テラーノベル
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ドロウス商会の若頭であるカシオンの招待を受けたウェントゥス傭兵団一行。あくまでカシオンの個人的な誘いだったが、女性陣はユウラの勧めもあってドレスをまとい晩餐に参加した。……その会食はカシオンの、ひいてはドロウス商会との付き合いにも大きく影響するとわかっていたからだ。
セラはアルゲナムの色である白と青のドレス。サターナはいつもの漆黒のドレス姿だが、化粧やアクセサリーで幾分か豪華さ増し、小さなお姫様と言っても過言ではないできばえだった。
一方のアスモディアは、なんちゃってシスターの格好から、赤と紫のドレス――例によってその大きな胸を強調する艶やかなものだったが、すまし顔でいる限りは下品さを感じないのが、いちおう貴族階級であることを物語っていた。
希少だったのは、実はキアハだったりする。彼女は夜になると肌が灰色になり額に一対の小さな角が生えてくるのだが、その彼女がドレスを着たのだ。
……最初は、カシオンに不快な思いをさせるのではと遠慮していたキアハだが、ユウラから話を聞いたカシオンはぜひご一緒したいと申し出たのだった。商人として珍しいものは見ておきたいという好奇心だろうか。とはいえ、種族が違えど、女性への配慮を忘れない紳士である彼は、キアハに対してもきちんと対応して見せた。
慧太(けいた)とユウラも正装の上で出席した。……ことになっている。というのも、慧太は分身体を代理に立てると、晩餐をエスケープしたのだ。
食事を不参加した理由は、市場を回っている時にリアナに声をかけられたことに起因する。そう、狐娘も体調不良を理由に出席を辞退したのだ。
かくて、ドロウス商会が手配してくれた宿に、慧太とリアナはいた。
「それで話というのは?」
「うん」
リアナは何かが入った袋を持ってきた。石の塊でも入ってるのか、中に入っているものがごつごつしたものなのか、袋の形状がいささか歪(いびつ)である。
「なんだそれ?」
慧太が聞けば、リアナはベッドの上にそれをぶちまけた。岩のようなそれは白銀色の光沢を持っている。また、それより小さな鱗(うろこ)模様の皮のようなものがあって――慧太は眉を吊り上げた。
「これ銀竜の鱗だろう?」
どうしたんだこれ――ドロウス商会に売り渡して手元には残っていないはずだ。リアナはいつものように淡々とした表情で答えた。
「もう一匹の銀竜から、わたしが個人的に回収したもの。……商会に売るものには手をつけていない」
ジュルター山で戦った銀竜は一頭だけではない。リアナがそういうのならそうだろう。慧太はそれ以上、追及はしなかった。
「で、これをどうするつもりだ?」
「誕生日の話をした」
あー、昼間の――サターナが誕生日プレゼントがどうのというのと、誕生日がわからないというキアハに、セラがその日を決めよう言った云々。
「キアハに、新しい鎧をあげたい。今使っている革鎧、かなり痛んできてる」
「あぁ……」
慧太は納得した。ナルヒェン山にこもっていたキアハだ。モノがほとんどなかった僻地暮らしだ。身に付けている装備もかなりくたびれてきても、買い換えたりできない環境だったわけで。
「銀竜の鱗がある。これで装備を作ってあげれば、身を守るために役に立つでしょ」
「そうだな」
ジュルター山で、銀竜と交戦した際、キアハは九死に一生を得た。これから戦いの場に出るというのだ。慧太やサターナと違い、命を落とす危険性のある人間の一人だから、何とか守ってあげたい。銀竜の鱗は岩のように硬い。生半可な刃は弾く。これで鎧ができれば生存性もかなり上がる。
「ドロウス商会に話を通して、防具を作る職人を探してもらうか……。竜の素材を扱える職人ってそうそういないだろうし」
「うん、それでいい」
リアナはコクリと頷いた。袋に銀竜の鱗などを戻しながら、慧太は小さく笑みを浮かべた。
「まさかリアナが、キアハに鎧を作ってプレゼントしようと思うなんてな」
「プレゼントは話が出たからついでみたいなもの。少し前から、彼女に新しい鎧をあげるべきだと思ってた」
「……意外と仲がいいんだな」
リアナは他人とあまりかかわりを持ちたがらない。セラに対しては同情的な姿勢を見せることがあるが、基本的に、周囲に積極的に話しかけることはほとんどない。獣人だから遠慮している……ばかりではなく、彼女個人の性格によるものだろう。
「キアハは、妹みたいなものだから」
「妹……!」
