翌朝。
窓から射す春の光が、街を淡く包み込んでいた。
けれどFUMINORIの胸の中には、夜の湿った記憶がまだ残っていた。
SHOOTの涙。
MORRIEからの連絡。
彼の声に滲んでいた、切羽詰まった焦り。
「今、放っておいたら……壊れちゃう。」
FUMINORIは何度も部屋を行き来し、スマホを握った手はじっとりと汗ばんでいた。
やがて、決意の色が瞳に宿る。
マネージャーに連絡を取り、すべてを打ち明けた。
声は震えていたが、言葉は真っ直ぐだった。
「SHOOTのこと、俺たちで何とかしなきゃいけない。俺、リーダーでしょ。だったら、今やらなきゃ意味ない。」
受話器の向こうで短い沈黙があり、静かな返事が返ってきた。
「……分かった。動こう。」
その日、スタッフが動いた。
スケジュールはすべて白紙に戻され、撮影も練習も延期された。
チーム全体が、ひとつの想いで動いていた。
SHOOTを守るために。
午後。
スタジオの一室に、BUDDiiSの10人が静かに集まった。
白く広い会議室。
窓にはブラインドが下ろされ、わずかな光がテーブルの上に線を描いている。
壁にはこれまでの活動を彩るポスターたち。
でも今は、そのどれもが少し遠く、色褪せて見えた。
誰も冗談を言わない。
誰も笑わない。
ただ、10人の視線だけが、SHOOTの隣に集まっていた。
やがて、その沈黙を最初に破ったのは、SHOOT自身だった。
「……ごめん。俺、ずっと隠してた。」
かすれた声に、誰も言葉を挟まなかった。
「本当は、誰かに言いたかった。だけど、言ったら迷惑かけると思って……迷惑かけるくらいなら、自分だけ我慢すればいいって……」
ぽつりと、テーブルの上に涙が落ちた。
FUMINORIが静かに口を開く。
「ごめんな。リーダーなのに……お前の変化にちゃんと気づけなかった。」
悔しさと、強い想いがにじんだ声だった。
「でもな、今からでもちゃんと支える。俺らは、誰かひとりでも欠けたら成立しないんだ。10人で、BUDDiiSだろ?」
YUMAが目を伏せながら続く。
「ごめんな、SHOOT。気づいてたのに、向き合えなかった。」
それに続いて、仲間たちの声がひとつ、またひとつ重なっていく。
「一緒に、乗り越えよう。」
「無理すんなよ、SHOOT。」
「頼ってくれたら、ちゃんとそばにいるから。」
誰の言葉にも、飾りはなかった。
その部屋にあったのは、**ただの“本音”**だった。
あたたかく、静かな決意がそこに満ちていた。
これは、SHOOTのためだけじゃない。
これは、みんなのための決意。
BUDDiiSは、10人で改めて手を取り合い、もう一度、歩き出す。
コメント
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文字にも感情がこもっていて読みやすいし感動しました!