テラーノベル
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神父様の前で、私たちは永遠の愛を誓い合った。
「では、誓いのキスを」
その言葉に従って、ミナトがゆっくりと私のベールを上げた。
ミナトの少し震える指先が私の頬に触れ、二人の唇が重なろうとしたその瞬間。
「ちょっと待ってくれ!!」
チャペルの重厚な扉が勢いよく開き、冷たい外気とともに一人の男が飛び込んできた。
息を切らし、狂おしいほどの執念を瞳に宿した――ユウキだった。
ユウキ:「(祭壇まで駆け寄りながら)キララ、嘘だろ!? こんな泥臭い男と結婚するなんて間違いだ! もう一回やり直そう、僕の方が君を大切にできる! 最高の人生を約束するから、今すぐ僕のところに戻ってきてくれ!」
会場が騒然となる。ミナトが私の前に立ち、ユウキを睨みつけた。
ミナト:「(低い声で)……テメェ、何のつもりだ。今日は俺たちの結婚式だぞ」
ユウキ:「(ミナトを無視して)キララ、聞こえるだろ!? 僕のほうがいいよ、こんな奴よりもね! 戻ってきな!」
私はミナトの腕をそっと引き、一歩前へ出てユウキを真っ直ぐに見つめた。もう、私の心には迷いなんて一ミリもなかった。
キララ:「(凛とした声で)……ユウキくん。わざわざ来てくれてありがとう。でもね、私はこの人とやっていくって決めたの!」
ユウキ:「(絶望したような顔で)キララ……」
キララ:「もう、本当の答えはあなたじゃなくてミナトだったの。ごめんね。今の私は、ユウキくんがくれた完璧な世界よりも、ミナトと一緒に作る泥臭い未来の方がずっと愛おしいんだ。もう、やり直せない。……さようなら」
私の言葉が終わるのと同時に、式場のスタッフたちが駆け寄り、ユウキの腕を掴んだ。
スタッフ:「申し訳ございませんが、お引き取りください」
ユウキ:「(引きずられながら)キララー!! 僕は君を……っ!」
扉が閉まり、再びチャペルに静寂が訪れる。
ミナトが少し心配そうに私の顔を覗き込んだ。
ミナト:「……大丈夫か、キララ」
キララ:「(笑顔で頷いて)うん。これで、本当に全部スッキリしたよ。……さあ、続きしよう?」
ミナトは照れくさそうに笑い、今度はしっかりと、私の唇に熱い誓いのキスを落とした。参列者からは、さっきの騒動を吹き飛ばすような、今日一番の拍手が沸き起こった。
挙式のあとの披露宴
あんな事件があったからこそ、私たち二人の絆はより一層強く、ゲストにも伝わったみたいだった。
友人たちのスピーチや、サッカー部の仲間たちの騒がしい余興。会場中が笑いと涙に包まれる中、ついに最後の「新婦の手紙」の時間がやってきた。
キララ:「(マイクの前に立ち、手紙を読み上げる)……ミナト。さっきは、守ってくれてありがとう。ミナトは不器用だけど、私が一番私らしくいられるのは、やっぱりあなたの隣です」
会場の隅で、ミナトは人目も憚らず、ハンカチで目を押さえて号泣している。
キララ:「(笑顔で続ける)これからは、世界で一番幸せな、騒がしい家庭を作ろうね。……大好きだよ、ミナト」
披露宴のクライマックス。私たちはゲストの拍手に包まれながら、出口へと向かう。
扉のすぐ手前で、ミナトがいきなり私を抱き寄せた。
ミナト:「(会場中に響くような声で)みんな、今日はありがとな! キララは、一生俺が離さねーからな!」
2025年12月30日。
嵐のような一日だったけれど、私の隣には世界で一番愛する人がいた。
私たちの「新しい家族」としての物語が、今、高らかに始まった。
つづく
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