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アーサー・カークランドというーーについて

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アーサー・カークランドというーーについて

1 - アーサー・カークランドというーーについて

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2025年06月04日

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まじで思いつき。

イギリスのみ人間です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

” もし今、私の息の根が途絶え、この命が尽きようとも。

私は、貴方に会いに行くでしょうね。”


「アーサー・カークランド!!」

『はいッ!?』


野太い担任の声が、耳をつんざくほど聞こえる。

最近、猛烈な眠気が襲ってくることがある。

それは自分ではどうしようもないほどで、気づけば夢の世界へと落ちている。


今回もそうだ。

隣の席の奴が、

「おい、またかよ」

と、

後ろの席のクラスメイトが、

「ちゃんと夜寝てるの?」

と。

以前よりも、日常に人が密集し、淡々と過ぎていく日々は嫌いではない。

…以前?

猛烈な眠気に屈したときには、必ず不思議な夢を見る。


出てくる人物は毎日のように変わるけれど、皆同じようなことを言う。

聞いてくる、というほうが正しいだろうか。

どれも今までにであったことのない風貌の人ばかりで、正直心当たりすらない。

ただ、彼らの纏う雰囲気が、恐らくただの人ではないということを感じさせる。


今日も不思議な夢は変わらずだが、今回出てきた人物が一番馴染みのある人だった気がする。

THE・日本人のような格好で、今の日本では寧ろ目立つぐらいだった。

背は自分より幾分か低く、柔らかい笑顔の中にも何百年は越したであろう貫禄が漂っていた。


日本人特有の長々とした季節の挨拶から始まり、なんてことない世間話のようなものを聞かされた。

ただ、その人の

“お元気ですか?”

“あなたが健康であることを、私たちは切に願っていますよ”

も全て、胸を大きくざわつかせるには十分な重みがあった。


もしかしたら、と思うことがある。

俺だって感が鈍いわけじゃない。寧ろ鋭い方だ。

この人たちは人じゃなくて、もっと大きなものなんじゃないか。

自分は昔、この人たちの仲間だったんじゃないか。

平凡な1高校生になった俺を壊さないよう、夢の中でのみ思いを伝えているのではないか。


では俺はなんなんだろう。

何故人ならざるものから人に?

なにか、理に反することをしでかしてしまったのだろうか。

彼らに直接、会いたいと感じたのは、もうずいぶん前からだった。


朝は紅茶をのむ。

周りはコーヒー等というものをカッコつけるための道具として嗜むらしいが、幼少期から俺は紅茶派だ。

周りからはよく、

「しっかりした子だね」

と褒められたものだ。


父が見終わった新聞を朝食と共に見るのも、朝のルーティーンの一つだ。

我ながら懐古主義をこじらせているなと感じるものの、こればかりはやめられない。

しかし今日に至っては、まだ読み終わっていないようだ。

仕方なくリモコンを手に取り、もて余した時間をテレビのニュース番組で消費する。

租借する口が止まり、紅茶の入ったアンティークカップが床に落ちたのはそれからすぐの話。


流れていたのはたわいもないニュース。

「イギリスの女王陛下が…」


自分でも分かる。

身体の全ての細胞が、”これはお前だ”と言っているようで…。

ロンドン行きの航空便チケットを取るのに、そう時間はかからなかった。


日常に何ら不満はない。

寧ろ、この夢をただの夢だと認めてしまうなら、いつもの日々に、いつものように戻れるはずだろう。

それができないのは、これまでに会った彼ら全員が、俺の名前を愛おしそうに呼ぶから。

その言葉一つ一つが、俺の何かを突き刺して仕方ないから。


出発の日の前日、夜、また夢を見た。

今回出てきたのはまたもや黒髪の男性だった。

今まで俺はしゃべることができないと思っていたから、自分の口から発された音に驚いた。

『あの、俺…。イギリス、ロンドンに、行くことにしました』

それでも冷静でいられたのは、彼が目を見開いて自分よりも驚いていたから。

しかし彼はすぐに落ち着きを取り戻し、目を細めてこう言った。

“そうですか。あの頃・・・の記憶がまさか残っているとは…

いいえ、こちらの話です。

ロンドンへ行って、何をされるおつもりですか?”


そう聞かれると言葉がつまってしまって、彼にどう説明すればいいのかが分からなくなった。

しかし彼ならきっと、分かってくれるはず。まだ知り合って間もないのにそんな気がした。

『…最近俺、なんか嫌…というか、胸にこう、つっかかってる感じなんです。

確証はないけど、きっとそこに何かあると思って。

…あの、俺って前に貴方と会ったこと、ありました?』

そういうとまた彼は目を細めた。

“…いいえ、一度も。”

“そうでした。私の友人が今、ロンドンに居るんです。

1人では心細いでしょう。その方と一緒にめぐってみるのはいかがでしょうか?”

『確かに…うん、そうします。』

『ありがとう、“菊”』


すでに自分の口を押さえたが、彼の顔は酷く寂しく、また反して嬉しいようなものに変わった。

そのままどんどん視界が歪み、気づけば出発の日の朝になっていた。



“イギリスさん、段々記憶が戻っていっているみたいです。”

“ヴェ~!良かった~”

“そして明日、ロンドンへ発つそうですよ”

“What!?なんでそうなるんだい!?”

“まぁでも、坊っちゃんが自分から“ここ”に戻ろうとしてるってことでしょ?

だったら良いんじゃない?”

“ふふ、またイギリスくんと遊べるんだね、良かったぁ”

“もしイギリスが来たとして、記憶が戻らなかったらどうするんだ?”

“まぁ、何とかなるある!どうせ根っからの仕事人間あへん、すぐもどるあるよ。”

“そう無鉄砲にお前らは…。まぁ、丁度全員がロンドン出張だったことが幸いというべきか…”

“それじゃ、明日空港でイギリス捕獲大作戦を決行するんだぞ!!”


空港についたはいいが、本当に意味が分からない。

ついたやいなやマフラーを着けた大男にひっぱられて空港の外に出され、

両脇をよくしゃべるアホ毛と、 ぶつくさ文句を良い続ける長髪を結った男2人に挟まれ、

オールバックで堅物そうな雰囲気をまとうこれまた大男の車にのせられた。

普通なら誘拐か何かだと思うはずが、何故か懐かしいような、危機感がまるで湧かない。

それもそうだ。彼らは俺が夢で見た人なんだから。

そういえば今日使う資料は…

いや、資料って何だよ。ただの旅行に資料なんかいるか。

車に揺られてついたのは見たことのないような大きさのビル。

ついた途端にメガネの大男に引きずり出され、担がれるような形でビルの中に連れていかれた。

髭のはえた男がずっとこちらをニヤニヤ見つめていて、何故か分からないがとてつもない苛立ちを感じた。

ビルの最上階に構える大きなドアを開けると、先程の全員が俺を待っていた。

中央には彼がいて、

“お帰りなさい。”

と。

メガネの大男がおれを椅子に座らせ、

“まったく、君のインチキ魔法にはコリゴリだよ!”

と言った。

『インチキじゃねえって言ってんだろ!?

現に成功してんじゃねぇかよ、ばかぁ!』

…?

あぁ、思い出した。

俺はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国。己を忘れようなど、英国紳士たるものあってはならない大恥をかいてしまった。

…さて、この後どうなったかはご想像にお任せするが…


彼らと酒を飲むとその後の費用がバカにならないことだけお伝えしておこうか。

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