テラーノベル
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私はこの感情を、他の誰かに話すと変な噂となって流れることを知っていた。
だから、本人に相談してみようと思った。
恋じゃないかもしれないし、恋かもしれないし。
あの時の病室での心地よさを今も覚えているからか、彼に相談する以外選択肢がなかった。
「あのさ、今日の部活終わり時間ある?」
特にドギマギすることもなく、松井くんに話しかけた。
「じゃあ体育館の裏で、待ち合わせで」
人目がつかない体育館裏なら誰にも知られることはないだろう。
安心してその時を待った。
特別な感情を抱いてから、松井くんの方がよく視界に入るようになった。
部活の時もそう、体育の時も。
彼が動いている姿を見るとそれを目で追ってしまっているみたいで記憶が鮮明に残っている。
やっと走れるようになったんだな…
やっとバット振れるようになったんだな…
彼ができるようになったことひとつひとつによくわからないありがたさを感じていた。
気づけばもう下校の時間だった。
でもまだ門の外には人がたくさんいる。
バレなければいいな…
そう思っていた時だった。
「今から公園行くぞ」
颯爽と現れ、手を引っ張ったのは松井くんだった。
身長が高すぎて見えなかった…
それにしても足が速すぎて追いつけない。
半分引きずられてるような感覚で、公園にはあっという間に到着した。
「ごめん、人多かったから」
クールな松井くんは、2人きりだと少し柔らかい表情になる。
そして、部活終わりなのにとてもいい匂いがした。
「あのさ、なんかあった?」
彼の方からいろいろ聞いてくれた。
私が松井くんに抱いている感情はどういうものなのか、好きなのか嫌いななのか、そして松井くんはどう思っているのか。
今思えば恥ずかしいけど、正直に全てを聞いた。
ずっと笑顔で頷いてくれて、優しく笑ってくれて。
心がギュッと苦しくなるような気持ちだった。
その気持ちに追い打ちかけるように、彼は言った。
「俺も恋愛とかしたことないからわからないんだけどさ、同じような感覚だよ」
「おまえがヘアチェンジした時は、心が苦しかった」
「好きって気持ちはわからないけど、お前のことは特別に思う」
なんだか次から次へと恥ずかしい言葉を投下してきてこれは本当に松井くん…?って思えるぐらい甘かった。
「手、繋いでみる?」
いつからか恥ずかしいと思っていた手を繋ぐことも、なぜか松井くんなら手を繋ぐことが恥ずかしくなかった。
そのまま家まで送ってもらってお別れをした。
「これってどんな関係になっちゃったんだろう」
家に帰ってからも考えて考えて、結局答えが出ずに日が出てきた頃に寝た。
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