならすぐにでもこのおままごとから解放しなさい」
「そのまま返してやる…殺されたくないなら訳を話せ、なぜ生かした?」
すっかり軽くなった体の体温を感じながら男を見下ろす
縛り付けられた男は少し間はあるものの、返答に答えた
「まずは解きなさい話はそれからです」
「……じゃあ殺す」
「お前は物騒な人ですね…見た目 匂いは多少マシになったものの、中身は腐りきったままですね」
「そんなのお前が言えるか、犯罪者が」
勢いをつけて立ち上がると、扉を開け、男を放置したままどこかへ歩き去って行く
(早い所あの男を殺すか…まずは武器を…)
廊下ですれ違うロボットに多少警戒しながら、階段を使い下へ降りる
どうやら3階建てみたいで、1番上の隅の部屋にいたようだ
下まで降りると、ホールを使い、キッチンと書かれた所へ足を運ぶ
「包丁…か…」
誰も居ないキッチンは、丁重に扱われた道具や食器がしまい込まれていた
歩み寄ると、長く鋭い刺身包丁を手に握り込む
「まぁ…これでいいか…」
「何がいいんです?」
背後に立った男に気付き、すぐに振り返る
呆れた様子で平然と立つ姿が腹立たしく感じ、持つ手が震える
「さぁ…お前の事だ!!」
目の前まで走り、包丁を振る
避けきられ背後に廻られるとそのまま後ろへ下がる、男もまた包丁を握ると、両者が衝突した
金属の擦り合う音にロボット達が入口前まで集まってくる
「先生!大丈夫ですか!」
「下がっていろ!!」
やがて男の方の包丁が飛び、壁に突き刺さる
包丁を男に突きつけながらじわじわと迫る