慧太は驚いてしまった。リアナは真顔だったから余計に。体格自体はキアハが女性としては大柄であるが、人間換算で数えればリアナと同じくらいの年齢だ。
「そういえば、最近よく彼女と話していたな」
よくよく思い出せば、二人は一緒にいることが多かった気がする。慧太以外の例外として親睦を深めているようで、何よりだ。
「でも問題がある」
狐娘は言った。慧太は首をかしげる。
「キアハにはプレゼントという形で渡したい。秘密の」
「あー、びっくりさせようってことか」
サプライズ。鎧はキアハの知らないところで、製作し、それ自体秘密にしたいということだ。
「そうなると、サイズが測れない。キアハは身体が大きい」
「そうだな、オーダーメイドだから、サイズわからないのは問題だな」
とはいえ直接測るわけにもいかない。慧太は額に手を当てた。
「わかった。少し待て、ちょっとキアハのサイズを思い出してみる」
こちとら相手に変身するために観察力は日々磨いているシェイプシフターだ。身長から、各部位のサイズなどを目測でだいたいわかるくらいにはなっている。……あまり女性の前では言えない特技だが。キアハのバストサイズからウェスト、ヒップの――
「ケイタ、測るから」
リアナはすっと紐を手に持つ。一定の長さごとに印がついているやつだ。それでサイズを測るのだが……――待て、いま何て言った。
「測る?」
「キアハに化けて」
狐娘の碧眼がキラリと光った。
・ ・ ・
「ねえ、ちょっと……これは」
慧太――もとい、キアハはその豊かな胸を隠すように手で守る。
黒い髪をショートカットにした大柄な少女は、上半身裸の姿で、リアナの前に立っていた。その狐娘は、そんなキアハに化けたシェイプシフターのまわりをぐるぐると。
「手をどけないと胸のサイズが測れない」
それはそうだ。正確なサイズを測るという名目上、キアハが通常身に付けているレザーアーマーの類はつけられない。だから裸なわけだが――
「ねえ、せめてアンダーはつけさせてくれない? 素肌の上から直接、鎧を着ているわけじゃないから」
「……」
「せめて薄手の……シャツくらい」
「……うん」
リアナはしぶしぶと言った感じで頷いた。その瞬間、キアハの上半身に白いTシャツ――もちろん、シェイプシフターの変身効果だ――が浮かび上がる。ついでに、アスモディアには劣るが充分大きな胸がTシャツを押し上げられる格好になる。
「ケイタ、手を頭の後ろに」
……うん――キアハの声、姿で応じる。まずは胸のサイズの計測か。リアナが背後にまわり、キアハの姿の、そのたっぷりある双房をそれぞれの手で鷲づかんだ。
「ふぇっ……!?」
思わず声に出る。リアナの手はキアハの――シェイプシフターの胸を揉み揉みと。
「ケイタ、少し胸がキアハのより小さいような……」
「どういう測り方してるの!?」
「目測、甘くない?」
真顔でそんなことを言うのだ。羞恥に悶えるのが、馬鹿らしくなるような――いや、しかしこれは恥ずかしい。なにぶん、化けたキアハの身体が女性として実に発達しているのがよろしくない。しかもそれを、舐めるようにじっくり観察されると、なにやら妙な気分にさせられるのだ。
慧太――キアハは少し背筋を伸ばす。胸に少し意識を集中するように胸のサイズを修正。リアナは相変わらず、その細い指でたっぷりある肉塊を掴み――特に触られた感覚がどうこうというのはないが、どこか如何わしい行為をしているのでは、という思いが羞恥心へと繋がっているのだ。
「では――」
そんな慧太の心理を知ってか知らずか、無表情のリアナが、改めて紐を手に取った。
「測ります」
数分かけて、キアハの身体の測定をする。黙々と測るリアナに対し、慧太は口を挟むことなく、ただ終わるのをじっと待ち続けたのだった。
翌日、ドロウス商会から防具を製作している職人を紹介してもらい、銀竜の鱗などの素材を使った鎧の作成を依頼した。
コメント
1件
ああ〜もうこの回エモすぎる!!😭💕 リアナがキアハのこと「妹みたい」って言うの、じわるし優しすぎるでしょ…!サプライズで鎧をプレゼントしようって発想も、キアハを守りたい気持ちが溢れてて泣ける。 そして慧太がキアハに化けてサイズ測られるシーン、恥ずかしすぎてこっちまで顔が熱くなったわ…!リアナの真顔で鷲掴み&「目測、甘くない?」がシュールすぎて笑ったw でもそういう細かいやり取りにキャラの信頼関係が滲んでて、めっちゃ好きな回でした〜🌸
#溺愛
桜咲かな
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