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コメント
2件
めっちゃこの2人、お似合いすぎる🫶
「朝霧部長」
葉山さんは驚き、他の同期も動揺を隠せていない。
「そうですね。女性社員に手を出したというのは、語弊があります。そしてそれが原因で異動というのは、間違った情報です。複数の社員の前で性癖がどうかしているという発言は、名誉棄損にもなりますね。なんだか僕の悪口が聞こえてきたので、しっかりと録音しておきました」
朝霧部長はスマホを葉山さんに見せた。
「また一方的に和倉さんに暴力行為を働こうとしましたね?そちらのお二人も葉山さんが手を出そうとしたのを見ていたと思いますが」
彼女らは目線を朝霧部長から逸らす。
「今回の一連の行為は、就業規則に基づき、適切に対処します」
葉山さんは何も答えられずにいる。
「ああ、それと。今、僕の家族について不適切な情報がSNSで発信されて、噂になっていますが。あれも名誉棄損で調査をする予定です。変な噂は信じないでくださいね」
朝霧部長の口角が上がった。
不適切な情報、それってきっと、今朝、男性社員が話していた内容だ。
「もう帰っていいですよ。上に相談し、処罰については決定します」
葉山さんたちは返事もせず、軽く会釈をして帰って行った。
呆然としている私に
「和倉さん、大丈夫ですか?寸前で止めたつもりなんですが、ケガはしていませんか?」
皇成さんが心配してくれている。
「あ、はい。全然大丈夫です」
もしかして、最初から見ていたのかな。
「今日も一緒に帰りましょうか」
「はい」
部長の車に乗った。
「あの、部長。さっきはどこから聞いていたんですか?」
「今は部長じゃないです。でも仕事の話ですよね。実は、葉山さんが俺のことを話しているところから聞いていました。早めに会議が終わって、芽衣さんがまだ社内にいたら、一緒に帰ろうと思って、部署に戻ったらあんなことになっていて」
そうだったんだ。
じゃあ、私の発言も全部聞かれてた?
あんなに熱く反論しちゃったけど、どう思ったんだろう。不安だ。
「芽衣さんが謝れって言ってくれた時は、ドキドキしました。こんなことを言ったら、葉山さんのいう通り、性癖がおかしいとか言われそうですけど。芽衣さん、かっこ良かったです」
そう言って、優しくハグをしてくれた。
「好きな人が悪く言われるのって、あんなに腹が立つんですね。はじめて知りました」
「ありがとうございます。あんなに必死になってくれて、可愛かった」
クスっと部長は笑っている。
「なんか恥ずかしいです」
大きな声を出してしまった、許せなかったから。
そのあと部長の家に行き、今朝、男性社員が話していた内容について、皇成さんの口から詳細を聞けることになった。
「あぁ。母親が違う兄弟がいることは事実です。ですが、家族仲は良好ですし、それに、弟は全く違う仕事に興味があるので、朝霧商事を継ぐ意志はありません。将来的に父は俺を後継者にするつもりで、今回の異動があったんです。最近、元部長の佐藤さんと違って厳しく指導をしたため、誰かに恨まれてしまって。SNSでさっきのような変な情報が出回っているみたいです。今、犯人を調査するところです」
皇成さんは淡々と話してくれているが、そんなことを書かれて嫌な気持ちにもなるだろう。
「葉山さんの言っていたことは、俺にもよくわかりません。女性社員に手を出したことはありませんし、むしろ逆で、ストーカーまがいのことをされたので、会社に相談をしたまでです」
どうしてそんな風に伝わってしまったんだろう。
「俺は芽衣さんされ信じてくれればそれで良いです」
皇成さんがフッと笑っている。
「私は信じています」
「はい。さっきすごく伝わってきました」
ハハっと笑う彼を見て、ムッと口をへの字に曲げたが
「可愛い」
そう言って、皇成さんは膨れた私の唇に触れた。
やばい、どうしよう。ドキドキする。
ただ唇に指が当たっているだけなのに、どうすれば良いかわかららず、皇成さんの顔を見つめてしまった。
すると
「芽衣さん。その顔、反則です。我慢できません」
皇成さんはゆっくりと私に近づき、チュッと唇に キスをした。
数秒で唇が離れたが、私にとってはファーストキスだ。
目をパチパチさせていると
「嫌でしたか?」
皇成さんも顔が真っ赤だ。
「いえ。嫌じゃないです」
今もまだドキドキしている。
皇成さんとの顔が近くて、耐え切れず、恥ずかしさを隠すように私は彼に自分から抱きついた。
「芽衣さんっ?」
「恥ずかしくて、心臓が止まりそうです」
抱きつきながら、彼の胸の中でそう伝えると
「止まらないでください」
笑いながらも、ギュッと支えてくれた。
「俺が自覚している訳アリ部分は、とんでもなく嫉妬心が強いところと、芽衣さんが傷つけられているところを見たら、その人のことを落としてしまいたくなるところです。あと、芽衣さんのことが好き過ぎるところ。こんな訳ありでも良いですか?」
なんだか物騒な内容も含まれているような気がしたが
「はい」
私は返事をしてしまった。