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【2話】
「試してみないか?」
海星の瞳がきらりと光る。
くらげは首をかしげながらも、ゆっくりと頷いた。
「うん。でも……本気でやっていいの?」
「もちろん」
その瞬間、訓練場に張りつめた空気が広がった。
海星は水の刃をいくつも生み出し、空中で螺旋を描かせる。
「――《アクア・スパイラル》!」
放たれた水刃は、まるで生き物のようにくらげへと襲いかかる。
しかし、くらげは一歩も動かない。
ひらりとまぶたを閉じ、指先を軽く鳴らす。
「《ミラージュ・ガーデン》」
瞬間、無数の光の花が咲き乱れ、その花びらが水刃を吸い込むように消し去った。
「なっ……」
海星が驚く間もなく、くらげは軽やかにステップを踏み、手のひらから淡い光の球を放つ。
「えいっ」
小さく可愛らしい掛け声とともに放たれた球は、海星の足元で炸裂し、彼の動きを封じる。
「……降参だ」
海星は苦笑しながら手を上げた。
その瞳には、悔しさと同時に、初めて味わう心地よい敗北の色が宿っていた。
「強いね、望月くらげ」
「え? そう? ありがと」
くらげは首をかしげ、満面の笑みを浮かべた。
――この天然な少女に、俺はもう勝てないかもしれない。
海星はそう、ひそかに思った。